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固め取りピックは本当に強いのか ~女子大生の独占欲が強くて困ってます~


はじめに

こんにちは!
いつもポジティブ、山辺カフカです!

今回は普段のリミテ環境予想・反省や大会振り返り記事ではなく、17landsデータの新しい読み方を取り扱った記事になります。
できる限り平易に表現するよう気を付けますので、是非読んでいただければと思います!


きっかけ(仮説)

時を遡ること数日、12/21にゆる速バトルシティという小規模オンライン卓ドラ大会での一幕。
タルキール覇王譚(KTK)環境で行われた同大会において、筆者が優勝することができました!
小規模大会とは言え強者も多い中で、アリーナオープンに続いて卓ドラでも勝てたことで満足。

その中で筆者のデッキに対して色々な反応がありました。

・ハンデス4で草
・先手ハンデスまじつよい
・ハンデス探査ウーマン
・ハンデス大体後引きして上手く使えないんですよね~

参加者の声

そう、筆者は《ラクシャーサの秘密》を4枚積む極端なスゥルタイ探査デッキを組んでいたのです。
この偏った構築に対する筆者の言い分は以下の通り。

  • そもそも《ラクシャーサの秘密》は何も考えずとも強いカード。

  • このカードを複数積むことで再現性良く3ターン目ハンデス⇒4ターン目探査の動きができる。

  • 卓の《ラクシャーサの秘密》を枯らすことで他の卓のメンバーの探査カードが使いにくくなり、結果的に探査カードもかき集めやすくなる。

ただ、これだけで参加者に4枚採用の納得感を与えられたかは定かではありません。
そこで、《ラクシャーサの秘密》の強さをなんとかデータで示したい!というモチベーションが湧いてきます。
この辺のX (Twitter) でのたくわんさんとのやり取りは以下ツリー参照。

そしてゆる速サーバにてかのおだんごさんにも聞いてみたところ、17landsのPublic dataであればデッキに採用されたカード枚数とその勝率が分かる、との情報を得ます。
筆者としては、このデータで何らかの形で《ラクシャーサの秘密》を固め取りすることの強さが示せる、と信じており、これをラクシャーサ仮説とでも呼びましょう。

斯くして、このラクシャーサ仮説を検証するために、ビッグデータを分析してみることにしました。


検証・考察

ということで、筆者としては初めて17landsのPublic dataを参照してみます。
一応事前に注意しておくと、ビッグデータというだけあって各環境1GBを超えるデータ量のcsvファイルですので、ダウンロードされる際は心とストレージのご準備を…

残念ながら、実装してそこまで時間の経っていないタルキール覇王譚のPublic dataはまだ存在しないことが発覚…
しかし、かき集めピックによる勝率影響の可視化だけでもトライしてみたくはあります。
そこで、出来立てほやほやのイクサラン:失われし洞窟(LCI)のPublic dataを使用し、採用枚数別の勝率推移を調べてみることにしました。


起 ~検証事始め~

最初に目を付けたのは《鉱夫の導鳥》。
理由は明確で、LCI環境のコモンでかき集めて一番強そうだから。

気付いたらGIH WRがコモン2位になっていた鳥。1体目が死んで2体目を強化していくのは茶飯事。

検証方法は至って簡単。
Public dataの"deck_XXX(カード名)"データを行ラベル、"won"データを列ラベル、適当なデータを値に指定し、ピボットテーブルで集計するだけです。

なお、Public dataは各行に全プレイヤーの1ゲーム毎の情報が含まれています。
"deck_XXX(カード名)"列にはそのカードが何枚デッキに入っていたかの情報が、"won"列にはその試合で勝ったか負けたか(勝ちはTRUE)が載っています。

カフカの補足

重たいのでピボットテーブルは解除してしまいましたが、纏めた結果は以下の通り。

このうち、デッキに入れた枚数:N=6枚のケース(11行目)は、データ数が100未満と少ないためノイズと考え無視し、残るN=1~5枚のケース別に勝率を纏めると以下のようになります。

《鉱夫の導鳥》

1枚⇒5枚で明確に正の相関が見られており、入れれば入れるほど強い入れ得のカードと言えそうです。
なお、近似曲線としては絶対に適切ではありませんが、簡単のために線形近似をしてみます。
この線形近似での傾き=1.96%であり、まだ1例しか見ていないが値としては大きそうに見えます。
(1枚ごとに約2%も勝率が上がるということですので)

もう少しケースを増やしてみれば、これがなんらかの指標に使えそうかどうか分かるかもしれません。


承 ~反証と再現~

次にどのカードで試すべきか?
”かき集めて強い”=”単純にカードパワーが高い” では面白くないので、筆者としてはできれば反証したいです。
それならば、コモンで一番強いカードで見てみたらどうでしょう?

プレビューされた瞬間にトップコモンと決まっていた子

《オルテカの雲衛兵》はGIH WRでコモン1位の押しも押されぬトップコモンですが、このカードは筆者として《鉱夫の導鳥》ほどかき集め枠とは感じていません。
それはこのデータにはどう表れるのでしょうか?

《オルテカの雲衛兵》

N=5枚のデータ数が287と少ないことには目を瞑れば、N=3~4のあたりを境に勝率のピークがありそうな曲線になりました。
非常に強力なカードではあるが高速環境における4マナという重さが足を引っ張り、これを入れすぎたデッキでは唱えられない/唱えた頃には不利になっているゲームが頻発するのではないでしょうか?
筆者の体感には近いデータが今のところ得られています。

では、”かき集めて強い”=”カードパワーが高い”&”軽い”ということなのでしょうか?
筆者としてはこれも反証したいため、別のカードでもう少し調べてみます。

正解:コロンビア(使い古されすぎたネタ)

既にLCI環境に触れたことのある方であればご存知の通り、非常に強力なバットリ持ちクリーチャーです。
このクリーチャーもGIH WRはコモン第4位とカードパワーが高く、その上1マナなので軽さの条件も満たしています。
このカードは果たしてかき集めるべきなのでしょうか?

《歯車式闘士》

そもそも前の2例ほどかき集めているデータが少なくはありましたが、曲線の推移からすると、少なくとも《鉱夫の導鳥》ほどは入れ得・集め得なカードとは言えなそうです
これも筆者の体感と近く、何を指標として扱うかは置いておくとして、このデータの見方は今までの指標では表しきれない結果を示しているように思えます。

この纏め方が全くもって筋が悪い訳ではなさそうなので、少し違った角度からも検証してみましょう。
このLCI環境に、他にかき集めたくなるようなカードはなかったでしょうか?
…あっ!

発見連鎖は男の夢

こんなカードありましたねえ!
入れれば入れるほど発見が連鎖する可能性が上がり、さながら構築のコンボデッキのような動きもできるカードです。
オーラなので入れすぎの弊害も大きそうなカードですが、複数採用での相互シナジーは強く、どのような結果になるのでしょうか?

《エターリの好意》

ありがたいことに《エターリの好意》かき集めをトライしているプレイヤーは比較的多く、信頼性の高めなデータが得られました。
N=5枚まで明確に正の相関が見えており、傾きは素のカードパワーで勝る《鉱夫の導鳥》には及ばずとも、かき集めるほど強いと言えるデータに見えます。
3マナとそこまで軽いカードでないにも関わらずこの結果が出たのは、本格的に良い分析手法なんじゃないですか?!

もう1枚、LCIのコモンで確認してみたいカードがあります。

令和の《ゴブリンの先達》とかなんとか

このカードは互いのシナジーはないものの、複数採用によりデッキコンセプトが明確になるタイプです。
BROの《ゴブリンの爆風走り》とかもこの系統ですが、この分析手法ではどうなるのでしょうか?

《ゴブリンの墓荒らし》

ご覧の通りN=5枚から勝率を落とす結果に。
《オルテカの雲衛兵》のように重さでは説明できないため、どちらかといえば強く使うための前提となる「アーティファクトをコントロール」した状態にする上で、非アーティファクトであるこのカードに5枚も枠を割くことに問題がありそうです。
面白い結果ですが、説明はまだできそうですね。

最後に、LCIコモンの除去2TOPはどのような結果になるのかもせっかくなので見てみましょう。

マローが色々言ってたけど、まあ普通に強かった令和なべ
《石化》
こちらはご存知構築級除去。コモン落ちしてからもう2年経ちますかそうですか。
《削剥》

ある程度正の相関が見られる《石化》に対して、《削剥》の伸びはそうでもなくほぼフラット。
《石化》の方がGIH WRも1.0%程度高いためその差が表れていると言えばそれまでですが、もう少し考察したいです。
全てのクリーチャーに効く《石化》と、ファッティに弱い《削剥》では、後者の方がかき集めたときの裏目が大きいことが表れているとも言えそうです。


転 ~拡張~

ここまでLCIの代表的なコモンについて新たな分析手法で見てきましたが、ここからは過去のセットに振り返って、かき集めたら強そうなカードがどのようなデータになっているか見てみましょう。

最初に思いついたのはイニストラード:真紅の契り (VOW) からこの2枚。

所謂ジャッカル戦略が有効だったことでも有名なVOW環境ですが、その屋台骨とも言えるカード達です。
これらのカードに今回の分析手法を適用すると、どのような結果になるのでしょうか?

《祖先の怒り》
《ケッシグの炎吹き》

ここに来て意外なデータとなり、《祖先の怒り》の複数枚採用での伸びがそこまで良くありません。
同名カードを参照するので明確に正の相関が見えると期待しておりましたが、期待から外れた模様です。

正直、この結果を見るまではもっと強い相関が見えると思っていたため、この分析手法で得られた数値をアンガー値とでも呼ぼうと思ってました…

要因として、この分析手法では「素のカードパワーの高さ」も考慮されてしまい、そもそもの《祖先の怒り》単体でのカードパワーがそこまで高くないことが足を引っ張ってしまっているかもしれません。
また、《祖先の怒り》も《ケッシグの炎吹き》や《嵐追いのドレイク》のようなカードと組み合わせてこそ真価が発揮されるタイプのカードであることも関係していそうです。
正直ここの考察は不足しており、データが正しいのかもしれませんができれば《祖先の怒り》の強さも表わせる分析手法の方が好ましいと感じております。

一方で、《ケッシグの炎吹き》もまた面白い結果を示しています。
今までのカードでは見られなかったN=2枚採用を底とするような曲線を描いており、N=3枚以上の採用ではかなり強い正の相関が見られます。
これは《ケッシグの炎吹き》がかき集めてこそ強いカードであることと一致した結果であり、漠然と採用したN=2枚のデッキが一番弱いのも頷けます。
アンガー値とはなりませんが、この曲線は今後ケッシグカーブと呼ばせてください。


次のセットに移ります。
今度は団結のドミナリア (DMU) 環境で筆者がかき集めて強かった印象のあるカード2枚を調べてみます。

この環境の青はコモンに《トレイリアの恐怖》という構築級フィニッシャーがいたことで、それを目的にインスタント・ソーサリーをかき集める戦略が有効でした。
(リミテ民はこの環境でインスタント・ソーサリーをキャストすることを海蛇ゲージを溜める、と言ったりします)
その上で、手札の枚数を減らさずに海蛇ゲージを溜められる上記カードはいずれも強力だったと記憶しています。
これらのカードに今回の分析手法を適用すると、どのような結果になるのでしょうか?

《衝動》
《機を見た干渉》

《衝動》についてはN=3枚付近をピークに勝率が下がるデータになってしまいました。
あまりに採用しすぎた結果、2マナかけて《衝動》から《衝動》を持ってくる動きは強くない、ということでしょうか。

一方で、《機を見た干渉》は全く異なる曲線を描いており、初めに検証した《鉱夫の導鳥》とそっくりなうなぎ上りカーブを見せているではありませんか!
これは筆者の期待に近く、1マナで《機を見た干渉》から《機を見た干渉》を持ってくる動きは強い、ということがデータでも示されたと言えそうです。
地味に複数採用によりバットリとして機能するケースも増える点は見逃せませんね。


本当はこの後に指輪物語:中つ国の伝承 (LTR) の《誕生日の旅立ち》で同じ分析をしてみたかったのですが、筆者PCでPublic dataをうまく開けずに断念…

悔しいので、他にも似たようなかき集めカードがなかったか洗い出したところ、以下の同名参照カードをひねり出せました。

《集まる群衆》

《集まる群衆》はデータ数も多く、N=5枚をピークとする綺麗な曲線を描きました。
当時の環境を筆者も体感しているが、多く入れすぎるとそもそも《集まる群衆》を重ね引きしやすくなるデメリットが大きくなってくるため、このデータに違和感はありません。
3マナということでダブルアクションに6マナかかってしまうのも使いにくさを感じたカードでしたが、それでもN=5枚までは入れ得ということが分かったのは気づきでした。

《棚卸し》

イニストラードを覆う影リマスターは開催期間が比較的短いこともあり信頼性の高いデータではないかもしれませんが、それでもN=6枚までデータ数が100を超えるあたりは同名参照カードらしいです。
N≥5枚についてはデータ数の少なさによるばらつきを多く含んでいますが、概ね強い正の相関が見られると言ってよさそうです。
入れ得とまでは言い切れない理由としては、昂揚型でセルフLOに近づきやすい点でしょうか。
N=1~3枚程度ではアンプレと言える勝率である点も見逃せません。


結 ~仮説検証~

(本項は1/5に追記しました)

1/1付で17landsにKTKのPublic dataが更新されました!
これにより、念願の《ラクシャーサの秘密》の投入枚数別データを見ることができるようになりました。

もう忘れてしまっている人のために再掲

細かいことは置いておいて、とにかくデータを見てみましょう、ドン!

( ^ω^)・・・

ラ ク シ ャ ー サ 仮 説 と は な ん だ っ た の か

卓ドラは分かりませんが、少なくともプレミアドラフトでは1枚入れれば十分で、入れすぎ注意なカードのようです…
一応フォローすると、1枚投入時の勝率は0枚投入時や平均勝率よりも高く、《ラクシャーサの秘密》自体が強いカードである点はデータにも表れています。

良い子のみんなは《ラクシャーサの秘密》を入れすぎないようにね!!!


結論

以上の検証と考察に基づいて、筆者が導き出せる結論は今のところ以下の通りです。

  • 今回トライした分析手法では、かき集めた方が強いカードの一部を定性的には示すことはできそうである。

  • また、カードをかき集める際にその上限にすべき枚数は、曲線のピークを以て示唆されることが分かった。

  • 一方で、体感ではかき集めた方が強いカード(《祖先の怒り》等)については必ずしも結果に表れず、分析手法自体に改善の余地があると見られる。

  • 加えて、定量的に強さを比較できるような指標として何が適切かは検討できていない。線形ではない近似により指標化はできそうであるが、今のところ具体案はない。


ちなみに今回検証するに至れなかった《ラクシャーサの秘密》についてですが、17landsデータで本分析手法を適用してもあまり良い結果が出ない可能性はあると思っております。
これは、筆者が実践したのはあくまで卓ドラフトであり、「卓の《ラクシャーサの秘密》を枯らすことで他の卓のメンバーの探査カードが使いにくくなり、結果的に探査カードもかき集めやすくなる」という効果は、プレイヤーの質が玉石混交のプレミアドラフトでは表れにくいかもしれないためです。

また、今回の分析手法では実装後十分にデータが集まった後でないと検証すらできない点が、現代MtGとしては無視できない欠点です。
正直、今回の分析ではデータ数100を基準に足切りをしましたが、これでも少なすぎます。
N=4枚以上のデータが1000以上のデータ数を稼ぐことは少なく、どうしても信頼性の高いデータになりにくいです。
競技MtGへの活用というよりも、あくまで「データから見ることができる景色を広げられる」というコラムとして読んでいただきたい、という筆者メッセ―ジを以て、本記事を締めさせていただきます。


(12/27 22:00追記)
追加で分析していただく方向けの参考として、今回の分析の元データを以下の通り共有します。
Public dataは重いため削除済で、分析後の結果のみを載せたデータシートになります。
もし余力のある方はより優れた分析手法を検討いただけますと幸いです…!

(1/5 追記)
《ラクシャーサの秘密》のデータを追加しました。


おわりに

ここまで読んでくださった方、誠にありがとうございます。

冒頭にも書きましたが、普段は事前環境予想や競技MtGでの振り返りをnote記事にしてますので、また読みに来ていただければ幸いです。

また、私のDiscordサーバも開設したので、こちらにもお気軽にご入室ください!
リミテに関する質問や議論、中には指導してくれる方もいらっしゃいます!

それでは!また次回記事か配信でお会いしましょう!
バイバイ、さよなら、再見

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