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視座を変えるー車いすユーザー多数派社会を体験ー

「皆様は二足歩行障害のお客様ですか」
入店して最初に言われた店員さんの言葉。
ぽかん。「私は今、何を言われたの?」

ここは車いすユーザーが多数派の社会二足歩行の私は障害者なのです。芸術家の友人に誘われ、「車いす使用者が多数派である社会」の体験イベントに行ってきました。

イベント概要

イベント名:バリアフルレストラン in 川崎アゼリア
日時:2023年3月25日(土)、26日(日)
会場:川崎アゼリア サンライト広場
対象:高校生以上
主催:川崎市

イベント内容

・各回8名で約30分の体験プログラム
・8人グループの客としてレストランを訪問する設定
・中心の丸いテーブルに料理が置いてあるビュッフェスタイル
・体験の流れ
  ①入店前の注意事項
   車いすユーザーがレストランに来た時に考えられる困りごとの共有
  ②入店し店内を体験
  ③主催者からの説明、感想の共有

会場の掲示

体験①入店前

「車いすの方がレストランに来た時に困ることは何だと思いますか」
主催者から聞かれ、全員で意見を出し合いました。

私たちが出した答えはこんな感じです。
・通路が狭い
・小さい段差がある
・テーブルの高さが合わない

入店直前には主催者からこんな注意事項が。
「何かいろいろ言われて戸惑うと思いますが、そのまま続けてください」

「何を言われるんだ?」と入店前に既に戸惑っていました。

体験②-1 車いすユーザー多数派社会へ入店

いざ入店となったら、レストランの入り口がかなり低い。かがまないとお店に入れません。アルコール消毒も「あれ、低い」。私たちの膝の高さに設置されていました。これが車いすの高さなのかと実感します。店内は天井がとても低く、かがまないと中にいられません。

車いすの店員さんが接客してくれました。
「お客様は二足歩行障害のお客様ですか。ご予約は?」

驚きすぎて、一瞬思考が止まります。「二足歩行障害って何?」「私、障害者なの⁈」と。

「店長、二足歩行障害のお客様が8名もお見えになっています」
「すみません、二足歩行障害の方が予約なしでこんなに来られることがなくて」

「え~、なんか迷惑かけてる!すみません!」なんて気持ちになってしまいました。

体験②-2 いすが必要なのは二足歩行者

ここはビュッフェスタイルレストラン。
「あ、ぐるっと回って取っていっていただけますか」
かがみながら、ぐるっと回ろうとする体験者たち。これも車いすならスムーズに取って回れるのだろうなと感じました。

全員にトレーと料理が回った時でした。
「あ、皆様、椅子が必要なんですね」
「椅子は特注で今、一つならあるんです。予算が足りなくて」
「募金で二足歩行障害のためにもう少しお金が集まったら、椅子を買えるのですが」
そっか、車いすは「いす」なんだ!
そんなあまりにも当たり前な事実にも、私は気が付いていなかったのです。

体験②-3 二足歩行者のための社会作りニュース

それからテレビのニュースが映されました。二足歩行障害のために国が予算を組んで住みやすい世の中を作ろうという内容です。「二足歩行障害の人のための社会作りをしていく必要性がある」と締め括られていました。

「私が生活するには、国会で議論をし予算を組んでもらう必要があるのか」と複雑な気持ちでニュースを見ていました

このレストランはとても天井が低く、椅子もなく立てない私たちはずっと中腰。「車いすユーザーの経済合理性でこの高さで作られています」とのこと。聞いた説明に衝撃を受けました。経済合理性のために、どれだけ切り捨てられているのでしょう。

体験③主催者からの説明、感想の共有

中腰で過ごしたレストランから出て、いすに座らせて頂いて主催者の説明を聞く時間になりました。

一番響いたのは「私たちの社会では身体的な障害(個人的障害)もあるが、社会が作った障害(社会的障害)がある」こと。すべての人が同じ社会の一員として生活できる社会作りの必要性が話されました。そのお話に説得力を感じた体験でした。このイベントで主催者が一番伝えたかったのは「社会が作った障害がある」だったのだと思います。

感想の共有では、天井の高さが印象的だったや、配慮できていると思っていたけどそうではなかったなどのお話が出ました。私の個人的感想は、レストランで私たちが受けた対応を車いすユーザーはこれまで受けてきたのだなと。それを知れたのは大きな一歩だと感じました。

会場の掲示

まとめ 視座を変える

視野が変わるレベルではありませんでした。視野がひっくり返った感覚というのでしょうか。社会が作った障害が、私には見えていませんでした。体験する前は、私は理解がある方ではないかなんて思っていたのです。理解があるなんて、なんておこがましい考えだったのでしょう。

「視座を変える、なんだよね」。帰り道の友人の言葉。芸術の道を究めた彼女から出てくる言葉は、腹の奥底に入ってきてずっしりと座り続けます。

人はその立場にならないと本当の理解はできない。視座を変えるという努力でしか理解に近づくことはできないのだと深い学びを得た体験でした。

※内部の写真は撮れませんでしたので、こちらをご覧ください。

(Yahoo!ニュース 2023年3月25日 tvkニュース)

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