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GPT4o映画分析: すべてのシーンが孤独の増幅装置!タクシードライバー

名作の脚本を学んで、漫画制作に活かそう!

今回はノワール(犯罪)映画の代表格とも言える問題作、タクシードライバーを分析します。

(分析にはGPT4oを使っています。Claudeとの使い分けは特にありません。笑)

タクシードライバーとは

「タクシードライバー」は、1976年に公開されたアメリカの映画で、監督はマーティン・スコセッシ、脚本はポール・シュレイダーが手掛けています。この映画は、ニューヨークを舞台にした心理ドラマで、ロバート・デ・ニーロが主人公のトラヴィス・ビックルを演じています。

あらすじ

トラヴィス・ビックルは、ベトナム戦争から帰還した元海兵隊員で、不眠症に悩まされています。彼は夜間にタクシードライバーとして働きながら、ニューヨークの街を見つめ、その腐敗と暴力に嫌悪感を抱いています。孤独と疎外感に苦しむトラヴィスは、自分の存在意義を見つけようと模索します。

彼は選挙キャンペーン事務所で働くベッツィーという女性に一方的に恋をしますが、デートがうまくいかず、拒絶されます。この出来事をきっかけに、トラヴィスの精神状態はさらに悪化し、社会を浄化しようとする暴力的な計画を練り始めます。

主なキャスト

  • ロバート・デ・ニーロ: トラヴィス・ビックル

  • シビル・シェパード: ベッツィー

  • ジョディ・フォスター: アイリス(若い売春婦)

  • ハーヴェイ・カイテル: マシューズ(売春宿の元締め)

  • アルバート・ブルックス: トム(選挙キャンペーン事務所のスタッフ)

テーマと特徴

  1. 孤独と疎外感: トラヴィスの深い孤独感と社会からの疎外感が物語の中心となっています。彼の孤独は、夜のニューヨークという無情な都市の風景と相まって強調されます。

  2. 精神的な崩壊: トラヴィスの精神状態の悪化がリアルに描かれ、彼が次第に暴力に傾倒していく過程が詳細に描かれています。

  3. 社会批判: 1970年代のアメリカ社会の腐敗と暴力、無関心が鋭く批判されています。ニューヨークの夜景や登場人物たちが社会の病理を象徴しています。

  4. 道徳的曖昧さ: トラヴィスの行動には善悪が混在しており、観客は彼の行動の正当性について考えさせられます。彼の暴力的な行動が一時的に「ヒーロー」として称賛されることも、道徳的な曖昧さを強調しています。

「タクシードライバー」は、その重厚なテーマと深いキャラクター描写により、映画史に残る名作とされています。観客に深い共感と問いかけを促す力強い作品です。

今回の学びポイント: 全てはトラヴィスの孤独を高めるために

「タクシードライバー」の脚本から学べる最も応用価値のあるポイントは、「舞台設定、キャラ設定、街行く人々、対話や独白の全てを、主人公の内面を描くために緻密に作り上げること」です。このアプローチにより、キャラクターの孤独や内面的な葛藤を読者に深く伝えることができます。

1. キャラクターの内面的な描写

  • 内面の葛藤を明確に描く: 主人公の心の中の葛藤や悩みを丁寧に描写することで、読者にキャラクターの動機や行動を理解させます。トラヴィスの独白やモノローグは、彼の孤独感や疎外感を直接的に伝えています。

  • バックストーリーを活用: トラヴィスの過去やトラウマ、現在の状況が彼の内面を深く掘り下げるために描かれています。キャラクターがなぜそのように感じ、行動するのかを読者に伝えるために、彼のバックストーリーが重要な役割を果たしています。

2. 映像・音楽で感情を表現

  • 映像: 映画の映像はトラヴィスの視点から撮られることが多く、彼の孤独感と疎外感を強調しています。暗い夜の街、雨の降る風景、タクシーの中から見るニューヨークの光景が、彼の孤独を視覚的に表現しています。

  • 音楽: バーナード・ハーマンによる音楽は、トラヴィスの内面的な孤独感を音響的に強調しています。メランコリックなジャズ調のスコアが彼の寂しさを増幅させます。

特に独白というか主人公によるナレーションが多いのはノワール映画の特徴とも言われます。

あと、同じサックスのメロディーが繰り返し使われるのも印象的です。これは繰り返し使われるのモチーフという括りでいえば漫画にも応用できます。

モチーフ(ここではお決まりのセリフや行動も含む)は何度も繰り返すことでキャラクターに対して感情移入させやすくなります。アンニュイなタクシードライバーのサックスも同じ効果を感じます。

13フェーズ分析

ここでシナリオの構成を深ぼるために13フェーズ理論で分析したいと思います。

0. 背景

  • トラヴィス・ビックル: ニューヨークのタクシードライバー。元海兵隊員で、不眠症に悩まされ、孤独な生活を送っている。夜の街で目にする腐敗や暴力に強い嫌悪感を抱いている。

1. 日常

  • トラヴィス: タクシードライバーとして働きながら、日々の生活を送る。孤独感と疎外感を深める中、ポルノ映画館に通ったり、ベッツィーという女性に一方的に惹かれたりする。

2. 事件

  • ベッツィーとの出会い: トラヴィスは選挙キャンペーン事務所で働くベッツィーに出会い、彼女に興味を持つ。デートに誘うが、ポルノ映画に連れて行ったために彼女に拒絶される。

3. 決意

  • 変革への決意: ベッツィーとの関係が破綻し、トラヴィスは社会の腐敗を浄化しようと決意する。彼は自分自身を武装し、暴力を行使することで「正義」を実現しようとする。

4. 苦境

  • 精神的な不安定: トラヴィスの精神状態は悪化し、暴力的な思考に取り憑かれる。彼は社会からの疎外感と自分の無力感に苛まれながら、ますます過激な行動を計画する。

5. 助け

  • アイリスとの出会い: トラヴィスは若い売春婦アイリスと出会い、彼女を救うことを決意する。彼は彼女に新しい生活を始めるよう説得しようとする。

6. 成長・工夫

  • 武装と訓練: トラヴィスは銃を手に入れ、戦闘訓練を始める。自分の使命を果たすために、肉体的にも精神的にも準備を進める。

7. 転換

  • パランタイン暗殺未遂: トラヴィスはベッツィーに再び近づくために大統領候補パランタインの集会に参加するが、暗殺計画は失敗する。これにより、彼の怒りはさらに増幅される。

8. 試練

  • アイリスの救出計画: トラヴィスはアイリスを売春宿から救出するために、売春宿の元締めたちと対峙することを決意する。これが彼の最後の行動となる。

9. 破滅

  • 暴力の頂点: トラヴィスは売春宿に乗り込み、アイリスを救出するために激しい銃撃戦を繰り広げる。彼は複数の人間を殺害し、自らも重傷を負う。

10. 契機

  • ヒーローとしての誤認: トラヴィスの暴力的行動は、アイリスを救出したことから「英雄的行動」として社会から誤認される。彼の行動が一時的に称賛されることで、彼の内面的な葛藤は解消されない。

11. 対決

  • 内面的な対決: トラヴィスは表面的にはヒーローとして認識されるが、内面的には孤独と疎外感が続く。彼の行動が正当化されるかどうかという道徳的な問いが残る。

13. 満足

  • 自己の満足と悲劇: トラヴィスは一時的な満足感を得るが、その満足は持続しない。彼の根本的な孤独と社会からの疎外感は依然として残り、物語は観客に深い余韻を残す形で終わる。

覚醒したトラヴィス。見た目も激変。

いつも通り、まず注目すべきは絶好調である6.成長・工夫と9.破滅の対比です。

銃を手に入れ、強靭な肉体を作り、強盗を撃退して実績をつくり、モヒカンとアーミージャケットを纏ったトラヴィスは完全に覚醒しました。

大統領候補暗殺未遂があるため、象徴的に「完全に狂ってしまった人」という印象が付くので、アイリス救済という名の虐殺行為が「ヒーロー」と称される違和感を増幅させています。

観客からも「いや、それは駄目でしょ」とレッテルが貼られるので孤独もここに極まれりといったところです。

そこに来て、売春宿を銃撃してアイリスを恐怖のどん底に突き落としてしまうことで、完全な破滅と言えます。

普通は破滅からがクライマックスに向かうところで長いのですが、この映画は破滅がクライマックスになっています。

あとは「ヒーローになったよ」「ベッツィにはもう興味ないよ」とシーンを繋げて解散。

えーー!?という感じですが、それがいいんですよね。

脚本の秀逸なところ

「タクシードライバー」の脚本の秀逸な点は、多層的なテーマの描写とキャラクターの深い心理描写にあります。以下に、その主なポイントを挙げます。

1. 孤独と疎外感の描写

脚本は、主人公トラヴィス・ビックルの深い孤独と社会からの疎外感を巧みに描いています。彼の内面的な孤独が、夜のニューヨークという無情な都市の風景と相まって強調されています。この孤独感は観客に強い共感を呼び起こし、トラヴィスの行動の動機を理解させる助けとなっています。

2. 精神的な崩壊の過程

トラヴィスの精神的な崩壊が丁寧に描かれており、その過程が説得力を持っています。彼の不眠症、幻覚、そして暴力的な思考が少しずつエスカレートしていく様子がリアルに描写され、彼の精神状態の変化が自然に感じられます。

悪者制裁に暴力を厭わなくなるのはデスノート的

3. 社会批判

脚本は、1970年代のアメリカ社会の腐敗と暴力、そして無関心を鋭く批判しています。トラヴィスが目にする腐敗したニューヨークの風景や、彼が対峙するキャラクターたち(売春婦、ポルノ映画館の観客、大統領候補など)は、社会の様々な病理を象徴しています。この社会批判は、映画全体のテーマを深める役割を果たしています。

4. キャラクターの複雑さ

トラヴィス・ビックルは、単なる悪役やヒーローではなく、非常に複雑なキャラクターとして描かれています。彼の行動には善意と狂気が入り混じっており、観客は彼を一面的に捉えることができません。この複雑さが、物語に深みを与えています。

5. 道徳的曖昧さ

脚本は、道徳的な曖昧さを巧みに利用しています。トラヴィスの行動は一見すると英雄的である一方で、その手段や動機は狂気じみており、観客は彼の行動の正当性について考えさせられます。この道徳的曖昧さが、映画を一層興味深いものにしています。

6. 視覚的・象徴的な要素

脚本は、視覚的なイメージや象徴を多用してトラヴィスの内面を表現しています。特に、トラヴィスのタクシーが彼の心の内側を反映する空間として機能しており、夜のニューヨークの風景が彼の孤独と疎外感を増幅させます。

7. クライマックスの構築

クライマックスの売春宿襲撃シーンは、緊張感と暴力の頂点として巧みに構築されています。このシーンは、トラヴィスの内面的な爆発を象徴しており、映画全体の緊張感を一気に解放する役割を果たしています。

8. エンディングの余韻

エンディングは、トラヴィスが一時的に「ヒーロー」として称賛されるものの、彼の根本的な問題が解決されないまま終わることで、観客に強い余韻を残します。この余韻が、映画のテーマとメッセージを一層深く印象付けています。

結論

「タクシードライバー」の脚本の秀逸な点は、トラヴィス・ビックルの内面を深く掘り下げ、彼の孤独と社会への怒りを通じて、1970年代のアメリカ社会の腐敗や暴力を鋭く批判している点にあります。これにより、映画は単なる暴力映画ではなく、深い社会的・心理的洞察を持つ作品として評価されています。

孤独を多角的に描いた類似作品

孤独は普遍的かつ原始的なテーマですが、その描写は本当に孤独と向き合った人しかできないんだろうと感じる緻密さや繊細さが必要です。

さらにこれを飽きずにテンポよく進めさせる脚本に落とすのは難易度の高い仕事だと言えます。

下記は孤独を描いた映画でもその脚本力に優れたものをピックアップしてみました。

  1. 「ジョーカー」 (2019)

    • 主人公アーサー・フレックが社会から疎外され、精神的に崩壊していく過程を描く。ゴッサムシティの無情な環境が彼の絶望と暴力への傾倒を増幅させる。

  2. 「キング・オブ・コメディ」 (1982)

    • ロバート・デ・ニーロが演じるルパート・パプキンが、コメディアンとしての成功を求めて狂気に走る。社会からの認識と自己実現のために過激な行動を取る。

  3. 「アメリカン・サイコ」 (2000)

    • クリスチャン・ベールが演じるパトリック・ベイトマンが、表向きは成功したビジネスマンでありながら、内面的な空虚感と精神的な崩壊を暴力的な行動で表現する。

  4. 「落下の王国」 (1981)

    • パク・チャヌク監督の韓国映画で、主人公が内面的な苦悩と社会的な疎外感を抱え、暴力を通じて自分の存在を証明しようとする。

  5. 「タクシー」 (2004)

    • マイケル・マン監督の映画で、ジェイミー・フォックスが演じるタクシードライバーが、トム・クルーズ演じる暗殺者によって一晩中翻弄される

まとめ

孤独に限らず、テーマを考えさせる要素をあらゆる角度から見せていって積み重ねる手法はどんな作品にも必須です。

今回タクシードライバーを分析してみて、見ている時は「?」と思っていた要素もテーマの伝達を重視した結果なんだと納得することが多かったです。

例えば大統領候補暗殺未遂ですが、見ている時は「やけにあっさりだな」と感じました。でも、あれは大きなドラマにしちゃったら駄目なんですよね。テンポが狂う。

あくまで狂人として社会から孤立したという象徴、他の殺人対象の売春宿と同列という意味で大統領候補から腐ってると伝えられさえすれば十分なので。

あそこでドンパチしたりカーチェイスしたりする必要はない。

テーマへの忠実さと芸の細かさに圧倒される映画でした。

他にも映画シナリオ分析をしていますので、興味がある方は是非こちらからどうぞ!


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