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三年計画の定点観測(2021年総括)

◆2020年の課題

まず2021年を振り返る前に、2020年の総括として書いた文章の思い出しから始めようと思います。

大槻さんは「主体性」「役割や優先順位」という言葉を何度も会見で使っていて、それは指導者が選手のアクションを具体的に決めるのではなく、「役割や優先順位」といった判断の材料を提示して、選手自身が「主体性」を持って状況に合わせて判断していくということを目指していたのだと思います。

勿論、全ての判断を選手に委ねていたわけではなくて、時期によって特にビルドアップ時のポジショニングは決めておくことはあったのですが、それでもそのポジションを取ったところからのアクションは選手に委ねられていたのではないかと。

ただ、結果を見ても、内容を見ても、2020年の選手たちはこの「役割や優先順位」というもの、言い換えればプレーモデルになるのだと思いますが、これを上手く使いこなせませんでした。クラブが出したシーズン総括でも「チームとしての『型』の不在」「苦しい展開の際に、立ち返るべき『型』がなかったこと」を課題としてあげています。

そして、リカルドが新監督として招聘されるにあたって当時の徳島の試合をいくつか見た上で「ボール保持に関してはスタートポジションを「決める」傾向にあります。そうした点から考えても、大槻体制が選手に委ねたことによってチームとして表現できなかった「型」のようなものは、リカルド監督になって「決める」割合が増えれば表現しやすくなる可能性が高いと思います。」という感想を持ちました。

なので、2020年総括の最後には以下のことを書いています。

試合ごとの評価はその都度していくことになると思いますが、2020年を踏まえて2021年のシーズン後に監督を評価するときには
・「決める」と「委ねる」割合は適切だったのか
(選手の能力に合わせた割合に調節することが出来たのか)
・「決める」割合を増やしてチームの「型」が見えるようになったのか
の2点がポイントになるかなと思います。
(その中で選手が成長し、最終的に「委ねる」割合を増やしていっても対応できるようになれば最高ですが)

このことを踏まえて2021年を振り返っていこうと思います。


◆2021年の流れ

まず「決める」の部分については指導直後の大原でのトレーニングから、特にビルドアップ時のCBのポジショニングについて明確な提示がされています。

特にセンターバックのポジションは昨年から大幅な変化が見られるポイントなのではないかと思っています。
僕が関わっていくというよりは、ディフェンスラインがどこまでも下がってボールをもらうことを監督は要求していますし、相手を前に来させた分、背後や真ん中が空いてくるという話がありました。
センターバックとサイドバックの位置取りは今までになかった形です。僕にボールが入ったらサイドに開くことが普通だと思いますが、僕と同じくらいのラインまで引いて、僕より後ろでもいいというポジションを取らせて、そこから攻撃が始まるという形を今はやっています。僕としてもパスコースが1つ2つ増えた感覚ですし、バックパスが来てもみんなが開いている分、相手も開きますし、空いてくる場所が増えていきますので、自分の長所も出しやすいと思います。

GKがボールを持つ時にCBが同じ高さまで下りるというのは2021年の試合で何度も見られたことだと思います。ビルドアップできちんと前向きにボールを持ったところから始めたい、そこに相手がついてくればその背後のスペースが空くというポジショニングですね。

また、プレッシングについてもしっかり相手のボール保持者に対してアクションを起こすということを取り組んでいたこともインタビューからうかがえます。

フォーメーションに関しては、今日は4-4-2でやりましたが、これまでいろいろな形をやっています。まだやり方は定まっていませんが、ボールを失った後に近い選手がしっかりとプレスに行く、ボールを奪いに行くということはどのフォーメーションでも言えることだと監督も言っています。そこは徹底して、高い位置からボールを奪いに行く、近い選手がファーストDFとしてアプローチするということはしっかりやれています。去年からの積み上げはそこだと思います。

2020年はコロナによる中断の後、真夏にリーグが再開され、本来であれば暖かくなり始める時期で体に無理が効きやすい時に強いアクションを出す習慣をつけて、そこから徐々に行くところは行く、行かないところは行かないという切り分けを目指していたのがやりづらくなってしまいました。それでも8月ごろには「とにかく行く」というアプローチをしましたが、結局やり切ることは出来ませんでした。

2021年は昨年にはなかったもの(ビルドアップで繋いでいくための明確な手段)と昨年やりたかったけど出来なかったこと(積極的なプレッシング)をそれぞれ目指していったのだろうと思います。


ここからは毎月の月報記事で上げた事柄を中心に見て行きます。まずは3月。

3月はビルドアップではCHの1枚を後ろに落として3-1の形を作りながら前進を試みますが、それではなかなか上手くボールを前進できずにトップ下の小泉が下りてきて3-2のような状態になることが多くなりました。その結果、前にボールが運べてもゴール前に人がいないという状況が生まれてしまい、3月は流れの中からのゴールが1点も取れませんでした。

小泉が下りてこないと前進できないというのは先述のビルドアップ時のCBのポジショニングも含めて自分たちが取るべきポジションへ移動するまでの判断の遅さが要因だったのかなと思います。鳥栖戦、横浜FM戦は相手のプレッシングの速さと、浦和のポジショニングの遅さがかみ合ってしまって大いに苦戦しましたし、川崎戦では40分間は試合を上手く進められたものの、トランジションのスピード感の差から先制点を奪われてしまうと後半は一気に叩きのめされてしまいました。

ボール保持の時間を長くするということは、相手を見ながらボールを扱わなければいけないので、相手を見るためのポジショニングが必要だし、ボールを扱うための技術も必要です。中盤のところで小泉がそれを上手く表現できる場面は多くあったものの、チーム全体としてそれが出来なければ相手は出来ないところを潰しに来るので、どうしてもチームの総和を上げて行く必要があります。

シーズン序盤の相手が札幌も含めて数年の積み上げがあるチームばかりで、しかもいきなりの7連戦だったということもあって、チームとしての積み上げの差を感じる3月でした。


4月は武藤をCFでスタートさせ、柴戸がアンカーとして開花した4-1-4-1の形でスタートしました。柴戸が「へそ」の位置にポジションをとり、武田、小泉の両IHも含めてピッチの内側でボールを受けて、ターンして逆サイドへ展開する場面があったり、幅を使いながらボールを循環させることが出来るようになってきました。

また、怪我で出遅れていた西がこの時期からスタメンに入ってくるようになってボール扱いだけでなくポジショニングの上手さがチームのビルドアップ向上に大きく貢献していたように思います。

開幕からやってきていたビルドアップの形は2CB+2CHが3-1の形になるというものでしたが、全体の基本陣形が4-1-4-1になったので、2CB+アンカーの2-1であったり、状況に応じて右SBが残るパターンの3-1になることが出てきました。

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ただ、徳島戦序盤での武田の負傷によってこの人選が出来なくなると、C大阪戦では敦樹と柴戸の2CHにして、ビルドアップ時の3-1の作り方は柴戸は引き続き「へそ」の位置にいて、敦樹は左のハーフレーン付近、あるいは槙野の外側に下りてビルドアップ隊の中でも幅を取るようにしていきます。ただ、この時には後ろが重めになってしまってボールは運べるんだけど決定機まではいけないというもどかしい展開。そして後半は敦樹を下げて興梠を入れることで前の人数を物理的に増やしますが、そうなるとネガトラのフィルターが減ってしまってオープン気味な展開になってしまいました。

大分戦は相手が5-4-1ということもあってか、敦樹ではなく小泉をCHに入れて最終ラインはあくまでも岩波と槙野の2枚でビルドアップを行おうしたのですが、これがなかなか上手くいかず。

4月は相手がガツガツ前へプレッシングに来ないチームだったので、ビルドアップのポジショニングの遅れで窒息することは少なく、右は西がいる分ボールを安定して持てるようになりつつ岩波が逆サイドまで発射するなど自分たちの思惑の中でボールを前進させられる回数が増えたものの、ミドルゾーン以降でセットされた時に、安定してボールを運ぶためには後ろに人数が必要だがそうなるとゴール前の人数が足りない、ゴール前の人数を増やそうとするとビルドアップの精度が落ちてネガトラも上手くきかない、というあちらを立てればこちらが立たずというもどかしさもありました。


5月の初戦は4月からの延長でビルドアップ時のポジショニングに苦しんで敗れてしまったものの、仙台戦からついにキャスパー・ユンカーが合流しました。さらに、福岡戦で失点に繋がるプレーをしてしまった西川に代わって彩艶がスタメン起用。

仙台戦の前半はそれまでになくビルドアップの配置は流動的というか2CB+2CHが相手を見ながらポジションを取ることにトライしていたように見えました。リカルドがビルドアップ隊に対して「決める」から「委ねる」の割合を分かりやすく増やしたように見えたのはこれが初めてだったのかなと思います。

ただ、結果的には2CHがどちらも中央からいなくなってしまうなどバランスの調整が上手くいかず。飲水タイムで明確に3-1の配置になるように決めて、ハーフタイムはさらに西をそこへ加えて西+2CBと2CHの3-2の配置にしてしまって、相手を見てポジションを取れる武藤と小泉が中盤より前の位置で自由に振舞ってユンカーのリーグ初ゴールをアシストしました。後ろの人数が多くてもちょっとした隙を見つけて何とかしてしまうストライカーの加入というのは非常に大きい出来事でした。

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続くG大阪戦では柴戸が福岡戦での負傷から復帰したこともあって、彼が中央にポジションを取るので相方のCHである阿部が先述の敦樹の役割に近いイメージで槙野と組んでビルドアップ隊の左側、田中が右外に張るので西は少し下がり目の内側という並びになって歩い程度ビルドアップ隊の役割がはっきりした形になりました。

また、この辺りの試合から明確に守備時は2トップの一角になる小泉のプレッシング能力が際立つようになります。今季は相手をどんどん外に追い出すことが出来れば縦に進まれるのは許容するという矢印の出し方が多かったですが、それは小泉が上手く横方向から追いかけて相手から中央や逆サイドへの選択肢を消すことが出来たのが大きかったと思います。

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神戸戦では前半はボールを持たれる時間が多かったものの、後半から柴戸と小泉を入れると、ボール保持では柴戸のポジショニングとターンが、非保持では小泉のプレッシングが上手く機能していました。

広島戦でも5-2-3の配置に対して、相手CHの脇のスペースが空いていると見るや左は汰木、右は田中か小泉がそのエリアに入っていくことは出来ました。ただ、この試合では最後の最後に対5バックの時に4バックのチームが苦しみやすい幅を取る選手にSBが引っ張り出されてスペースが出来てしまうという状況から同点ゴールを奪われてしまいました。

CBはデンがなかなかコンディションが上がらず、藤原と工藤はリーグ戦で使うにはまだ心もとないという台所事情なので、逃げ切りのための手段をどうするのかというところにまだ課題があった時期でもありました。

名古屋戦でも中盤でのコンパクトな守備に苦しみ、相手がすぐに寄せられてしまう状況でいかにその矢印を外すのか、そもそもその矢印を裏返すのか、というところに課題が出た試合でした。それまではボールと人を動かして相手の中盤にスペースを見つけてそこを使うという場面が多かったのですが、そこよりも一つレベルが上がった相手、簡単にはスペースを空けない、人にタイトに当たりに来るというチームに対して、そこを個人で打開することはまだ出来ないというものでした。特に名古屋が中盤を3枚にしてからはボール前進がかなり難しくなった印象です。

秋にもう一度同じ課題にぶつかるわけですが、チームとしてボールを前進する形が出来た上で、相手がそれを理解して対策をされてしっかり苦しんだというのはこの試合が最初だったかなと。チームとして向上するフェーズを乗り越えて、そのうえで個人で何が出来るのかというフェーズへの突入です。


6月は前半にルヴァン杯と天皇杯の3連戦、後半にリーグ戦が3連戦という流れでしたが、特にルヴァン杯では神戸が明確な浦和対策を施してきました。アウェイ戦ではリーグ戦で幅を使われたことを踏まえて5バック、ホーム戦では中盤が◇の4-4-2で浦和のビルドアップ隊の肝であるアンカー役のところに明確に人が当たるような配置にしてきました。それでも耐えるところは耐えて、少ない決定機を決めきることで勝ち上がることが出来ました。

天皇杯の富山戦もボールを持つ時間はとても多かったものの、富山の5-3-2の守備は非常にコンパクトでなかなか相手の裏を取りに行けない展開が続いてしまいました。しかし最後に大久保のドリブルから決勝点が生まれ、この試合を境に大久保は左の順足WGとしてのポジションを確立させていきます。今後彼はもっと大きな選手になれると思いますが、そのキャリアの中での大きなターニングポイントがこの富山戦だっただろうと思います。

月の後半の湘南戦はその大久保の動き出しが非常に効果的でした。ある意味、富山の5-3-2の守備がこの試合の予習になったような感じもあったのかなと思ったりしました。

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この試合は結局ビルドアップでの技術的なミスから失点をして敗れてしまいましたが、それらの場面はポジショニング自体は悪くなくて、プレーを遂行するときの技術エラーが失点の理由だったと思います。なので、遅かれ早かれそういう場面は来るだろうと思っていましたし、勿論ミスをしてしまった金子や彩艶は非常に悔しい思いをしたでしょうけど、中継映像でもうつむく彩艶をデンが声をかけて支えている場面があったりしましたが、深刻にとらえる必要はないのかなと思いました。

リカルドも試合後会見を読む限りでは、このミスに対してはネガティブな捉え方をしていないように見えます。

(試合内容は素晴らしかったと思うが、前半の最初から、GKからのボール回しですごくリスキーなプレーが多かったと感じた。しっかり組み立てることと、自陣のペナルティーエリアでリスクを冒すことは違うと思うが?)
「もちろんリスクを冒してやっているというところもあると思いますけど、ただ我々は前線に蹴ってもそこで勝てず、そこから相手にゴール前まで持っていかれるというシーンがこれまでもあったので、そういったところに関してはそれぞれの考え方があると思います。ただ我々はそこのリスクを冒しているだけではなく、どうやったら相手のゴールに迫っていけるか、そういう攻撃を後ろからしているので、何がチームにとって最善なのか、そういった考えを持ってやっています。もちろん、今日の失点シーンのようなことも起こりうると思います。ただ我々としては、どういった崩しをしていきたいのか、それを考えながら進めていました」

湘南戦についてエントリー云々でのひと悶着がありましたが、それはピッチ内の出来事についてあまり関係のないことなので割愛します。

柏戦はその絡みで試合直前に彩艶が出場できないことが発覚して急遽塩田が招集されたり、西川がスタメンに戻ったりということがありました。また、CBはデンが右に入ったことで岩波が左で起用されます。デンは相変わらず前がオープンならしっかり運ぶことが出来ていて、左側は岩波、敦樹、柴戸が上手くローテーションをしながらこちらも2トップ脇でオープンな状態になったら運んで前進していくことが出来ました。この試合の雑感のタイトルにもしましたが、規制が無ければどんどん運べる状態でした。

ここでリーグ戦は19試合を消化して折り返し。9勝4分6敗で勝ち点31でした。開幕から1ヶ月は苦しんだものの、4月と5月に3連勝があったり、その中で中身もついてきていて少しずつ上向いている実感のある前半戦だったと思います。さらに6月はカップ戦があったこともあって20人以上の選手が試合に絡んだ中で結果もつかんだので、チーム内はとてもポジティブな空気になっていたのではないでしょうか。

6月と言えば、酒井と江坂の加入会見と合わせて西野TDの会見も行われ、クラブとしての変革をオープンに見せる姿勢であったり、クラブ内での情報連携が上手く行われていることが伺えました。

また、この時点ではいわゆる遅攻でのゴールは取れるようになってきたもののクラブとしてのコンセプトである「最短距離でゴールを目指す」というところはなかなか表現出来ていないということについても西野さんはきちんと言及していたのが印象的でした。


7月の月報は五輪による中断期間にアンケートを取ったり、それをもとに喋ったりしたのでそれがついています。

7月の対戦相手に共通していたのは、ミドルゾーンでコンパクトに守備をしていて、浦和がボールを持って入ってこようとしたところを押し返し、その勢いでボールを奪いに出ようとするところでしょうか。どうして相手にそうした前向きなアクションを出されてしまうのかというと、浦和の方が相手の裏を狙うことが少なかったことも一因だろうと思います。

結局シーズン最後まで悩んだ相手の裏を狙う回数が少ない分、相手に前向きなアクションを強められてしまうという課題は対戦相手のスタンス次第では通年の悩みだったわけです。ここの仙台、大分との試合で勝ち点を落としたことが後々響いてきてしまいましたね。。


夏の移籍市場で浦和はショルツ、酒井、江坂、平野、木下を補強。シーズン半ばでこれだけ主力級の選手の補強が発生したのは記憶にありません。逆に武藤が柏へ完全移籍、杉本、涼太郎、武田、藤原がレンタル移籍。チームの血の入れ替えがより一層進んだ印象を持ちました。

小泉の怪我もあって五輪による中断明けの初戦から早速江坂が先発で出場し、続く鳥栖戦では酒井と平野もスタメン、ショルツも終盤に途中出場と、どんどん出場機会を得て、その中でそれぞれの選手がいきなりチームの中で実力を示していきました。特にショルツと平野の加入は大きな影響があっただろうと思います。

それまでのビルドアップについては、右の岩波はまだポジションを取るのが遅れることはあるものの、前がオープンになれば運んだり対角にボールを飛ばしたりして展開がつけられていた半面、左は槙野が内寄りでプレーをすることが多く、それに加えて右足でプレーをするので、その脇にCHを落とすような試行錯誤もしましたが、なかなか左側から前進できることが出来ないことが多かったです。

ショルツは左足でボールを扱えるだけでなく、ポジションを取るのが早く、前がオープンならそのままどこまでも運んで、しかも守備での対応も的確ということで、いろんな悩みを一気に解決してくれました。キャンプの段階でリカルドが提示していたGKの脇まで下りて手前に深さを作るポジショニングを加入直後からやったのを見ると、クラブのスカウティングが的確だったことが分かります。

平野のところについては、それまで柴戸が4月の鹿島戦以降、前後左右にターンが出来るようになってアンカー役として定着したものの、そうなるとビルドアップ時はピッチの中央に留まるか、状況によってCBの間に入るかなど、後ろ目が基本位置になることで彼の長所である出足鋭くネガトラで潰しに行くという面が発揮しにくいジレンマもあったのではないかと思います。勿論、その役割は敦樹がこなしてくれていたので、それで十分チームを回せてはいたのですが。

そうしたところに純正のアンカー役となる平野が入ったことで柴戸は前向きなアクションが出しやすくなったり、平野自身もポジションの微調整、ターン、相手を見て空いているスペースを使うという能力を加入直後から表現していました。

早速新加入選手がフィットしたのは、この時期はリカルドが試合の中で与える役割を決めることが多かったからではないかと思います。徳島戦では4-5-1のIHを前に出しながらプレッシングをしてきた相手に対して3-1の状態で受け止めつつ、その分前に出てくるIHの背中を汰木や江坂が使おうとしたり、広島戦は人を意識する割合が強めの守備をする相手に対しても、ショルツを左SBでスタートさせて一見ハマりやすいスタート位置にしたところからプレーを始めつつ、ショルツがどんどん外に開いて相手を引き連れる、ついてこなければ運ぶといった具合に、スタート位置を決めてその後に起こることが想像しやすくなるようにしたのかなと思います。

五輪による中断期間中にチーム内にコロナ感染者が出たことで、当初想定していたトレーニングはやり切れなかったことに加えて、山中、小泉、ユンカーと負傷者が出たり、そもそもスケジュール的に9月頭のルヴァン杯まで連戦が続いたため、落ち着いてトレーニングをする時間がなく試合の中で新戦力を馴染ませていかざるを得ないという状況でした。リカルドが試合の中での役割をはっきりさせたのはこういった事情もあっただろうと思います。リカルド自身、徳島でシーズン中に選手が入れ替わる(徳島の場合は主力のoutばかりでしたが)ことを経験したことも活きているだろうという想像もします。

パーフェクトな勝利というのは無かったと思いますが、今できること、今やるべきことを明確にして、それを元々いた選手も新しく入ってきた選手もしっかり表現したことで、鳥栖戦からは負けなしで連戦を乗り切ることが出来ました。


ユンカーの負傷もあって、ルヴァン杯の川崎戦からは江坂、小泉、汰木、関根という前線の組み合わせになり、プレッシングが格段に良くなりました。純粋な9番ではない、常にゴールに近いところでプレーはしない選手が2トップの位置から相手を追いかけてくれるので後ろの列の選手から見るとどこにボールが入ってきそうだというのは分かりやすくなったと思います。

相手のポジションを意識するよりも味方同士の位置関係で次にボールが入ってくるところを限定していくのはクラブの守備のコンセプトにもありますし、今年はしっかりとそれを構築してきていました。

9月のリーグ戦はようやく1週間に1試合という落ち着いたスケジュールだったことに加えて、相手が自分たちから守備アクションを起こしてくれる、そしてその連動に穴があるチームだったので、相手を見ながら空いた場所を使うということが上手く出来ていたように思います。特にC大阪戦は試合開始直後から相手のアクションを利用してプレーをすることが出来ていましたし、それがすぐにゴールにも結びつきました。

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前線の0トップもそうですが、ビルドアップ隊も平野がへその位置にいたりCB間に下りたりは状況に応じて動きを変えていたのを見ると、夏場はリカルドが選手のアクションを決める割合が多かったところから、早くも選手たちに判断を委ねる割合を増やせるようになったと言えそうです。

さらにFC東京戦の前半終了間際には的確なポジショニングとターンの連続からボールを前進させ、押し込んだところからゴールを奪うことが出来ています。

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10月は波乱のスタート。リーグでのACL出場権をかけた神戸との直接対決でしたが、6月のルヴァン杯第2戦と同様の中盤をひし形にした4-4-2で浦和のビルドアップ隊を素早くケアし、浦和が0トップで背後を狙う選手がいないのを良いことにチーム全体で前への強い矢印を出してきました。相手を裏返すのか、相手の強い矢印を受け止めて外すのか、そのどちらも出来ずに勝負を決められてしまいました。

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さらに連戦になったルヴァン杯準決勝のC大阪戦も、前半こそショルツが左から持ち運んでから外側で中盤ラインの背後を取った山中、そこからユンカーへという鮮やかな形で先制したものの、後半からはセレッソが神戸のように積極的に浦和のビルドアップ隊への矢印を出し始め、浦和はそれを受けてしまう形で失点。また、この試合では槙野が右CBで出場しましたが、どうしてもピッチ中央に寄ってしまい、浦和の攻撃が左側に偏ってしまうことも悪循環の一因でした。

第2戦も西が最終ラインに残ったり、柴戸をCB間に落としたり、敦樹を左に落としてみたり、試行錯誤はしたものの、誰かが下りた分の中盤に小泉が下りたらC大阪はしっかりそこに人をつけて潰してしまう場面が続きました。これも神戸戦と同じような苦しみ。

さらにG大阪戦ではユンカーが試合の前に負傷していたということで明本がFWに入りましたが前半途中で負傷交代。ボールは圧倒的に保持したものの0トップの布陣の中で誰が最初にアクションを起こすの?誰が一番ゴールに近いところへ入っていくの?という部分が曖昧になってしまいました。勿論、東口がとんでもなく大当たりしていたというのもありますし、PKで得点を奪った直後にPKを与えてしまうという残念な展開ということも相まって、非常に後味の悪い試合になってしまいました。

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柏戦ではユンカーが復帰し、柏のプレッシングの連動も曖昧だったこともあってそれまでのうっ憤を晴らすような快勝。9月の試合もそうでしたが、包み隠さない言い方をしてしまえば「このくらいの相手なら普通にやれる」という自信は得られたのかなと思います。

天皇杯のG大阪戦も平野からのロブパスをユンカーが走り勝ってゴールを奪うことが出来、ロングボールを深い位置で江坂が折り返して関根がきっちり決めて、ルヴァン杯に続いて天皇杯も準決勝進出を決めます。ルヴァン杯も合わせてこれだけカップ戦を着実に勝ち上がれたシーズンもそう多くない気がします。


川崎戦、鹿島戦の2試合についてはいずれもトランジションやプレーエリアが狭くなったところでの強度に苦しみました。川崎戦はビルドアップ隊が上手く相手を外して前進できたものの、中盤で旗手、脇坂がちょっと空いたスペースを清算するだけのスピードと強さで浦和の展開を許しませんでした。鹿島戦では鹿島がチーム全体でプレーエリアをどんどん狭めることで球際の発生回数を増やし、彼らの強度が活かしやすい状況を作られてしまいました。10月の神戸戦、C大阪戦からも続く悩みですね。さすがにこのタイミングで記者からも強度についての質問が出てきています。

(今日はヴィッセル神戸戦のように、ボールを受けるときに強く来られていて、ナイーブなところがあったように見えたが?)
「彼らにフィジカル的な強さがあることは、もちろん分かっていました。一方、我々は高さはないですが、技術のところで彼らと違った特長の選手たちを抱えているので、そういった違いが出たのかなと思います。我々にはつないでいける選手や若さのある選手がいて、彼らには彼らのやり方があり、そういった違い、メリット・デメリットは両方出るのかなと思います」

(今後、フィジカル的に強い鹿島のようなチームに勝っていけるようになるために、何が必要だと考えているか?)
「そういった部分は今後も考えながら改善していくべきところだと思います。やはりタイトルを狙っていくのであれば、どういうふうに成長、進化していけるのかが大事だと思っています。神戸であったり、川崎フロンターレ、今回の試合と、こういう強い相手に対してアウェイで戦うときに、我々がどうすれば勝てるのかを、今後も考慮しながら進んでいければと思います」

そして、このタイミングで浦和としてはショッキングなリリースが相次ぎました。11/14には阿部の引退、11/16に槙野、11/17に宇賀神の契約満了と、2度目のACL制覇だけでなく長く浦和の歴史に貢献してきた選手の退団にはチーム内外に大きな心の揺れが起きたと思います。

阿部についてはいつかその時が来るだろうと、どこか気持ちの準備はしていたつもりでした。それでも会見で実際に彼の口からその言葉が出てきた時には涙が止まらなかったし、これを書いている今もまた涙が出てきそうです。それだけ偉大な選手だったし、そういう選手が浦和で、自分の意志で現役を退く決断に至るまで選手生活を全うしてくれたことに対するこの感情についてどういう言い方をして良いのか分かりません。感謝、尊敬、愛情、寂しさ、他にもいろいろな感情を混ぜ合わせた、何色とも言いえない、そんな感情です。

槙野と宇賀神については、特に夏以降は出場時間が一気に減ってしまいました。CBで言えばショルツという欧州CLでもプレーするレベルの選手がやってきましたし、SBも酒井は言わずもがな、西、山中だけでなく明本がコンバートされたり、何度もポジションを脅かされても耐えて、奪い返してきた彼らもついに奪い返せない状態でした。

なので、寂しさはあるものの、クラブが家族経営のような情に寄ったものではなく、正当な力の競争によって選手を評価しているということが見えるリリースでした。これについて、クラブに残ることが出来る選手たちの変化や彼らに求めたいことについては別の記事で書きたいと思います。

そんなことがあった代表ウィーク明けの横浜FM戦では相手をリスペクトして勝負に徹するリカルドのリアリストな面が際立ちました。手前にはあまり幅を取らず奥に行くにしたがって陣形を広げて行く横浜FMに対して、そのスペースを埋めるように4-3-3で並び、ボールが入ってくる内側のスペースで関根と敦樹が躍動。この試合から埼スタに帰ってきたフラッグのはためきも相まって情熱的な空気に包まれた中での勝利でした。

守備の形をスタートから明確に4-4-2以外にするのは札幌戦くらいで、8月の広島戦は左SHの関根がWBを兼務するような役割もありましたが、それはあくまでも役割設定のところでしたし、4月の小泉、武田がIHに入った4-1-4-1の時も守備時は武田を前に押し出して4-4-2の陣形を取りました。

この試合では4-3-3で守備をしてはいましたが、これまでのチームの原則から変えたわけではなくて、両WGも含めた前線からボールの前進経路を限定して、自分たちが待ち構えているところへ誘き入れて奪うというもの。矢印の出し方を変えても、考え方は変わらずに守備が出来ていたのは大きな進歩だったと思います。

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しかし、ホーム最終戦の清水戦は再びユンカーが出場できず、何度も課題として出てきているゴールに近いところを誰が最初に目指すのかというところが上手く表現されませんでした。大久保が言っていたようにACL出場権がかかる大一番だからこその緊張感、試合後にデン、槙野、宇賀神、そして阿部の挨拶があるから変な空気にするわけにはいかないというプレッシャー、残留がかかった清水の気迫、そういったものを跳ね返すことが出来ませんでした。


いよいよシーズンが終わる、このメンバーでやれるのはあと少し、そういったところで吹っ切れたものがあったのかもしれないし、やっぱりここで何とかしないといけないだろと奮い立ったのかもしれないし、そういったものを晴らしてくれるような最終節でした。

勿論勝って終わりたかったですが、自分たちからアクションを起こす、最後のところで頑張る、そういう戦術とは違う部分で10月、11月のネガティブな要素を払しょくしようとしているものを感じました。

その流れは天皇杯準決勝にも引き継がれ、最終盤に小泉が自分で切り込んでゴールを奪ったり、試合終了の笛が鳴った直後に酒井や関根が倒れ込むくらいに走り切っていたり、クラブが掲げる「情熱的」な部分が非常に表れていたと思います。

また選手起用の面でも、そこまで苦しんでいた強度の部分に長所を持つ、明本、敦樹、宇賀神を起用と、ユンカーと明本がそれぞれ相手の裏のスペースやゴールに近いエリアを狙い続けたことで中盤にスペースを空けてC大阪のプレッシングをどっちつかずにすることが出来ました。

決勝戦はJ3からチームを作り上げてきた片野坂さんのラストゲームとなる大分との対戦になりました。前半と後半でそれぞれの戦術的な噛み合わせによって試合展開が変わるという非常に面白い試合でした。ただ、後半からの大分の変化に対してピッチ内での対応が遅れたというか、なかなか自分たちのターンに引き戻せなかったというところは、飲水タイムが無かったというところが影響しているのかもしれません。

JFAは「本来のフットボールの姿」が飲水タイム無という状態という言い方をしているので、どこかで飲水タイムが無くなって選手たちが判断する割合が増える可能性はあります。そうしたときにいかに対応できるかというのは来季問われるかもしれません。


◆2020年の課題に対する考察

ここまでダーッと1シーズンの大まかな流れをおさらいしたところで、冒頭で引用した2020年の課題に対してあげた2021年に期待したいことである、「決める」と「委ねる」割合は適切だったのか(選手の能力に合わせた割合に調節することが出来たのか)、「決める」割合を増やしてチームの「型」が見えるようになったのか、という2点について見て行きます。


まず1つ目の、「決める」と「委ねる」割合は適切だったのか(選手の能力に合わせた割合に調節することが出来たのか)、について。リカルドはこのバランス調節はとても上手だったと思います。

シーズン序盤によく見られた前半飲水タイムやハーフタイムでの戦術的な修正は、まずは大枠になる原則は提示しておいて具体的な判断の大部分を選手に委ねた状態で試合をスタートして、うまく原則を利用できていない点についてはリカルドが「ここはこうする」という感じで「決める」の割合を増やすことで選手の迷いを減らしたのではないかと思います。

「相手を見る」というのがリカルドのチームの大前提事項なので、チームの原則をもとに、相手を見ながら状況に応じて判断をしていくことが必要です。そもそも相手がいる競技なので相手を見ずにプレーすることはあり得ないのですが、スタンスとして「そもそも俺たちはこうするけど君たちはどうする?」という問いを投げかけるのではなくて、「君たちがそうするなら俺たちはこうしちゃうよ?」というイメージなので、スタートの段階から相手を見ることになります。

システムは、本当に大事だとは思っていません。一番大事なところは、どういうサッカーをしていきたいかというアイデアを明確に持つことが大事だと思っています。それは、ディフェンスであったり、攻撃であったり、いろいろな形でやることはもちろんあるとは思います。そのアイデアの部分が一番大事だと思います。相手がどういった意図を持って守ってくるのか、攻撃してくるのか、それにどうやったら突破していくのか、もしくは相殺していけるのか、そういったところを考えながら、やれれば良いと思います。

なので「君たちがそうするなら」の予習が必要ですし、それと違った時にはプラン変更をしないといけないですし、そもそも相手が同じスタンスを取ってきた時にはその予習とは全然違う現象が起きるでしょう。そういう時に適切に選手の判断を補助することが出来ていたからこそ、リカルドの修正力という評価のされ方があったと思います。

上手く問題を解けない生徒に対してスッと適切なヒントを提示してあげて答えを出せるように補助してあげたというイメージでしょうか。そうした中で、ここはヒントがいらないなと言うところについては選手に「委ねる」という押し引きも適切だったと思います。

4月の武藤Falso9による0トップでは選手のポジション交換の流動性が高かったです。このタイミングでこの2人はポジションを入れ替えろなんてことをその瞬間にピッチ脇から指導者が声をかけても間に合わないわけで、これは選手たちに上手く判断を「委ねる」ことで起こせた現象だと思います。

なので対戦回数が多いオーソドックスな4-4-2に対してはどんどんチーム全体として上手くプレー出来る回数が増えたというのは例えば6月の福岡戦や、10月の柏戦を見て感じますし、序盤はあまり対戦しなかった5バックのチームに対しても6月の湘南戦では左WG大久保、右WG田中という順足WGの台頭もあって一つの模範解答を示すことが出来たと思います。

そこへ夏の補強でショルツ、酒井、平野、江坂が大ハマりが重なります。既に自分で相手を見て判断を下せる頭を持っている選手が加わったことで、彼らをフィットさせるまでの間はリカルドが「決める」割合が多かったように思いますが、9月からの0トップ型が象徴するように選手たちに「委ねる」割合が増えても十分に振舞えるようになりました。特に、11月の川崎戦でのビルドアップを見ると1年でここまで出来るようになったのか(出来る選手をきちんと連れてこれたのか)というのを感じました。


そこで2点目の、「決める」割合を増やしてチームの「型」が見えるようになったのか、に話を移しますが、今季の浦和を見た時に例えばミシャのチームであったり、ポステコグルーのチームのように、このチームは明確にこういうポジションを取るという分かりやすい型は無かったと思います。それは先述した通り、リカルドは相手を意識することが配置を考える時の初手だと思われるからです。

有形の型では無い分、各試合の具体例ばかりを見るよりも、各試合での現象を抽象化して考えた時にリカルドのチームの型が見えてくるだろうと思います。そして、それは紛れもなく「相手の陣形に対して適切なポジションを取り続けることが出来るのか」というものだろうと。どんな陣形やそこからのアクションの起こし方であっても長所短所があり、その短所を咎めるための配置、アクションをとり続けられるのか、これがリカルドのチームが目指す型だと思いますし、大槻さんも相手を見るということについては共通していました。

ただ言葉というのは難しくて、主体的だというと自分たちが全部好きなようにやるようなイメージを持たれるかもしれないですけれど、常に相手がいるので、相手がいて我々がいてというところのやり合いが、駆け引きも含めてそれがスポーツなので、そこをしっかりとできるように、相手なくしてはできませんし、自分たちだけでやろうとしてもできないし、ただ自分たちを持っていないとうまくいかないと思うので

なので、これは2年間で継続していることだと思いますし、昨年は相手を見ながらうまく振舞えなかった、今年は出来るようになってきた、というのがシンプルな評価だと思います。

大槻さんよりリカルドの方がそこを上手く落とし込めたという見方もありますし、相手を見てプレー出来る選手を2021年はきちんと補強出来たからこうなったという見方も出来ます。純粋に現有戦力のレベルアップだけでは限界があるし、クラブのやり方に合う監督、選手を連れて来るということが、フットボール本部がクラブのフットボール理念を表現する方法だと思うので、現場以上にフロントレベルでのクラブの成長が評価されるべきだろうとも思います。


2020年の課題をクリアできたのは間違いないと思います。それでもリーグ優勝した川崎との勝ち点差は29。これは簡単に縮まる差ではありませんが、2022年にリーグ優勝することを第一の目標とするのが浦和の変革における三年計画の位置づけです。

2021年は相手を見ることが出来る場面は増えた、でもその後に取れるアクションのバリエーションはまだまだ増やす余地があるということ。ビルドアップであればCB間や脇にCHを落とすのか、4バックを左上がりにするのかでしたが、相手のWGとの兼ね合い次第で左SBを高くすることによるリスクが大きくなることもあるので、そうなると右上がりにして左SBを残すというパターンも欲しくなります。

ショルツがここを清算してくれるのでそこは割り切るのもありだとは思いますが、特定の個人に依存してチームを編成してしまうとその選手が怪我や移籍でいなくなった時に立ち行かなくなるので、手札を増やしておく必要はあります。

そして前線においても特に関根、汰木、江坂、小泉が相手がスペースを空けてくれた時にはそこでスッとボールを受けられる場面はあったものの、興梠のように苦しい局面でも無理が効くことで形勢を引き留めることが出来るかというとそうではありませんでした。

戦術的な不具合を個人の力で清算出来る選手、いわゆる「理不尽さ」がどれだけ増えるのかというのはリーグ戦を勝ち上がるためには間違いなく必要です。トーナメントと違って多様な相手に安定して勝ち点を取らないとリーグ戦は勝ち抜けないからです。飲水タイム、あるいはハーフタイムというチームとしての対応を施すための時間を稼げる選手が必要です。上手くいかないなりになんとかしてしまう強さが必要です。

そういう部分でチーム全体の協調、シンクロという要素へのプラスアルファとして、個の能力を発揮してくれることを期待したいです。クラブ公式の総括と近い感覚はあると思います。


ということで、2022年に向けては
・ピッチ上の現象のバリエーションをどれだけ増やせるのか
・個人の力で構造上の不具合を清算する回数を増やせるのか
という2点に注目していきたいと思います。前者は主にリカルドが「決める」ものを選手が表現できるのか、後者はリカルドが選手に「委ねる」中で選手が上手く振舞えるのか、というイメージです。


◆最後に

途中で書いたように本当はもう一つ「浦和を背負う責任」について今思っていることを書きたいのですが、既に17000字を越えているのでこの記事はこれで終わろうと思います。

2020年を見て感じた課題がきちんと改善されていると思いましたし、何より2021年の56試合のうち何も懸からない消化試合は最終節の名古屋戦だけで、その試合も負傷明けのユンカーと明本の調整であったり、阿部、槙野、宇賀神を送り出すための舞台という意義のあるものに出来たので、2020年の大槻さん退任発表以降の虚無感も漂うような、どういうスタンスで観れば良いのだろうと思うことはありませんでした。年間通して、そしてシーズンの一番最後まで楽しめたのは本当に良かったです。

2022年はW杯がある関係で11/5のリーグ最終節が最後の試合になると思いますが、そこまで最大限に楽しめるシーズンになると良いですね。今年は毎月の月報を作ったことで年間の振り返りがちょっと楽だったので、来年もこれは続けようかなと思いました。良ければ引き続き気にかけて頂けると嬉しいです。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

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