三年計画の定点観測(2022年9月度月報)
◆前書き
昨年も書いてきた1か月程度の間隔で試合内容や会見のコメントなどを拾いながらクラブが提示した三年計画、コンセプトと照らし合わせて考えていく「定点観測」シリーズを2022シーズンも行います。
◆9月の戦績
これは8月の月報で最後に書いたことだったのですが、残念ながら9月は結果で今のチームとしての方向性が正しいということを証明することは出来ませんでした。
この1ヶ月を振り返る時にきちんと記録しておかないといけないのは2点あって、ACLの激闘の後に3休→3勤→1休→1勤というスケジュールを組んでリフレッシュをしたということ(1休のところは選手たちからのリクエストとのこと)と、9/1、9/5、9/7の3段階で合わせて選手6名のコロナ陽性者が出たようでクラブとしては開幕時以来のコロナショックに見舞われることになりました。
まず前者のスケジュールについては、8月はチームとしてある程度メンバーを固めて闘ったことと、特にACLの3連戦は精神的にも起伏の激しい展開だったので心身ともにリフレッシュしたいのは自然なことだったと思います。少し意地悪というか、厳しい見方をすればその揺り戻しとして後者のコロナが~ということも言えるのかもしれません。ただ、そもそも首都圏でもコロナの感染状況がピークになっていたタイミングでもあるので、普通に生活していればなるときはなっちゃうよね、という見方でも良いと思います。
大事なのは、浦和は既に一度そうした事態を経験したことと、多くの選手を組み込みながらチームを構築してきたこと、これらを強みに変えて今回は乗り切れるんじゃないかという期待を持っていました。鹿島戦前日の定例会見ではチームのマネジメントについてのQAがありました。
試合後に酒井は怪我で離脱というリリースがありましたが、それ以外にもACLに出場した選手を何人も欠いたメンバーになりました。ただ、ここに入った選手たちは控えGKの牲川以外はいずれも今季それなりの出場機会をこなしているだけでなく、ある程度やれるというパフォーマンスは示しているので試合前の段階では非常事態かもしれないけどこのメンバーでもやれるっしょ!という思いでした。
試合自体は鹿島に2点先行されながらも追いついたという展開でしたが、中身を見ると特に保持では「いるべき場所にはきちんと立てているけど、そこから何が出来るかの部分が物足りない」という感じでした。酒井ーモーベルグのラインが鉄板になっていた右サイドが宮本ー関根にそのまま代わって、この部分は比較にさらされやすかったと思います。1失点目も右サイドからビルドアップで前進しようとしたところが引っかかってところからだったので目につきやすかったというのもあると思います。
鹿島が早めにファーサイドへクロスを飛ばすのでサイズ的に分が悪い大畑が晒されやすくなり、そこへの手当も込めて関根を落として宮本を内側へ絞らせるイメージで配置を5-3-2へ変更し、3MFは右から小泉、岩尾、敦樹という並びにしました。
前半はこの変更がはっきりしていなかったのか、敦樹が左側に行ってしまったので、保持において右は宮本と関根でなんとかしてくれという状態になってしまったのも、彼らとしては割を食ってしまった感があったかもしれません。
後半途中にユンカーに代えて柴戸を投入し、小泉を一列前で松尾と並ばせました。柴戸にはIHとして鹿島のSH-CHのゲート奥でターンしてもらうタスクを任せて、柴戸は確かにその位置でターンして前を向くところまではやれていたのですが、その次に何が出来るかという所では物足りなかったのもあったと思います。このあたりも、最近定着している選手とそうでない選手の差が見えてしまったなという印象を持ちました。
また、鹿島の保持の特徴は前日の定例会見でもクロス多用することなどを指摘していた通り、彼らがどういうスタンスなのかは把握していたようですが、試合自体はそれも承知の上で4バックで入って、相手にその通りにやられてから5バックにするという流れで結果的に采配で後手を踏んでしまい、それが試合結果にも反映されてしまったことは気になりました。上位との直接対決で勝ち点2を落としたことはとても痛かったです。
先述の通り、鹿島戦の後にも5名のコロナ陽性者が出てしまったことで試合の間隔は1週間あったものの、トレーニングを満足な強度出てきたのかというと難しかったのだろうと思います。
メンバーは鹿島戦からさらに変化があって、今度はDFの控えが不在になりました。SBは昨季に明本、今季は関根を回したりしているので本職の選手がいなくてもなんとかやり繰り出来るようになっていますが、CBについては工藤がちょうどこのタイミングでU-19代表の活動で遠征に出ていて不在でした。
ただ、柏が相手とのかみ合わせを良くしてどんどんプレッシングしてくるというわけではなかったので、浦和とすると自分たちが先にポジションを取って相手を見ながらプレーすることの難易度はそこまで高くなかったのではないかと思います。
昨年もホームゲームでは柏のプレッシングの連動が甘くなったところを突いて得点したりもしましたが、それと同じような感じだったなと思います。
今年のJ1の全体的な傾向としてビルドアップ隊がしっかり手前に引いて相手のアクションを観察することはしなかったり、やろうとしても手前に引くのが不十分だったりというチームが多い印象があります。そうすると、柏のように相手の配置に噛み合わせて誰がどこに出ていくというのが整理できているチームがどんどん球際の局面を作って激しくプレーする中で結果を出しやすいのかなと。
今の浦和はこの傾向とは逆を行っていて、CBを中心にビルドアップ隊が手前に引いて相手を観察できるようにするアクションをチームとして行っているので、浦和の4得点と柏に提示された5枚のイエローカードが象徴しているように、この試合での柏は今季あまり晒されることのない脆さを突き付けられたのではないかと思います。
この試合はリカルドが先手を打ちに行きました。ここ最近の定番であった4-1-2-3から少し変化させてCFの松尾をトップ下に落として、シャルクと関根の両WGが内側に絞ったポジションが多かったので4-◇-2と表現することも出来そうです。
ただ、松尾は最初からいる場所でボールを受けてそのままプレーするというのがあまり馴染まないようで前半はこの配置のまま引っ張りましたが有効打を出すことはできませんでした。勿論、C大阪の守備ブロックが非常にコンパクトで、2トップと4MFの間のスペースでボールを前向きに受けることがほとんどなかったので、片方のサイドに閉じ込められてしまうか、逆サイドへ展開するとしても最後尾を経由するので全体でスライドして対応されてしまうか、という流れでした。
ハーフタイムでシャルク、関根、宮本と小泉、モーベルグ、酒井を交代させて配置も4-1-2-3に変えたことで、ここまで結果を出してきたメンバーと形に戻したわけですが、代わって入った3名は試合に向けて万全なコンディションだった訳では無いようで、ボールを扱うところで技術ミスが多かった印象です。
試合全体とすればC大阪に作られた決定機は先制点の場面(敵陣でのファウル後に宮本がボールをセットしてあげて自分が戻れていないスペースから前進された)と終盤のカウンターくらいで、内容としては引き分けくらいだったのかなと思います。ただ、結果的にこの敗戦によってリーグ戦でのACL出場権獲得は絶望的となり、この時点で今季明確に勝ち取れるものはルヴァン杯だけとなりました。
この試合は中3日で迎えるC大阪とのルヴァン杯準決勝を睨んで休ませておきたいメンバーとコンディションを上げておきたいメンバーという色分けがあったと思います。
それでも公式戦であることは変わりないので、チームとして求めたいことと選手が今やれることとのギャップの中でビルドアップは2CB+2CHの形でスタートしました。そして、これが機能しなかったのが前半だったと思います。
ただ、湘南は前の5枚(2トップ+3MF)が中央を閉めて外へ誘導したら全体でボールサイドへスライドするので、そこからこの五角形の内側を通して展開しようとしてもそこに浦和の選手が2枚いると狭くてポジショニングの融通が利きにくいし、横にターンしてもすぐに隣の選手がいるし、ということで思うような前進は出来なかったのかなと思います。
その結果、保持はユンカー・モーベルグ・シャルク・江坂という一昔前のオリックス打線を思わせる攻撃陣の個に頼った展開が多くなって全体に間延びしやすかっただけでなく、非保持でも前線のプレッシングが機能せずに湘南は練習通りの前進が出来たのではないかと思います。
後半は岩尾と大畑が入ったことでアンカー1枚に代わったのと、そこへ安定してボールを差し込んで展開するという局面が作れるようになりました。その時の雑感にも引用しましたが、試合後の岩尾の「パスの費用対効果」というコメントが興味深かったですね。これは次の章で取り上げます。
非保持でもSHの押し出し方が整理されたように改善はありましたが、結局は湘南が試合を通して多くの決定機を外してくれたから引き分けで済んだねという内容だったと思います。
ルヴァン杯の2試合はnoteでは雑感を書いていないので、twitterのスレッドを貼っておきます。
序盤に上門のゴラッソを食らってしまったものの、1週間前のリーグ戦に比べて選手のコンディションも良くなったのか、小泉・松尾をスイッチとしたプレッシングは機能していたと思います。
保持では関根と明本がSBということもあってか、彼らを内側に絞らせて岩尾の脇あたりでスタートさせていました。右は酒井と関根では当然キャラクターが違うのでモーベルグ・敦樹・関根がポジションを入れ替えたりもしていて、左は徐々に明本がハーフレーンの奥へポジションを取るようになって、手前には小泉が下りてくるようになりました。
また、後半は左で外を明本、内を大久保にすることで大久保と小泉がどちらも内側で起用にプレーできるということと、左外を明本専用レーンにするようなイメージで彼の運動量が活かしやすくなったと思います。同点ゴールも明本が外から上がって裏を取ってからのマイナスクロスでした。
WG(外レーン高めで相手を押し込み突破を狙う)、IH(内レーンでビルドアップの出口兼ハーフレーンの奥へ飛び出す)、SB(ビルドアップではCBをサポート、突破ではWGをサポート)という役割は残しつつ、それぞれのキャラクターにあった場所へ落ち着いていった印象です。
試合展開としては上手くやれているようにも見えましたが、ゴール前のところでトラップがズレたり、シュートが良いコースに行かなかったり、もう一段上に行くチームならこういう展開だと1、2点取っちゃうんだろうなとも思いましたが、1週間前のリーグ戦の後半の延長線上にあるような内容の試合になったと思います。
そして、2ndLegではC大阪が変化をつけてきました。非保持は引き続きコンパクトな4-4-2からSHが内側を埋めつつ前を覗いたりもするスタンスでしたが、保持は4-1-2-3に変化(鈴木徳馬がアンカー役、奥埜と上門がIH役)することで浦和が得意とする対4-4-2での前進を見事にやってのけました。
CBがオープンにボールを持てるのであればCBがしっかり開きながらアンカーの鈴木とGKのキムジンヒョンの4枚で浦和の2トップのプレッシングを回避し、SBとIH役で浦和の中盤4枚を押さえてWGが少し内側に絞って3-4-3の亜種のような形になり、CBの前がつまりそうならSBが手前に引いて4枚横並びに近い形となって、WGは外に開いて綺麗に4-1-2-3になるという具合。
浦和とすると松尾と小泉が左右どちらかに方向を限定したいところですが、CBの状況に応じたSBのポジショニングと、GKが1stLegでは足元の技術で危うさを見せた清水とは違って、この試合に出てきたキムジンヒョンはJ1でも上位の配球技術を持っているので、1つ飛ばしで外に開いたSBのところまでボールを届けてプレス回避したり、横方向に追われて体勢が厳しくなってもスッと中央の鈴木へ縦パスを通したりというのは流石でした。
また、浦和はSBが引き続き明本と関根でスタートしましたが、ビルドアップでの彼らのスタート位置は基本的に相手SHの脇や内側になるので、岩波やショルツが2トップに横方向や岩尾へのコースを消されて、SHに関根・明本へのコースに立たれるとボールの逃がし先がなくなってしまうので、ビルドアップの2手目すら見つけにくい状況が続きました。
酒井や大畑が出ているときであれば彼らが手前に引いてCBの横サポートに入ってボールを前向きに引き取ったり、そこへ相手SHがついてくればその背中にIHやSHがズレてボールを受けたりと、ビルドアップの2手目が作りやすくなります。
ここまでリカルドのもとで積み上げてきたことを考えると、非保持よりは保持で形勢を取り戻す方がやりやすいのかなとも思いますが、ビルドアップの部分で自分たちのポジショニングが上手くハマらないまま2失点しただけでなく、前半45分を終えてしまったのは意外でした。勿論、悪い意味で。
後半に入ったところで馬渡を左SBに入れて明本を左SHに上げる、CHは敦樹を左、岩尾を右とすることで、ビルドアップで左サイドは明本を松尾と横並びになるくらいにして、馬渡を前へ押し出して、敦樹をSBの位置へ落とすという形を取りました。SBの位置に落ちて前を向きやすくしてボールを受けるというのは昨年もやっていた動きなので違和感はなかったと思います。
ただ、他の試合で敦樹が右CHの時も、特に宮本や関根がSBの時にはSBの位置に落ちて前向きにボールを受けようとするアクションがあったので、これは前半のうちにやれなかったのだろうか? あるいは、前半のうち(失点して少し時間が合った間とか)に敦樹と岩尾を逆にして後半と同じようなローテーションの仕方が出来なかったのだろうか? といった具合に明確な手を打たなかったことは疑問に思いました。
1-1で1stLegを終えてC大阪が1点取らないといけないという制約があった状況から2失点して浦和が3点取らないといけないという状況になり、さらに後半にもう1失点したところで江坂とユンカーを入れて4-◇-2の配置がはっきりと見えるようになりましたが、手を打つのがことごとく遅かったというのがこの試合を通しての印象でした。
この試合の2日前にあった定例会見でのQAで1つ興味深いものがあったので取り上げておきたいと思います。
結果的に9月は大雑把に分類すると柏戦以外の5試合が思わしくない前半とそこから盛り返した後半という見方が出来ると思います。そして、この5試合を自分たちが結果を出してきた保持が4-1-2-3ベースのやり方(Aパターン)と相手への対策も含めてそこから変化させたやり方(Bパターン)でそれぞれの前半を見て行くと、鹿島戦=A、C大阪戦(J1)=B(4-◇-2のような形)、湘南=B(2-4-3-1)、C大阪戦(ルヴァン1stLeg)=B(偽SBを使った2-3-4-1)、C大阪戦(ルヴァン2ndLeg)=A、という流れかなと思います。
リカルドとすれば、相手の特徴はあるものの、自分たちの慣れたやり方も、そこから変化したやり方もどっちも試合の入りで試したものの思うような結果が出なかったと言えます。さらに、前半45分のうちにベンチからの指示で明確な変化をつけたのは鹿島戦くらいで、あとは選手の判断や微調整程度で45分が過ぎていきました。
飲水タイムによる中断の有無という違いがあるにしても、昨年は「リカルドの修正力」という言葉が取り沙汰されたように、ピッチ上で選手が解決するのが難しいと見るや的確に指示を出して状況を改善させることが多かったです。それを解決するためにピッチ内で監督的な役割が出来る岩尾を呼んだじゃないか!とか、ある程度選手がやれることが増えてきたので選手に任せる割合を増やしているとか、色々あるとは思いますが、上手くいかない時間帯に有効な手を打てなかった(打たなかった?)のは気がかりです。
◆コンセプトは表現できていたか
今月は【チーム】の部分の不具合がそのまま【個】の不具合も引き起こした印象を持ちました。前の章でも軽く触れた湘南戦後の岩尾のコメントから考えてみようと思います。
ちょうど先日、昨年12月の天皇杯準決勝の映像を見ていた時に、岩尾の言う「受け手が誰とつながって準備しているのかは重要」という点について強く感じました。
これは昨年の天皇杯準決勝のおおまかな図なのですが、ビルドアップで最後尾3枚とCH2枚を使っていて、CHがビルドアップ隊からボールを引き取る(ビルドアップの出口になる)役割を担っています。CHは後方からボールを受けるので相手ゴール方向へ進むためにはボールを受けた後にターンする必要がある状況が多かったです。
ボールを受ける→ターンして前を向く→次の受け手を探す、といったイメージで、ボールの受け手(CH)が誰と繋がっているのかを周りがイメージするのは難しいです。
受け手はプレッシャーを受けるのか?
ボールを受けたらきちんとターン出来るのか?
ターンした後に次の人を見つけられる準備はしているのか?
色々考慮しないといけないことがあります。
今季4-1-2-3の形が上手くハマっているときの大まかな図と比べてみます。
CBがボールを持っているときにSBとIH役が受け手として繋がっています。そこが見えているので、アンカー役はCBと繋がっていなくてもその受け手であるSBやIHと"3人目"として繋がっておくことが出来ます。SBやIH役が相手の中盤と距離が取れていなかったとしても、そこでボールをはたいてアンカーが前向きに引き取れるイメージが共有出来ていればCBがSBやIHに出すパスそのものが多少リスクがあったとしても、それによって相手の1stラインを越えた位置、なおかつ中央でアンカーが前向きにボールを持てる、という効果を得られることになります。費用対効果の高いパスってやつですね。
これが出来るためにはビルドアップの初手で前向きにボールを持てていることと、周りの選手がボール保持者周辺の状況を確認しつつ、そこからの繋がりを作れるポジションを取ることが必要になります。誰か1人がこれをおろそかにするとバランスが崩れて繋がりが絶たれてしまいます。
さらにここで、同じく湘南戦の後に出た小泉のコメントも取り上げたいと思います。
逆に選手個々のコンディションが悪い(ポジションを取るのが遅い、つながりを見つけるのが遅いなど)という状況になると、チーム全体が悪い方に引っ張られてしまう、そうならざるを得ないというのは先ほどの"誰か1人がこれをおろそかにするとバランスが崩れて繋がりが絶たれてしまう"ということと共通します。
先ほどは選手自身の能力や相手との兼ね合いという文脈でしたが、こちらは選手自身のコンディションという文脈です。
特定の誰かに多くの仕事量を割り当ててその人のマンパワーで何とかしてもらうというスタンスではなく、全員がほぼ同じ仕事量(内容はもちろん違う)をこなすことがポジショナルプレーという概念を考える上でのポイントだと思っています。ある選手は5つの仕事をこなせても、別の選手は2つしかこなせないのであれば、少ない方に合わせないと全体のバランスが取れなくなって攻守のどこかで穴が生まれます。
2021年で退団した選手の中で山中や田中が象徴的ですが、能力値の五角形のチャートで突出した部分があっても及第点に満たないものがあるならその選手が活きるためのやり方しか採用できなくなって、結果的にその選手が起用される回数も減ってしまいます。
そして、何か飛び抜けた要素がないとしても満遍なく及第点は獲れる選手を多く抱えた方がチームとしては出来ることが増える(計算が立つので安定する)ので使いやすいだろうと思います。なので今のチームは及第点を徐々に引き上げることでチームとしてできることを増やしていくという作業になっているのかなと。
その最終形がリカルドがたびたび口にする「完成されたチーム」というもので、速攻⇔遅攻、ハイプレス⇔ローブロック、フットボールにおいて求められるすべての局面を高いレベルで出来るチームになるということなのでしょう。ただ、これはどんどん即戦力として獲得できる選手のハードルが高くなるので編成はより大変になっていくとは思いますが。そんなことが出来る選手はさっさと海外移籍しちゃうんじゃない?とか、外国籍選手でもお高くついちゃうんじゃない?とか。
話が逸れたので元に戻しますが、9月はコロナの影響もあって【個】のコンディションが揃わなかったことと、【チーム】の配置バランスを上手く作れなかったことが結果に大きく影響してしまったと思います。
【姿勢】の面では例えば8月の名古屋とのリーグ戦のように上手くいかない中であがくことすらままならずに敗れるといったことはなかったですし、最後まで何とかしようというアクションは感じます。この項目だけは毎回評価が難しいのですが、決して後ろ向きなプレーをしていたとは思わないので3点としておきます。
◆10月/11月の試合予定
残り5試合で15ポイントを取れば数字上はACL出場権獲得は可能ではありますが、そこに絡むチームとの直接対決で勝ち点を落とし続けてしまったので具体的な何かを獲得するための5試合とするのは厳しいと思います。
ただ、ロティーナ監督の下で2年間論理を積み上げてきて、一旦ねじが緩んだところを小菊さんが再び締め直して、また積み上げを始めたというC大阪との今季の対戦成績は1分3敗。今の浦和と同じく論理志向の強いチームに対して真っ向から論理で叩かれたこのルヴァン杯での敗戦は看過できません。
どんな事情があったにしてもクラブ自身が「三年計画の最終年」という位置づけで今季を始めてしまった以上、2022年の終わり方で今の方向性に対する評価をされても仕方がないと思います。
個人的には、これまで曖昧だったチームとしての中長期的な目標とそこに行きつくための手順を積極的にサポーターと共有しながら、きちんとその方向に進んでいると思うので、この成長スピードが速いか遅いかは別として、方向性自体は支持しています。ただ、三年計画を掲げた時に土田SDから語られたように、浦和はそのうち勝てるようになれば良いよねというクラブではないので、掲げた目標に到達できなかった以上、この「三年計画」という装置が自ら仕掛けた時限爆弾になりかねません。
「3年では目標には到達できなかったけど今後もこの方向性でやっていこう!その上で成長スピードを上げるためにはどうしていこうか?」というような前向きな機運を作る必要があると思います。分かる人には分かれば良いというのは虫が良すぎるかなと思います。今のフットボール本部の基本スタンスはサポーターも"We"としている以上、お互いに目指すものを共有して進んでいくというものだと思うので。
ルヴァン杯で勝って決勝に行っていれば、そこでタイトルが取れたりすれば、あるいはルヴァン杯でC大阪に負けたとしてもチームとしての論理とは別の要素による理不尽な負け方をしたのであれば、こんな心配はする必要が無かったかもしれません。
クラブは今の方向性で今後も進めていけるための後ろ盾を得るため、監督、コーチングスタッフ、選手は自らの価値を示して来季の契約を勝ち取るため、それぞれのショーケース的な意味合いも強くなると思いますが、内容と結果はきちんと求めて行かないといけないです。それぞれの立場で、自分の居場所を守るための5試合になるだろうと思います。
この5試合をどのように闘うのか、終わり良ければ~という言葉も虫が良い話ですが、ここで「来年からもお前たちと一緒に闘うぜ」と多くの人に思わせることが出来る試合を望みます。
今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
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