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三年計画の定点観測(2022年総括)

「三年計画」として始まった2020年からの変革がここでようやく一区切りになります。既に3本記事を出している通り、この3年間全体を俯瞰した総括も行おうとしていますが、その前に2022年単体を振り返っておきたいと思います。


◆2021年の課題

まず2022年を振り返る前に、2021年の総括として書いた文章の思い出しから始めようと思います。

2020年はクラブとして変革初年度であり、大槻さんが強く言い続けてきたことが「主体性」や「役割」「優先順位」といった言葉でした。指導者があれこれアクションを決めすぎるのではなく、選手にすべてを委ねすぎるのでもなく、プレー原則の中で選手自身が反応、判断することを求めていたと思います。

しかし、2020年はクラブの総括でも「チームとしての『型』の不在」「苦しい展開の際に、立ち返るべき『型』がなかったこと」を課題として挙げたように、「この枠の中で好きにやって良いよ」というその枠が当時の選手たちにとってはまだ広かったために上手く対処できないことが多いシーズンでした。

この枠を狭めることで(指導者が「決める」割合を増やす)前年に作れなかった「型」を作ることを期待してリカルドを招聘しています。そして、リカルドは就任当初は「決める」割合を増やして(明確な指示を与えて)状況を好転させながら少しずつ結果を出していくことが出来ました。

ただ、特定の型だけでは多様な相手と対戦するリーグ戦で勝ち続けることは難しいですし、すべての場面で指導者が事細かく指示を出すことはできないので、選手自身が自ら考え行動する姿勢(責任感)が必要になります。そのため、2022年に向けての課題として以下2点を書きました。

2022年に向けては
・ピッチ上の現象のバリエーションをどれだけ増やせるのか
・個人の力で構造上の不具合を清算する回数を増やせるのか
という2点に注目していきたいと思います。前者は主にリカルドが「決める」ものを選手が表現できるのか、後者はリカルドが選手に「委ねる」中で選手が上手く振舞えるのか、というイメージです。

チームとしてのプレー原則はありつつも、対戦相手、状況によってどれだけ多様な振舞いが出来るようになるのかというのが1点目、設定した戦術がハマらない時にハーフタイムまで時間稼ぎ出来たり、上手くいかないなりになんとかしてしまう個人の力をどれだけ発揮できるのかというのが2点目です。これらを踏まえて2022年を振り返っていきます。


◆2022年の流れ

毎月、月報として色々なコメントをピックアップしつつまとめてきたのでそれらを中心に見て行きます。

まず、2022年のスタートとなる新体制発表では西野TDから「今年は結実の年」という三年計画の発表当初と変わらない目標が掲げられました。

3ヶ年計画というものを打ち出して、今年の2022年シーズンは3年目となります。2年前に宣言したように、今年は結実の年ということで、結果を出す1年と捉えております。2年前と変わらないことをここで伝えさせてもらえればと思います。
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今シーズンのチーム目標は、3年計画の3年目、結実の年ということで、J1リーグの優勝を目指します。もちろん、浦和レッズは参加する大会、試合の全てに優勝、そして勝利を求める、これは当たり前の前提であります。ただ、もしそこに優先順位をつけるとすれば、今年のJ1リーグの優勝というものを、優先順位の一番上に置く、というチーム活動をしていきたいと思っています。同時に、今年で全てが終わるわけではありませんので、来年以降も勝ち続けるチーム作りということをしっかりと念頭において、今年のリーグを戦っていきたいと思っています。

そして、残念ながらシーズン途中で無かったことにされてしまった(?)「勝利への飢餓感」というキーフレーズもこの会見で出てきました。

勝利への飢餓感。ここに関しては、リカルド監督就任の際も、リカルド監督にチームの野心という話をさせてもらいましたが、選手個々、そしてスタッフたちもしっかりと野心を持って、日本のトップ、アジアのトップを目指すというところを持っていることが大事だと思います。そういう選手に集まってもらいましたし、ただ集めるだけではなくそういう環境、スタジアムの環境はもちろん、勝利に対する熱い気持ちを持ってもらえる環境であると思いますし、クラブの環境も、そういった部分を重要視して作っていきたいと思っております。

『3度の飯より勝つこと!』と書いてありますが、人が潜在能力をフルに発揮するときというのは、時間がたつのも忘れて夢中である瞬間だと思います。子どもたちは遊びに夢中になったらご飯の時間を忘れています。我々社会人も、何かに夢中になるときには、仕事に夢中になったら、ご飯の時間を忘れるほどに没頭すると思います。そういうときに、人間は一番潜在能力を発揮していると思います。それは選手だけに求めるわけではなくて、我々クラブが、しっかりとそういう環境作り、勝ちたいと思える環境作りをする、ピッチ上のサッカーが楽しいと思えるサッカーをする、そういったところをクラブとしても取り組んでいきたいと思っています。

2022シーズンは前年以上に現代的な選手というか、全体的に及第点は取れた上で長所を持っている選手を多く獲得した印象です。DFであってもビルドアップでの能力が高い犬飼、大畑、知念といった選手たちはその象徴だと思います。そういった選手を組み込むことで、チーム全体としても出来ることを増やす(出来ないことを減らす)という方向へ目が向いているよう感じました。

(後ろからボールを運んでいくときにパスでつなぐこともドリブルすることも一つあると思うが、動き回る良さもあれば、誰かが動かずにいることで他の誰かが空くということもあると思う。そういうコミュニケーションは進んでいるか?)
犬飼「ある選手がこう動いたから他の選手は別のポジションを取るといったことも分かりやすく説明してくれますので、選手が混乱することもありませんし、先ほども言ったように、それが考えなくてもお互いにそういう動きになるのがチームだと思いますので、トレーニングキャンプもそうですし、シーズンを通してそうなっていきたいと思います」


(昨季は原則として4バックで戦うことが多かったと思うが、今季はもっといろいろなことができるようにしようというイメージなのか?それとも今やっていることをもっと深掘りしていくイメージなのか?)
岩波「直近の天皇杯決勝は、酒井(宏樹)選手と僕とショルツ選手の3枚になって後ろで回したり、試合によっていろいろな形に変えていますが、3枚回しがチームとしてはまりつつあります。それは継続しながら、基本の4バックは変わらず、試合の中で選手たちが立ち位置を変えながらプレーすることが今のチームのやり方です。僕自身は真ん中か右に入ることが多いですが、真ん中と右ではプレーも違いますし、選手によってうまくやり方を変えていきたいと思っています」


(昨季は前から奪いにいくときとブロックを引くところのメリハリがあったと思うが、そういう点はどうか?)
敦樹「そういったことは試合展開や対戦相手によって変わってくると思います。前から行くときはチーム全体でラインを押し上げなければいけませんし、ブロックを引くときは中を固めて守り抜く時間帯もあると思います。そういったことはチームとして意識を統一していくことが大事だと思います」


そして、川崎とのFFS杯では保持での安定は保ちつつも非保持は敦樹を左SHでスタートさせて内側へ絞った形にしながらスタートし、安定していたかは別として4-5-1、5-4-1と試合の中で配置を変えながらしっかりと強度を出して勝利を収めました。

しかし、キャンプの段階でユンカー、小泉、大畑にコンディション不良があった上に、このタイミングで選手、スタッフそれぞれ5名がコロナに感染し、開幕節は急遽二種登録されたユースの早川がベンチに入ったり、土田SDや西野TDをコーチとして追加登録するなど緊急対応に追われました。

それでも、京都戦は決定機の数では五分の展開だっただけにせめて勝ち点1が取れていれば、と思いますし、その次の神戸戦、さらに次のG大阪戦では連続して自分たちが優位に試合を進めながら退場者を出して勝ち点を落としてしまいました。

さらに川崎戦も前半のうちに先制しながらも、ハーフタイムで川崎にビルドアップでのポジショニングを調整されて連続失点して敗戦、結局勝ち点3が取れたのは5試合目となる湘南戦でした。あまり意味のない内容から見た勝ち点勘定では11ポイントは取れても良かったのかなという5試合でしたが、実際の勝ち点は4しか取れておらず、「今年は優勝!」と息巻いたのがかえって気負いになって裏目に出たのでは?という声もありましたね。

きちんとゴール前までボールが運べているのに決めきれない、内容は良いのに勝てない、そうしたもどかしさの原因をどこかに求めた結果、そうしたマインドセットが悪かったのではないか?ということだったと思います。

加えて、開幕直後の5連戦をメンバーの入れ替えが難しい上に退場者も出てしまったことは、メンバーを入れ替えながら負荷が偏らないようにマネジメントするのが上手いリカルドをもってしても、この時期のコンディションを維持することは難しかったと思います。


この頃の「内容は良いのに」というのは、保持が3-1-5-1か3-2-4-1のような配置でスタートして、ビルドアップ隊に十分人数を割いていたので安定して相手のプレッシングを越えられていたということに対する手ごたえだったと思います。特に、2021年は苦手としていた5バックの相手(G大阪戦、湘南戦)でそこを上手く越えてチャンスを作っていたところは前年からの成長を感じるものでした。

3-1や3-2のビルドアップ隊とその前の選手たちで少し役割は分断気味ではありますが、ゴール前に絡む役割が誰なのかというのは明確だったことが少なからず手前に下りるよりも裏へ出ていこうとするアクションに繋がっていたのかもしれません。


ただ、相手がガンガン前に出てくるアグレッシブなスタイルの時にポジションを取り遅れて潰されてしまったり、多少遅れてでも強く当たられるとそこで潰されてしまったり、強度の面でまだまだ足りないと春先に鳥栖から突き付けられるのは今年も変わらずでした。

また、この試合ではCBが岩波とショルツ、CHが敦樹と岩尾でしたが、ここの噛み合わせが悪く自分たちの中でのミスマッチに苦しんでいるような場面もありました。

それを踏まえて、磐田戦からはCBとCHの左右をキャラクターに合わせて調整していくようになりました。磐田戦はCBに岩波では無く犬飼が起用されたので少しイメージが違うかもしれませんが、前に運べるショルツとヘソの位置で留まってプレーするのが得意な岩尾を同じサイドで被らないようにしていたと思います。


ACLでタイに向かうまでの3連戦はすべて引き分けで、思うように勝ち点を積み上げられませんでした。なんだか荒れて後味が悪い上に犬飼が怪我してしまった札幌戦、今季3度目の退場で勝ち点2を落とした清水戦、お互い手堅く勝ち点1を分け合ったFC東京戦、10戦消化して勝ち点10は優勝を目指すより残留を目指しなよというペースの勝ち点推移です。

一番勝ち点3に近かったのは清水戦だったと思いますが、内容も少しずつ危なくなっていたというか、思うようにビルドアップで相手を外せていない場面が出てきていました。お互いが少し寄りすぎていたり離れすぎていたり、それによってオープンにボールを持てる選手が作れずに苦しんでいた印象です。

希望が膨らんだFFS杯以降、なかなか結果が出ないことでそれが内容にも反映されてきてしまったのがこの時期だったと思います。

「いいスタートを切って、徐々に強度が落ちてしまう部分もあるかもしれませんが、スーパーカップ(FUJIFILM SUPER CUP 2022 川崎フロンターレ戦)のときは全員の意識が非常に高く、エネルギッシュな姿でプレーしていました。勝ち点が取れない流れの中で、それを失ってきたのかもしれません。メンタルの面で、より楽しさを感じながら、しっかりと緊張感を持って、自信を持ちながらプレーすることが必要です。また、セットプレーでの失点や、中盤より前でのボールロストも多いと思っています。確実に試合を決め、勝ちきらなければいけません」

ACLでも結局は2強2弱の構図だったことで2位通過することが出来ましたが、1位を懸けた相手である大邱に対しては中盤でコンパクトに構えた5-4-1のブロックを攻略できずに苦しみました。特に裏へのアクションがなかなか起こせず、それによって相手のブロックも狭いままで、ボールを差し込む場所が無いのでただボールを持つだけの時間が続いていたという感じでしょうか。

MD3の後半、そしてMD4へ進むにつれて裏へのアクションが出てくるようになって決定機も作ることは出来ていましたが、それでも勝つところまでは至らず、セーラーズや山東には「そりゃ勝つでしょ」という感じだっただけに、リーグ戦で思い悩んでいたことがACLの結果によって吹っ切れるということは無かったと思います。


この時期で気になったのは、前にある程度人数をかけられていたのと、リーグ全体の傾向として非保持側がボールを奪いに出てくるのが速くなった分、2021年よりも前に出ていくタイミングが速くなって思っていたより忙しい試合が増えてないか?ということでした。そこについては、徳島で4年間リカルドとともに戦った岩尾は敏感に感じていたようですし、そういった理由から縦へ急ぐのをセーブしようとして裏へのアクションが減っていったのかもしれません。

(レッズは整然としたサッカーを目指しているが、2位争いのことも考えるとなるべく多くのゴールを取って勝ちたい試合だと思う。そのバランスをどう考えながら試合を進めていきたいか?)
岩尾 憲
「今の質問はぜひ監督に聞いてほしいです。前節の試合内容は外から見る形になりましたが、昨季見ていたゲーム展開では、縦にアグレッシブなスピード感のあるサッカーを展開していたイメージがあります。それはリカルド監督が志向するサッカーと多少ずれがあるように感じますが、今いる選手たちで勝利、ゴールに近づく方法はそういった形だということも学ばせていただきました。ここでゴールや勝利が求められる中で、ピッチに立つときには、自分が今の組織内でできる役割をしっかりと整理することが必要だと理解しています。今はそちらの方が勝つ確率が高いのではないかと思います」


前に出ていくのか、全体で安定させてからなのか、というのが大きく揺れたのが5月だったと思います。引き分けが続く中でも広島戦では状況的には前に出ても良いのでは?という場面で周りの選手のアクションがそうなっていなくて、結果的にその時前向きにボールを持っていた小泉が前にボールを展開できずにため息が出てしまう場面もありました。

その次の横浜FM戦は前半に3点叩きこまれたことで吹っ切れて、全体で前へ!前へ!ワッショイ!ワッショイ!な雰囲気に変わり前半0-3から3-3というとんでもない展開。相手が3点リードしておきながらも好戦的に前へ出てきた反作用でそうなった面も多分にあったとは思いますが。

安定と積極性のバランスが取れてきたのが鹿島戦で、この試合の先制点はチームとしてのアクションが上手く連動した流れで取れたPKからでした。

ただ、それでも勝ち点3はなかなか取れず、C大阪戦でユンカーが負傷交代して裏へのアクションを起こせる選手が減ってしまったところでまたしても積極性というか、相手ゴールへ向かうアクションが落ちてしまいました。


ビルドアップで相手のプレッシングは越えられているが、ゴール前では結果が出ないという点について、天皇杯福島戦から名古屋戦までの約2週間の中断期間の間にチームとして攻撃の連動性を上げるトレーニングを重点的に行ったようです。

(中断期間はどんなトレーニングを行っているのか?)
「トレーニングは攻撃を中心に行っています。チームの連動性を高めること、全体で同じイメージを持ってプレーすることに注力しています。また、アレックス(シャルク)や(ダヴィド)モーベルグが全体のトレーニングをこなすようになりましたので、それも良かったと思います。3日間、非常に満足のいくトレーニングができていて、チームとしての理解も深まっていると思います。そのトレーニングによって、さらに危険な場面をつくることができればと思いますが、今までもチャンスメークという意味では、そこまで悪くなかったと思います。ただ、最後のところで決め切ることができていませんでしたので、そこを改善点として取り組んでいます。引いた相手に対してどうするかということもやっています」

(昨季は5レーンに基づいたポジショナルプレーをやっていたと思うが、そこをもっと突き詰めていると考えてもいいのか?)
「今までやってきたことに何かを増やすより、トレーニングからやってきているコンセプトの復習のトレーニングをしています。トレーニングキャンプのときにはまだ合流していなかった選手がいますし、最初はサイドで起用していたけど今は前線でプレーしている松尾(佑介)のように違うポジションでプレーしている選手もいますので、そういった選手たちが全員同じ考えのもと、基準を合わせていくことを行っています。連戦の中でもトレーニングをしていなかったわけではありませんが、この3日間はそこをテーマにトレーニングできたと思います。3月に少しトレーニングする時間があった際は、ビルドアップの改善をテーマに行い、そこは非常に良くなってきていると思います。今はさらに前に行ったところ、前線でのトレーニングを中心に行っています。トレーニングをしなければ忘れてしまうということで、今は復習を行っています」

名古屋戦ではその成果が出て、意図的にスペースを空けてそこへ飛び出すアクションがあったり、ワンツーであったり、準備してきたものが表現されましたが、その直後の天皇杯群馬戦では再びアクションの停滞が起こってゴールが奪えずに敗退し、バスが囲まれました。

その後の神戸戦は3-1-5-1の3-1の部分を4-2-3-1の3-1でハメに来られて苦戦しました。それでも、モーベルグの素晴らしいFKで勝利し、上手くいかないながらも勝ち点3を取る最初の試合になりました。チームが苦しくても、個人の力でなんとか結果は得るというのが6月の最後にやっと1つ出たわけです。


G大阪戦も敗色濃厚な内容ながら勝ち点1を拾い、少しずつ風向きが変わっていきました。京都戦では関根を左SBで先発起用し、松尾と明本を前線に並べて、後ろから押し上げる力と前線が裏を狙っていくという全体的に前向きなパワーを出しに行きました。

京都戦は引き分けだったものの内容に回復の兆しが出てきて、次のFC東京戦あたりからトップ下の小泉とCHの敦樹がIH役になる4-1-2-3の形が定着していきました。それまでも相手の配置に応じてその形になることはありましたが、このあたりから今季のハイライトになる時期に向けてメンバーと配置が固まっていったと思います。そして、この試合で良かったのはCFの松尾だけでなく大久保やモーベルグという両SHにも裏のスペースやゴールに向かう積極的なアクションがあったことです。


リカルドがコロナで不在の中戦ったPSG戦の次の川崎戦は相手方がベンチメンバーが5名、しかもそのうちGKが3名というスクランブル状態でした。

浦和のビルドアップ隊は春先の対戦では3-2で形成していましたが、この試合では2-1がベース(4-1-2-3のCB+アンカーがビルドアップ隊)になって人数が減ったにもかかわらずクリーンに前進し、その分人数が増えた前線で優位になることが出来ました。

3月頭の対戦時
7月末の対戦時

(6月の中断が明けてからJ1リーグでは毎試合必ず1ゴール以上取っている。シーズンの序盤は3枚に変化するディフェンスラインの前にボランチが2枚いて、前に5枚という形が多かったと思うが、最近は伊藤敦樹選手を前に押し出している形になっている。チームの中でどういう変化があって今に至るのか?)
「最初はダブルボランチで戦うという優先順位が高かったのですが、リカルド(ロドリゲス)監督も試行錯誤し、選手のキャラクターを含めてアンカー気味で伊藤選手をインサイドハーフのように配置しています。当然その中で相手の出方を見ながら流動的になり、一時的にダブルボランチにすることも試合の中でありますが、大枠の考え方は1アンカーの2セントラルと、昨日の試合であればサイドの(ダヴィド)モーベルグ選手と関根(貴大)が内側を取るのか幅を取るのかというところで、前に人数をかけることと、縦のレーンで割ったときに5レーンに人がしっかりとバランス良く配置できる環境をつくった、それがまた選手の特長も含めてうまくいっているということがゴールシーンにも出ていると思います」


ある程度形になると相手は当然対策してくるわけで、ルヴァン/リーグ/ルヴァンで3連戦となった名古屋は浦和の4-1-2-3の保持に対して人をしっかり当ててきました。また、多少無理をしてでも潰してくるようなチームへの苦手意識は春先の鳥栖戦と似たようなものがあったと思います。

2戦目はCHを柴戸と平野にして名古屋の目線をずらしに行きましたが、それでも名古屋の強度に屈してしまいました。1戦目も含めて、ショルツ、柴戸、平野と次々と負傷してしまったのはとても後味の悪い流れでしたね。

3戦目は相手がハメに来るのも理解した上で4-1-2-3でスタートしつつも、アクションをある程度設定することでそこについてくる相手が誰なのかを共有し、ホームでの久しぶりの声出し応援も手伝って3-0の快勝になりました。

そして、その配置、勢いのまま磐田戦やACLまで一気に駆け抜けていきました。両SB(酒井、大畑)、ショルツが後ろから押し上げることで、前線で待つ選手たちをさらに前へ押し出すようなアクションの連続性があり、チーム全体での積極性があったこのあたりは正にこのシーズンのハイライトでした。


しかし、ここで選手6名がコロナに罹患してしまい、それによって再びトレーニングに制限が出てしまったり、選手起用が偏ってしまったことで選手のコンディションは落ちていきました。9/14のリーグでのC大阪戦はそれが最も顕著に出てしまったと思います。ただ、その試合は4-◇-2で入って狙いがハマらなかったというのもありましたが。

コンディションが落ちてきた中でリーグのC大阪戦、湘南戦、ルヴァンのC大阪戦とどんどん内容的にも苦しくなっていきました。7月~8月に多く採用していた4-1-2-3という静的にとてもバランスの取れた配置を基本陣形にした保持の中でプレーできる選手と、多少アンバランスというか、3-1-5-1のように人がいる場所といない場所が少し偏っていて動的になることでバランスを保てる配置で活きる選手がいます。今思えば、その違いをチーム全体として上手くミックスできなかったのかもしれません。


ここでちょっと配置そのものの話をしようと思います。今季は非保持は相変わらず4-4-2をベースにしていましたが、保持では大きく分けて開幕から夏前あたりまでは3-1-5-1(CHを2枚にするなら3-2-4-1)で、夏以降は4-1-2-3がベースになりました。そして、それぞれの長所と短所がそれぞれ見えた1年だったと思います。

4-1-2-3と3-1-5-1をそれぞれ並べてみました。4-1-2-3は前も後ろも、内も外も均等に人が配置されて、3-1-5-1はレーンで区切った時には内側、ゾーンで区切った時には中盤に人が多くなります。

3-1-5-1の方を見て行くと、中央に人が多い状態になりやすく、人が多い=近い状態になるとポジションの入れ替えも素早く行えること、サポートをすぐに行えることが利点として挙げられます。密集になりやすいのでトランジションゲームになる可能性もありますが、各自の担当領域は狭くなるのでお互いにカバーしやすくなる良さもあります。


ビルドアップを考えるとボールを前に進めながら試合を安定させるためには、人もボールが進んだ先にいないといけませんが、人がボールの近くに多いということは、同じ密度を保ち続けるためにはボールと一緒に進まなければいけない人数も増えるということになります。

ボールと人で比べるとボールの方が進むのは早いので、人をより多く前に進めるためには人数が多い分だけ時間がかかります。人数をかけて丁寧にビルドアップしても、ゴール前に人が追いつくまで時間がかかるのでその間に相手はゴール前のスペースを埋めてしまいます。春先の引き分け地獄での悩みはまさにここでした。

その点、4-1-2-3は全体に均等に人がいる、つまりボールを前で待っている人がいるわけですから、3-1-5-1より速く前にボールを進めても同じ密度で前にも人がいる状態です。しかし、3-1-5-1よりもそれぞれの距離が離れているわけですから、それぞれがより長い距離で正確なパスが出せたり、より長い距離を走って前の選手を追い越したりといった、技術も運動能力も求められます。ポジショナルプレーという盤面上の正論が詰まった配置とも言えます。


また、それぞれの担当領域が広いということは、それぞれのスペースでの振る舞いの自由度が高まるので、周りの状況に応じてポジションが取れれば全体の機能性が高まりますが、誰かがその範囲の中で手前に下りすぎたり、前に出すぎたり歪な形になると補完関係が崩れてしまいます。

7月~8月に固まったメンバーは相手より高いレベルでプレーできる選手かつ、チームとして前向きなアクションを共有出来ていたからこそこの配置でやり切れましたが、それ以降は個人レベルで相手に対して優位が取れない場所が出たり、そこをフォローするためにスペースの中で自陣方向へ動くアクションが増えたことで相手ゴールへ向かう勢いがなくなってしまったのではないかと思います。

ビルドアップ隊の人数を減らしているわけですから、そこを相手に詰められて打開できない時には下りていくアクションが増えますし、IHやWGの選手は前に出た時に自分の背中のスペースをケアする選手が遠いので、ボールを奪われて相手にそこを突かれる怖さがありそうです。どこかでネガティブなスイッチが入るとどんどん後ろ向きなアクションがかなりやすいように思います。

逆に、それまでの3-1-5-1ではビルドアップ隊に人数がいるので後ろで詰まること自体が少なく下りるアクションも減るので、相手ゴールへ向かう体勢は作りやすくなります。IH、WB、トップ下の選手からすれば自分が前に出てもすぐ後ろにも別の選手がいるのでスペースを空けることの心理的障壁は4-1-2-3のIHやWGよりは低いのではないかと思います。


結局相手ゴールを奪うためには、相手ゴールにボールも人も向かっていかないといけないので、どうやってオープンにボールを持つ選手を作るのかと、それが作れた時に前線はゴールに向かっていって後列はしっかりとついていく(ラインを押し上げる)ことができるのかが大切になります。

周りの技術や走力を信頼して前に向かうのか(4-1-2-3)、周りが近くにいる安心感で前に向かうのか(3-1-5-1)という違いであって、より個々のレベルが高くなれば前者になっていくという流れは想像しやすいと思います。


9月にコロナショックも相まって失った結果と自信はそのまま10月も引きずることになってしまいました。初戦の広島戦では浦和のビルドアップ隊がプレッシングを真っ向から受けてしまい4失点で敗戦。なかなか前向きなアクションが出て来ない(手前から繋ぐことに固執していた?)ことで広島のプレッシングをさらに加速させた面もあったと思います。

そこでリカルドは非保持で4-4のブロックと2トップが分断されるリスクは承知でユンカーとリンセンを同時起用し、分かりやすく前向きなアクションを出しに行きました。鳥栖戦はこれが奏功してなんとか勝利しましたが、札幌戦では奏功しかけたものの決定機を活かせずに引き分け。

横浜FM戦の後にはリカルドの契約解除が発表され、最終節の福岡戦も裏へのアクションが少ないことでボールは持つけど攻略できないという今季何度も観た内容の試合でシーズンが終わってしまいました。


◆2021年の課題に対する考察

さて、シーズンの流れをおさらいしたところで、「ピッチ上の現象のバリエーションをどれだけ増やせるのか」「個人の力で構造上の不具合を清算する回数を増やせるのか」の2点について見て行きます。


まず1点目の「ピッチ上の現象のバリエーションをどれだけ増やせるのか」について。今季もその時の対戦相手に応じてきちんとした設定を用意して試合に臨んでいることは見て取れました。特に保持は、配置によって、あるいはそのスタート位置から起こすアクションによって相手に影響を与えるための仕掛けが用意されていて、それによって春先は結果こそ出ませんでしたが決定機はきちんと作れていましたし、7月~8月も4-1-2-3ベースの配置から左右両サイドでポジション入替を潤滑に行って結果も出しました。

非保持については、4-4-2ベースで相手を中盤ゾーンに引き込みつつも外へ押し出して、待ち構えた網の中にボールを入れさせるという昨季から積み上げてきたスタンスで10月の大量失点が無ければリーグ最少の失点数という固さを作ることが出来ました。ただ、その固さを保てるのは2トップに入る選手の方向付けがあってこそだった訳で、それが出来ない選手が起用された時には意図的なボール奪取はなかなか出来ていませんでした。

リカルドがリスクを控える傾向が強いからこそ、安定した守備が出来て、そこから攻撃へ繋ごうとすることが出来たという見方も出来ますが、相手や状況によってはリスクを冒して、前の選手は一定の相手やスペースを埋めておくだけに留めて後ろの選手を押し出すような、チーム全体で前方向への矢印を出してボールを奪いにいくことはなかなか出来ませんでした。

最終盤の横浜FM戦はマンマーク要素を強めて、奪いに行く、潰しに行く、という意識を強めたのかもしれませんが、この2年間であまりやってこなかった方法だったことや、速さという点では相手の方が何枚も上手だったことでそのプランはあっさり瓦解してしまいました。


ボールを奪ったら一気にゴールへ向かっていくというのは、ボールを奪う位置が高くないと相手ゴールに近いエリアに選手がいないので、ただ行き来の激しいオープンな展開、リスクの高い状況が生まれやすくなります。特に9月のところで書いたように夏前までの保持を3-1-5-1にするやり方ではチーム全体で前に押し上げていく必要性が高いので、ボールを奪う位置の設定はより重要になります。

ボールを奪った地点が保持の開始地点になるわけですが、中盤ゾーンに網を張ってボールを引っ掛ければ当然ゴールから距離がある位置から保持がスタートします。つまり、浦和が高い位置でボールを奪う状況を発生させるのは、保持で全体を押し上げた中で、ボールを失って、すぐに奪い返すという状況でしか成立しにくいことになります。クラブが発表している2022年の振り返りでもそれに近しいことが書かれています。

ディフェンスラインを含んだチームの平均的なプレーエリアが非常に低かったこと。そして次に、アクティブ(能動的)な守備を前線の高い位置から仕掛けることができていなかったこと。最後が、相手ゴール前でのプレーの質(決定力)です。

失点数を低く抑えることはできましたが、その守備の手法は、自陣ゴール前での人数が整った状態での守備の固さによるものであり、「受け身の守備」であったと言えます。結果として、低いプレーエリアで引いて守ることが多くなり、選手個々の能力もあり失点を少なくすることができましたが、攻撃への接続(ポジティブトランジション)という点に課題が残りました。
アクティブな前線からの守備については、一つ目のプレーエリアの課題と密接に関係しますが、相手に攻めこまれてもゴールを決めさせない「ゴールマウスを守る守備」ではなく、相手が体制を整える前にこちらから仕掛けて「ボールをアグレッシブに奪い返す守備」を多くすることで、ゲームの主導権を握り、より相手陣内でプレーする時間を増やすことができる。チームとしてはそのような主導権をもったアクティブな守備を志向しましたが、この点についても達成度は低いと評価をせざるを得ないパフォーマンスでした。


リカルドとの2年間では、静的な保持の形はその試合で相手に応じて設定したことでバリエーションは出たが、4局面の循環の仕方という点では良い攻撃ありきに留まってしまったと言えます。リカルドは決して保持至上主義者ではなく、試合全体のバランスを論理的にコントロールしたい(岩尾が言っていた「フットボールが自分たちの掌の上にある」状態)と思いますが、結果的に表現されたのは保持ありきだったためリカルドがそういう印象を持たれやすかったのだろうと思います。


ここで話を2点目の「個人の力で構造上の不具合を清算する回数を増やせるのか」に移していこうと思いますが、チームとして設計された形のバリエーションは4局面全体で見た時には偏っていた上に、前線では上手くいかないときに個人のスピード、決定力でその不具合を清算する回数がとても少なかったです。

ユンカー、モーベルグ、シャルク、リンセンといった前線の外国籍選手たちが、能力はあるもののコンディションが上がらずに稼働率が低かったことも「個人の力」での精算の回数が少なかった要因に挙げられます。他の選手についても、春先の試合で決定機がありながらも決めきれなかったことで勝ち点を落としたという流れもあります。

安定した試合運びというのは非常に大切です。その分リスクを冒す回数は少なくなるので、決定率が高くないとなかなか結果に結びつきにくい面もあります。相手との力の差があればゴール前にボールが入る回数は多くなると思いますが、力が拮抗していたり相手の方が上の場合にはその回数は決して多くないですし、結局試合を決めるのはゴールが入るか入らないかなので、そこはシビアに見なければいけません。クラブ公式の方でもこの点の課題として「リスクのかけ方」について言及していることには合点がいきます。

最後に、相手ゴール前でのプレーの質(決定力)です。この課題にはいくつかの原因がありますが、選手編成における課題、チームとしてのリスクのかけ方、個性の発揮の3つが課題としてあげられます。
まず、選手編成においては外国籍選手等、怪我によって今シーズンはほぼパフォーマンスできなかった選手もいるなど、質の優位性という点での編成上の課題を認識しております。また、チームとしても、プレーエリアが後方に偏ることは、リスクをかけてゴール前に人数をかけることと相反することから、【リスクを負って得点を取りにいくこと<自陣ゴール前に人数をかけてリスクを低減させること】という戦い方が多くなり、得点を量産することができませんでした。また、個性あふれる選手達が相手ゴール前で存分に、イキイキとパフォーマンスできるような、チャレンジしやすい、心身両面における環境設定にも課題がありました。


リカルドが定例会見などで度々ゴール期待値(xG)はリーグで上位だということを話していました。いわゆるタフショットであっても回数を重ねれば数字が上がっていくものなので数字だけを見て話をすることは難しいですが、それでも今季の最終結果はリーグ2位の1.567。ただ、1試合の平均ゴール数は1.38でこれを下回っています。

上位にいるチームはいずれもゴール期待値を1試合の平均ゴール数が上回っていて、これを見ると、決めるべき時に決められる、ちょっと難しい場面でも何とかする、という個人の力量はチーム全体の成績にも反映されているのだろうと思います。


非保持では今季誰よりも成長した西川であったり、西川と同様この3年間を戦い抜いた岩波、そして俺たちのベスイレには必ず選出されるショルツといった強固なDFがあまりバリエーションを持てなかった非保持を救ってくれたと思います。あるいは、彼らがいたからこそ、どこかで誰かが走り回らなくてもリスクさえ抑えれば失点が防げるというスタンスをやり通せたのかもしれません。

今のチームがバランスの良い、前線の選手だが守備にも貢献できる、後ろの選手だが攻撃にも貢献できる、といった選手で編成されていると言っても、前線の選手のタスクの中で最優先なのはゴールを決めることですし、後ろの選手はゴールを守ることです。なので、あまり部署ごとに評価をするのは好きでは無いですが、成長度合いがどうかという点は置いておいて、どれだけチームが苦しい時に貢献できましたか?という項目で個々を見た時に、前線部隊の査定は低くなりますし、後方部隊の査定は高くなるのが妥当だろうと思います。


◆2023年に向けて

2022年に向けて感じた課題はいずれも及第点だったとは言えません。それがそのまま順位に反映されたとも思います。既に新監督としてマシエイ・スコルツァ氏の就任が発表されています。彼がどのようなスタイルを持っている指導者なのかはまだほとんど映像を見ていないので分かりません。youtubeに動画が転がっているらしいので少しずつ見て行きたいと思います。

とは言え、クラブの理念、コンセプトありきで大槻→リカルド→スコルツァという流れを作っているべきで、リカルドに求めたクラブの理念、コンセプトの実現をスコルツァには求めないということはあってはいけません。

大槻さんとリカルドに共通していたことはチームとして試合に対しての設定をきちんとしていたこと、それは4局面のどこかだけを強調したものではなく4局面の循環のさせ方に矛盾が生じないことだったと思います。そういう「攻守に切れ目のない」というところは近かったものの、それに付随する「相手を休ませない」という文言については、大槻さんの方がリスクをかける、リカルドの方がリスクをかけない、という違いがあって、そういう点で大槻さんの方がより動的な試合、リカルドの方が静的な試合が多くなったのだろうと思います。

クラブが総括として「リスクのかけ方」について言及したことはとても興味深くて、リカルドを招聘した当初もクラブのコンセプトとリカルドのスタイルは完全に合致するものでは無いけどそこは擦り合わせていきたいという話がありました。

西野TD
「リカルド監督がどういうサッカーを展開するかということも重々理解した上で、この人となら一緒にやっていけると考えて、チームが作ったコンセプトをリカルド監督に見せ、リカルド監督にも自分のやりたいサッカーを話してもらい、我々が作ったコンセプトを変えないということではなくて、それを擦り合わせていくということを主導という形の言葉で述べさせてもらいました。」

リカルド ロドリゲス監督
「西野TDにもおっしゃっていただきましたけれども、また別のサッカーの観点、やはりレッズが良かった時期をさらに越えていけるような、そういう素晴らしいサッカーをしていくという話をしています。そうするためにはというところを全員で会話を重ねながら積み重ねていきます。そういったところに常に信念を持ちながら、お互い何をすればいいのか、たとえば、レッズだったら攻撃的にいくところをさらに高めていくところであったり、お互いが考えているところを常に擦り合わせながら高めていければと思っています。そして、チャンスを多く作って勝てる試合をどんどん増やしていけるようにもっていければと思います」

ここで大切なのは「リカルドがやりたいサッカーを浦和でやってもらう」ことではなく「浦和がやりたいサッカーをリカルドにやってもらう」ということです。この文脈での主語はあくまで「浦和」「クラブ」です。それこそが過去の反省を踏まえて、フットボール本部体制の中でやろうとしていることのはずです。

この認識がズレてしまうとリカルドと過ごしたこの2年間、さらにはフットボール本部がやってきた3年間への評価が変わってしまいますし、その目線が合っていないコメントを見ると「そういうことじゃないから」って思ってしまいます。


「リスクのかけ方」という点で浦和のコンセプトとリカルドのスタイルには違いがあったと思いますが、そこについては7~8月の試合を観ればクラブとしての方向性に近いサッカーが展開されることは証明できていると思います。ただ、これはそのタイミングで試合に絡んでいたメンバーならできていたがそれ以外の選手では出来なかった、それ以外の選手の能力が追いついていなかったり、それ以外の選手を組み込んでも同じように前向きなアクションが増える仕組みを作れなかった、ということから9月以降は失速してしまったと言えます。

安定とリスクのバランスを取ることは簡単ではありません。クラブの理念、コンセプトよりも安定を志向する監督の下で、そこをすり合わせるというチャレンジは静的な局面では成果が出て、動的な局面では難しかったというとても理にかなった結果が出たと思います。

ここでまたやじろべえのようにリスクをかける側に思いっきりアクセルを踏み切るのではなく、リカルドよりはもう少しリスクをかけるというくらいにギアを一段ずつ上げていくのが良いかなと思いますが、そこがどうなるのか、そもそもスコルツァさんがどういう志向なのかはきちんと見て行きたいですね。


最後に、僕が2020年、2021年と翌年に向けて感じた課題はサッカーのスタイルというよりは、指導者と各選手の在り方や態度であったり、理念、コンセプトの一部だけを強調しない、全体的なバランスの良さについてでした。それはクラブが掲げている理念、コンセプトがそういう方向性のものだったからです。そして、クラブは2023年以降も今の方向性を継続することをはっきりと宣言しました。

テーマ(考え方)は、方向性(コンセプト) × 継続性(積み重ね)です。
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できたこと、できなかったことについてそれぞれ真摯に振り返り、次に活かす糧としてクラブの経験として積み重ねてきています。そして、それを継続させていきます。
もっとも重要なチームの成績という点では、満足のいくものではありませんでしたが、成長のプロセスとしてはこの方向性をいかに継続(積み重ね)していけるかだと認識しています。プロセスにおいて、選手、監督、チームスタッフ等が変わっていくことは当然起こり得ますが、それによって継続が断たれることは決してありません。

なので、2023年は今季に向けての課題だった2点を引き続き追いかける、今年目指したが足りなかったものをどうやってクリアするのか、というところを見て行きたいと思います。


これで、3年間それぞれの年間総括が出そろいました。次回は既に#1~#3を出している三年計画全体の総括を考えていこうと思います。それは各年の総括のようなピッチ内の配置やアクションということよりも、クラブとしての方向性や態度という部分での総括になるだろうと思います。

今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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