筋トレのエビデンスから考えるエクササイズ

普段リハビリの中や趣味としても何気なく行っている筋トレですが、エビデンスから改めて考えると、エクササイズ(リハビリ)の方法も変わってくるかもしれません。ということで・・・

1.筋トレの基本

2.筋トレのガイドライン

3.最適の負荷量はいくらか

4.週に何回筋トレするのがよいか?

5.筋トレ一日あたりのセット数は何回にすべきか

についてまとめてみました。


1.筋トレの基本

・筋トレの基本になる考え方にRMとオールアウトという言葉があります。

○RMとは、その人がちょうど○回だけ反復して行える負荷ということになります。60kgのベンチプレスをぎりぎり10回できるとすると、その人のベンチプレスの10RMは60kgということになり、6RMなら6回だけぎりぎり挙げられる重さを指します。つまりRM=最大反復回数となります。

・オールアウト

古くから8-12回が筋肥大目的の筋トレの王道といわれてきました。画像1はそのイメージになります。

画像1

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そして業界ではRMまで筋肉をおいこむ(使い倒す)ことをオールアウトと呼んでいます。

筋肉を最大限まで活用することは様々な意味で筋肥大に結びつきます。

つまり・・・筋トレの効果を最大限にするために、RMまで筋肉をおいこむ(オールアウト)を狙うべし

2.筋トレのガイドライン

この世には筋トレのガイドラインともいえるようなレビューが実は存在しており、それが2009年に出版された論文です。画像2はその論文の一部です。

画像2

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筋肉と一言で言った場合にも大きくは筋肉量、最大筋力、持久力という3つの機能と様子があり、それぞれに増強に適したプログラムは変わってきます

*ここでは筋肥大に関して記載していきます。

そして対象者を初心者、中級者、上級者に分けて推奨しています。

この論文についてまとめると、2009年時点での推奨としては、「週2-3回(中級者以上は部位を変えることで週4回以上)、70-85%1RM(およそ8-12RM)の負荷の運動を各セットオールアウトまで、1回1-3セット、インターバル1-2分で行う。スロートレーニングやエキセントリック、アイソメトリック運動を取り入れる」という形がもっとも筋肥大に適していることになります。

つまり・・・筋トレにもガイドラインがある(ただし2009年のもの)。その時点では「週2-3回、8-12RMの負荷の運動を1回1-3セット、インターバル1-2分で行う」が推奨

3.最適の負荷量はいくらか

・8-12RM神話の崩壊?

最近では、低負荷と高負荷での筋トレで筋肥大にあまり差がないのではないかという研究も実在しているそうです。つまり、30RMなどの低負荷でも10RMなどの高負荷でも、限界まで筋肉をおいこむことが大事なのではないか(実際には総負荷量を稼ぐことが大事)という考えです。少なくとも筋肉量増加を考えるなら低負荷でもかまわないからRMまで実施するべきといわれています。

そして負荷が強くなりすぎると筋合成が頭打ちになる、あるいはかえって筋合成に不利になるのではという考え方があります。

たしかに負荷を順に大きくしていくと筋合成が頭打ちになることが知られ、高齢ではより低い負荷で頭打ちとなること、負荷が強くなるとかえって筋合成が減るという逆転がおこりうることが実証されています(画像3)

画像3

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ここまでをまとめると、筋肉量増加のためには30RMなどの低負荷でもRMとして限界まで攻めることが重要であり、必ずしも8-12RMにこだわる必要はないということになります。

*ですが、30回同じ動作を繰り返すことは時間もかかりますし運動に飽きてしまう可能性があり、また最大筋力を増強させることは次以降のトレーニングの負荷量を増やすことができますから、ここまでの知識を持った上でも8-12RMは効率の良い筋トレ方法であるともいえます。

よって中級者以上は8-12RMで実施を目指しつつ、慣れていない運動を行うときや初心者に関してはそれにこだわらず30RMなどもよいから筋肉を追い込むまで運動するのを目指す、というのがよい戦略と言えると思います。

*高齢者や患者さんのリハビリも低負荷での方法が実施しやすいですよね

つまり・・・筋肥大目的にはオールアウトまで実行できれば低負荷でも高負荷でもかまわない。それでも8-12RMが効率は良い?

・筋肥大に最も重要なのはtraining volumeという考え方!

更に最近では、どれだけ大きな量の運動をしたか(totalの運動量)が最も筋肥大に影響するということが研究で明らかになってきているそうです。そのなかで運動量を表すtraining volume(総運動量・総負荷量)という考え方が提唱されました。

training volume=負荷の強さ×回数(/セット)×セット数(/週あたり)

・オールアウトは不要?

training volumeが大事ということは、よりたくさん運動をしたほうが筋肥大するということですが、更にtraining volumeを大きくできるなら1セット毎にオールアウトをしなくてもよいのではないかということです。具体的にはオールアウトさせないことで筋疲労から立ち直るまでが早くなり、次のセットそして翌日以降のトレーニングでより大きなtraining volumeを稼げるようになる可能性があります。

・オールアウトは筋力増強に効く

しかし、全てのセットでオールアウトをする必要がないという話であり、適宜トレーニングの中にオールアウトするセットを取り入れることは必要です。なぜなら、筋肥大と同時に筋力増強もある程度していかなくてはならないからです。

つまり・・・筋肥大にはオールアウトよりもtraining volumeが重要である

training volume=負荷の強さ×回数(/セット)×セット数(/週あたり)

⇒週あたりの運動量をできるだけ大きくすべし

4.週に何回筋トレするのがよいか?

筋トレのガイドライン(2009)は週2-3回の筋トレの頻度を最終的に推奨しています。これは主に初心者を対象にしたもので、週1回より週2回や週3回の筋トレで筋肥大効果が確認され、週3程度で頭打ちになることが示されていたからです。

*しかし同じ部位のオールアウトは筋疲労の観点から初心者と同程度の頻度を推奨するものの、部位を変えることで毎日に近い運動を推奨しています。

つまり・・・

・training volumeを増やせるなら週あたりの筋トレ日数は増やしたほうがよい

・忙しい人には週2.3回程度とするのが現実的で効率的

5.筋トレ一日あたりのセット数は何回にすべきか

1回のトレーニングあたりのセット数は昔ながらに2,3セットはやったほうがいいといわれています。その理由は鍛えたい筋肉全ての筋繊維を使う為には複数セットが必要であるからという説が信じられてきました。

少なくとも中級者以上のトレーニーは週に10セット以上をこなすのが筋肥大に効果的としています。

他方、セット数による筋合成の頭打ちという興味深い報告もなされています。報告は若年健康者と高齢健康者にレッグエクステンションを3セットと6セットとに期間を分けて行ってもらい、どちらが筋生検し筋合成されていたか。結果若年者では筋合成に差がみられなかったのに対し、高齢者はセット数を多くしたほうがより筋合成が得られたということでした。

この研究からいえることとして1つは、同日の運動でのRMまで行うトレーニングのセット数は、筋合成に対して3セット程度で頭打ちになるかもしれない。4セット目以降、運動しても筋合成にこれ以上貢献しない無駄な負荷がありうるかもしれないと。2つ目は高齢者ではこの上限が6セットでもみられなかったことで、より多くのセット数をこなしたほうがより筋肥大を促せるかもしれないということ。

*高齢者になるほど筋トレも大変になりそうですが、この可能性はリハビリでも取り入れるべき考え方なのかもしれません。

つまり・・・筋トレ1回あたりのセット数は3回、週に10回程度とするのがよさそう。ただし高齢者はもっと多くしてもよいかもしれない

長くなってしまいましたが、本日の内容をまとめると・・・

筋トレはまずRMまで攻めるオールアウトの感覚をつかむべし!その上で

①初心者には週2-3回、20-30RM(安全に、かつ正しいフォームを獲得するのを優先)で1回3セットの運動をする。スロートレーニングを意識

②忙しい人には週2-3回、8-12RMの運動をインターバル1分以上とって強度をおとさずに1回3セット

③暇がある人にはできるかぎり毎日、次の日に筋疲労が残らないくらいの負荷(わざと最後の1レップをしないとか)で上記運動を繰りかえす。

④高齢者にはできるかぎり毎日、できるかぎりの運動をできるかぎりセット数多く!

⑤中級~上級者にはピリオダイゼーション法(一定期間でウエイトトレーニングのプログラムを変更すること)を導入し、週2-3回、オールアウトするマクロサイクルと翌日筋疲労しないくらいの負荷とするマクロサイクルを織り交ぜて、できるだけtraining volumeを大きく!

*同時に脂肪を落としたい人は上記運動に直後の有酸素運動をあわせる。

次回は筋トレの栄養学についてまとめられればと思います。

医者の方が執筆されており、実際の著書には更に詳細内容も載っているのでとても勉強になります。筋トレマンだけでなく、医療従事者(特にリハビリ職など)にもおすすめです。



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