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三年計画の定点観測(2022年10月/11月度月報)

◆前書き
昨年も書いてきた1か月程度の間隔で試合内容や会見のコメントなどを拾いながらクラブが提示した三年計画、コンセプトと照らし合わせて考えていく「定点観測」シリーズを2022シーズンも行います。


◆10月/11月の戦績

10/1 (Sat) J1 第31節 (A) vs 広島 ●1-4
10/8 (Sat) J1 第32節 (H) vs 鳥栖 ○2-1
10/12 (Wed) J1 第27節 (H) vs 札幌 △1-1
10/29 (Sat) J1 第33節 (A) vs 横浜FM ●1-4
11/5 (Sat) J1 第34節 (H) vs 福岡 △1-1

※リーグ戦 1勝2分2敗 6得点11失点(-5)

9月の月報の最後に書いたことを今読み返すととても寂しい気持ちになりました。

「3年では目標には到達できなかったけど今後もこの方向性でやっていこう!その上で成長スピードを上げるためにはどうしていこうか?」というような前向きな機運を作る必要があると思います。
~~
クラブは今の方向性で今後も進めていけるための後ろ盾を得るため、監督、コーチングスタッフ、選手は自らの価値を示して来季の契約を勝ち取るため、それぞれのショーケース的な意味合いも強くなると思いますが、内容と結果はきちんと求めて行かないといけないです。それぞれの立場で、自分の居場所を守るための5試合になるだろうと思います。

この5試合をどのように闘うのか、終わり良ければ~という言葉も虫が良い話ですが、ここで「来年からもお前たちと一緒に闘うぜ」と多くの人に思わせることが出来る試合を望みます。

10月は積極的なプレッシングを志向するチームとの試合が連続しました。その初戦となった広島戦ではそこに見事にはまってしまってルヴァン杯セレッソ戦から連続で4失点でした。

江坂、小泉が2トップ、松尾、大久保が両SHに入る昨年の同時期にも観たような形で臨みましたが、これが上手くハマった場面はほとんどありませんでした。

(今日はコンディションが悪かったのか、プラン通りにいかなかったのか、何がうまくいかなかったのか?)
「まず、我々のビルドアップのところで相手のプレスにはまってしまいました。相手に対して中盤の数的優位をつくりながら、フリーの選手はいたのですが、なかなかそこまでうまくボールを運べなかった、というところが一つ大きくあると思っています。そしてそうした中で、つなぐだけではなく、相手の背後を狙っていく意図ももちろんあったのですが、そのスペースになかなか速いボールを入れることができませんでした。あとは先ほど話したとおり、前半の良かった時間帯のときに決めきれなかったところは、改善点だと思っています。」


前線は2トップ、両SHに敦樹も加わってポジションを入れ替えることで相手の目線を外しにかかりましたが、そこにボールを届ける手前の段階であるビルドアップ隊のところで詰まってしまいました。浦和のビルドアップ隊は岩波、ショルツ、岩尾が2-1の形でスタートすることが多く、広島は3トップをそのまま当てはめることで浦和は最後尾で前向きな選手を作れずに苦戦しました。

後半の途中からはユンカー、リンセンを投入して前線に分かりやすくゴールへ向かっていくアクションを増やしに行きました。ただ、ゴールキックを手前から繋ぐ中でボールロストして失点するなど、結局手前から繋ぐために裏へのアクションを有効に使えなかったり、ビルドアップ隊がロックされ続ける状態は変わらなかったため難しい展開のまま試合が終わってしまいました。


広島戦が手前から繋ぐのか奥を使うのかの判断がばらけてしまったという反省もあって、この試合では少し判断をシンプルにさせたというか、より奥から使う意識を強めて臨んだように見えました。また、そのための仕掛けとしてWHの岩崎がSBの酒井まで縦スライドするアクションを利用しつつ、ジエゴが岩崎が空けたスペースへスライドすることを阻止するためのポジショニングがありました。

これについては前日の定例会見の中にヒントとなるような言葉がありました。

(相手の出方に応じた読みや反応について、次の試合などでピッチの選手により求めたいことは?相手の出方を感じ取って即座に反応してほしい、ピッチ内でもっとコミュニケーションをとってほしいなど、考えることはあるか?)
「毎回選手たちには複数の対策を与えています。この前の試合ではつなぐのか、もっとシンプルに蹴るのかというところで選手たちの中に迷いがあったように思います。それに関する発言も試合後にあったりしました。前半の終わりの方でつないで決定機をつくることもできましたので、つなげると感じていた選手たちと、相手のプレスが少しはまっているのでやりにくいと感じていた選手で、気持ちが少し分かれていたと思います。この試合ではウイングを使って長いボールも使うというオプションは与えていましたが、もしかしたら最初から2トップで戦い、1枚が降りてくる、もう1枚が背後を狙うという戦い方をしていてもよかったと思います。ですので、ウイングへの長いボールはオプションとして与えてはいましたが、いずれにしても難しい試合になってしまいました。相手の3バックが競り合いなどで強かったので、我々もさらに相手を迷わせる危険なオプションを持っていてもよかったと思います」

これを可能にした理由には広島戦の後半に引き続き起用されたユンカーとリンセンという明確に相手ゴールへ向かうアクションを続けられる選手を並べたことが挙げられます。

4-4-2をベースにチームを組む時も毎試合DAZNのスタメン紹介では4-2-3-1で表記されるようにCF型とトップ下型の組み合わせ(松尾と小泉、ユンカーと江坂など)を採用することが多く、それによってトップ下が下がり目にポジションを取り、CHの1枚(主に敦樹)が前に出ることで4-1-2-3へ可変していきました。

この形の長所は、静的なポジションを取るだけでもお互いが斜めの関係で結ばれるのでパスコースを作りやすいことと、2人ではなく3人の関係を(SB-SH-IH)(IH-CF-IH)(IH-アンカーIH)などで作ってポジション入替することで相手の目線をずらしやすくなること。

ただ、浦和の課題はCFの選手がこのポジション入替の輪になかなか入れなかったことだと思います。CFとトップ下の選手が一時的にでもポジションを入れ替えることはほとんどなく、ポジション入替は誰かが前に出て他の選手をどけるのではなく、誰かが手前に下りてきた時に元居た選手がそのエリアを明け渡して相手も引き付けようとするアクションが多かったと思います。

ショルツが前にグイグイ運んできたときに周りの選手が上手く振舞えなかったのも後ろから前の選手を押しのけるようなポジション入替の習慣が足りなかったからなのかもしれません。

そのため、裏へのアクションを起こせることは少なく、その結果パスの選択も手前が優先されるし、それによって相手は裏への恐怖が少ないので前向きに出やすくなるという循環が起きていたのではないかと想像します。


それならもっと早くユンカーとリンセンのように2トップを前に並べる形をやれば良かったのでは?と考えたいところですが、非保持での振る舞いを考えた時にユンカーは昨年発症したグローインペインの影響が残っているように見えたり、リンセンは7月のPSG戦で負傷していたり、そのポジションに適性のある選手へプレッシングを十分に期待できないジレンマがありました。

(2人が前線に並ぶことでゴールは期待できるか?)
「広島戦の短い時間でも2人で危険な場面はつくれていたと思います。あとは2人ともしっかりと守備をすることによって、11人で守れる状態をつくりたいと思っています。攻撃では2人の関係性で、お互いを生かしながら相手にダメージを与えていければと思っています」

鳥栖戦前日の定例会見

(先週の会見でブライアン リンセン選手のコンディションがまだ上がっていないという話があったが、その点も含めてリンセン選手とキャスパー ユンカー選手の連係などはどう考えているか?)
「リンセン選手の現在のコンディションはあまりよくはありません。そしてキャスパーとのコンビネーションに関しては、2人ともポテンシャルが非常に高い選手で、サンフレッチェ広島戦でも良かったですが、チームが10人というより8人プラス2人という状態になってしまうこともあったりします。」

横浜FM戦前日の定例会見


あくまでも4局面の循環を整えて試合を安定させること、攻守を分断させない、攻守に切れ目を作らないといったことへの優先順位がとても高いのがリカルドの特徴の一つと言えます。何か明確な長所があったとしても、短所がそれを上回る危険性が高ければそのリスクは避けてきました。昨年から何度もリカルドが言い続けてきたのは全員がシンクロすることであり、どこかのポジションだけが歪な形になることは望んでこなかったと思います。

それにも関わらずリカルドが鳥栖戦は試合の最初から8人プラス2人という状況を受け入れたのは、2試合続けて大敗した後だっただけに、明確な手を打って選手たちの目線を揃えたり判断の負荷を軽くしたかったのかなと。

8人プラス2人になることを受け入れる代わりに、保持では右SBの酒井を手前に残すことで保持と非保持のポジション移動を最小限に抑えて、出来るだけ4-4-2に近い形のまま試合を進めることを試みました。プレッシングが機能しなかったおかげで危なっかしい場面は何度もありましたが、それでも裏へのアクションがあったこととそこを早めに使えていたことで鳥栖のプレッシングの鋭さを制限し、後半は鳥栖の選手たちの足が止まってきたこともあって勝利を収めることが出来ました。

手前と裏のバランスを調整することで結果を得たという点で、その後の試合の結果次第では大きな転換点になりうる勝利だったと思います。試合後にはリカルドの苦心の一部が垣間見えました。

(ブライアン リンセン選手をキャスパー ユンカー選手と一緒に先発で起用したが、印象や、良かった部分・改善点については?)
「昨日の記者会見でも話をしましたが、ブライアン リンセンはまだ、チームに順応している途中なので、やるべきことがまだたくさんあります。攻撃、そしてディフェンスの部分で、チームの決まりごとを特にやってきました。実際に試合の中ではうまくやれていたと思います。

今回の前線2人に関しては、やはり個の力がある選手たちですし、チームと一緒に戦ってくれる選手たちです。非常にいいシチュエーションを、試合の中でつくれていたと思います。ただ、プレスのところで言うと、いつどういうときに周りにかけるのかとか、そこの部分はまだ我々としては伸びしろの部分だと思っています。いくつか、前から行くというよりは少し真ん中で構える形が、今回の試合では多くなったと思っています。

奪ったら相手が空けた背後のスペースに出ていくというところも、彼ら2人はすごく長けている部分ではあるので、それも一つの狙いとして試合に臨みました。少し前だとデヴィッド(ダヴィド モーベルグ)、それから松尾、そうした選手たちの特長を生かしたやり方をやっていきました。今回はキャスパー(ユンカー)、それからブライアン(リンセン)と、違った特長ですが、その特長をどう生かしていくか、どうチームに組み込んでいくかは、監督の仕事だと思っています。メンバー選考だけではなく、どうやったらそれぞれの特長を最大限に生かすことができるかを考えながらやっていきました。もちろん特長だけではなく、今はいい状態にある選手が誰なのか、そうした部分で選考をしながら、結果全員がチームとしてのいい働きをしてくれたと思っています」


札幌戦ではユンカー&リンセンのセットを継続しました。試合序盤は札幌のペースで進みましたが、25分ごろからプレッシングで中盤を◇にするようなイメージで敦樹を押し出して高い位置でボールを奪う回数が増えると試合の主導権は浦和に移っていったと思います。

残念だったのはこうして高い位置で意図的にボールを奪ってショートカウンターを打てた時にゴールを奪うところまで行けなかったことです。結局、札幌にはほとんど決定機を作らせることはなかったものの失点してしまいました。PKで追いつけはしましたが、この試合では2トップのプレッシング強度の低さによるリスクに見合ったリターン(ゴール)は得られませんでした。ある程度ゴール前には迫れているのに決め切ることが出来ないという展開には「またか。。」という感じでした。

「この試合は非常に難しい試合になると思っていました。相手のプレスが人に対して強く、人を決めてくるやり方なので、それをどうやって破っていくかというところでしたが、チームとしてはいくつかの狙いを持ってやりながら、25分を過ぎたくらいからはだいぶボールを落ち着いて動かせるようになってきました。その中で前半では、前からのプレスで奪った後や、コンビネーションなどでつくったゴールチャンスを生かせていれば、というシーンがありました。

後半は前半よりも良くなって、相手が落ちてくる中で、我々はブライアン(リンセン)や松尾(佑介)、明本(考浩)などにチャンスがあったので、そのどれかをしっかりと生かせていれば、というところはありましたが、ルーカス(フェルナンデス)選手の素晴らしいシュートで先制を許してしまいました。その後、チームはしっかりと諦めずに闘い続けましたし、攻撃を続け、なんとか同点に追いつくことができました。

全体的に試合を見たときに、チャンスの数や決定的な場面を考えれば、悪くはなかったと思っています」


札幌戦の後はルヴァン杯、天皇杯の決勝があった関係で中断期間となりました。このタイミングでの定例会見は直近の試合が無かったこともあって、少し俯瞰した話が出てきました。この会見は全文を引用したいくらい2022年を振り返るにあたって大切なことがたくさんあったと思います。

(少し早いが今シーズンを振り返ると、難しいことが多かったシーズンだったと思うが、あのときにああしておけばよかったという後悔はあるか?)
「今シーズンはさまざまな困難があり、自分たちではコントロールできない難しさもあったと思いますが、1つこうしておけばよかったと思うことは、5月はチームのバランス、攻守のバランスを考え過ぎて引き分けが多くなってしまったことです。その後に中盤の形を変えて4-3-3にしたところ、チームが良くなっていきました。3試合、4試合早く気付いていれば、引き分けを勝利にもっていけた試合もあったと思います。そうすると勝ち点が8ポイントから10ポイントくらい違っていて、より上位にいてACL(AFCチャンピオンズリーグ)出場権も狙えたと思います。(ダヴィド)モーベルグを含め、外国籍選手の順応期間もちょうどそこに重なっていたということもありますが、それでもより早くその形に移せたと思います。補強も少し不運なところがあり、選手たちが望んでいた時期に来られなかったということもあったりしました。また、チームの状態が良いときに二度、新型コロナウイルス感染症の陽性判定者が多く出て、その影響もありました。ACLの激しい戦いでフィジカルでも気持ちのところでも消耗して、さらに感染も相まってACL後の苦しんだ時期もありました。私はこのように常に改善点を探しています」

(あくまで数字の面で見ると、昨年の順位は6位、今年は優勝争いが必須条件だったと思うが、現状を見ると昨年の順位に到達できるかどうかも危うい状況となっている。先ほどの話のように残り2試合も厳しい相手との対戦となるが、昨年の順位を下回った場合のことをどう考えているか?)
「全体を見ることが重要だと思います。これから説明することは言い訳ではなく、現状をコメントしているものです。今シーズン、トレーニングが始まったとき、キャスパー(ユンカー)が少し遅れて合流しましたので、FWとして登録されている選手は木原 励のみでした。それから選手たちも少しずつ合流していきましたが、その後に日本で倒すべきチームだと思われる川崎フロンターレとFUJIFILM SUPER CUP 2022で対戦し、優勝することができました。その直後に新型コロナウイルスの陽性判定が何人かに出ましたが、外国人が少しずつ合流し、チームの状態が良くなり、ACLの決勝進出を決めることができました。その後にまた陽性判定が出て、そこから回復して現在に至るというところです。J1リーグでの順位は昨年より低いところにいますが、シーズン全体を見ると、タイトルを1つ獲り、ACLでも決勝まで行くことができた、補強が遅れながらも戦い続けた今シーズンだったと思います」

(その話は毎回聞いているが、新型コロナウイルス感染症の影響でうまくいかなかったということか?)
「今季は補強した選手たちの来日が遅くなったり、新型コロナウイルスの陽性判定が出たり、先ほど説明した引き分けが多い時期により攻撃的に戦った方がよかったということがあったりしましたが、6月から8月は非常に良かったと思います。クラブにも要求されていたプレースタイルを植え付ける、チームを若返らせるということをお見せすることができたと思います。その後、ACLがあり、また新型コロナウイルスの陽性判定が出たという説明をしましたが、このようなさまざまな困難な状況がありながら、プレーの内容としても昨季より向上させることができたと思います。また、今シーズンはさまざまな時期に加入選手が来て、彼らを順応させながらACLを含む5つの大会を戦いました。ですので、新型コロナウイルス感染症の陽性判定が出たからだけではなく、さまざまな要因があったと思います」

(FW陣が充実してきて、全員のコンディションがいいと誰をベンチに置くか難しいくらいだと思うが、現在地をどう見て、どのような起用プランを立てていきたいか?)
「非常に難しいテーマです。みんないい選手ですし、みんながプレーしたいと思っている、そしてみんなが強い気持ちを持っていますので、誰をスタートさせるのか、誰をベンチに入れるのかといういい悩みを抱えています。選手がいないという悩みではありませんので、いい状況だと思います。ただ、私が常々言っているように、メンバーは選手自身が決めると思っています。ゲームプランや選手の組み合わせ、プレースタイルでチームにとって適切な選手など、いろいろなことを見なければいけませんが、チームが機能することを考えないといけないと思います。場合によっては、個で比べれば能力が高いと思われる選手がベンチにいて、そうではない選手がスタートすることもあると思います。それは個人の能力では少し劣っていても、この選手がプレーした方がチームとして機能するということがあるからです」

(残り2試合でタイトルを狙う力があることを示してシーズンを終えることが大事だと思うが、リカルド監督が理想とするタイトルを獲るチームの基準から見た現在地と、もう少しここを伸ばしていけばタイトルを獲れると感じるところは?)
「私は、優勝はプロセスであると思います。それは補強から始まると思います。たとえば8人の選手を補強して8人が成功するとは限りません。そこからスタートし、チームにスタイルやアイデンティティーをしっかりと植え付けて、プレー面だけではなくメンタル面でも団結が必要だと思います。現在、そのベースはできていると思っています。中にはコンディションをさらに上げなければいけない選手もいますが、選手がそろっている状況です。さらに質を上げるプロセスもあっていいと思いますが、ベースができてきて成長し続けていると思います。川崎も横浜FMもいきなり今の姿になったわけではありません。

そしてもう一つ、補強について言いますと、日本人の高いレベルの選手は非常に獲得しにくいものです。そこで外国籍選手を連れてくることがありますが、外国籍選手は文化や人間的な部分でも順応させなければいけません。今後さらにどうしていきたいかということでしたら、さらに闘えるチームにしていきたいと思っています。そのためには完全なチーム、つまり層が厚いチームにしなければいけません。各ポジションに5人くらいのレベルの高い選手をそろえなければいけません。第5のサイドバック、あるいは第5のセンターバックだと思われていた選手がシーズンのどこかで試合に出場することになりますので、横浜FMのようにバランスよく、スタイルもあって、全ポジションの層が厚いということになれば、選手が入れ替わっても取りこぼしがありません。我々は引き分けで取りこぼしが多かったと思います。徳島にいたときも同じで、1年目、2年目と良くなっていき、3年目でプレーオフに進出し、4年目で優勝することができました。その前はJ2リーグで9位だったチームでした」


横浜FM戦以降は雑感を書いていないので少し大雑把な振り返りになります。

まとまった時間があれば次の試合への対策を作れてきたのがリカルドの良さで、それは昨年秋のホームでの横浜FM戦で見せた4-5-1で非保持をベースにしたプレッシング&カウンターはその象徴的な試合だったと思います。

この試合では右SHの大久保が最終ラインに入ることをいとわない5-4-1かつ、ゾーンよりもマンツーマン志向の非保持で入りました。しかし、前半早々に手前に下りたアンデルソンロペスにボールをはたかれたところから一気に攻め込まれて失点するなど、用意した策が機能しないまま時間が進んでしまいました。

(守備のときはマンツーマン気味だったと思うが、相手の強度を引き出してしまったのではないか?)
「ある程度マンツーマンでプレスに行ったときに、後ろの選手がアンデルソン ロペス選手にできるかぎりアドバンテージがあるボールを配給して、そこでサポートする前を向いた選手を使われるシーンが多かったと思います。そこで僕がプレスバックするところもそうですし、センターバックの選手が頑張って勝ちきれるかどうかということもそうですし、マンツーマンでやっている以上はあの局面は出てきますので、そこで自分たちの流れに持っていけるのか、持っていかれてしまうのかというところでは、後者の方に出てしまいました。そこはやり方も含めて、もう少し考えていかなければいけないと思います」


ただ、この試合に於いて用意した策がハマらなかっただけなのかというとそうとも言い切れないような気がします。自分たちの保持であれば次のポジションを取りに行く判断のスピードがマリノスと大きく違っていました。「誰がボールを持ったら~」では遅く、ここにボールがあるならこの経路で誰にボールが渡るという二手三手先のイメージが足りていないのか、単純に分かっていても次の一歩を出すのが遅いのか、そこは選手の頭や心の中にしか答えが無いので見ている側にはなかなか分からないところですが。


9月に引き続き、10月もなかなか状態を好転させられない中でついにリカルドの今季限りでの契約解除が発表されました。合理的かつしなやかに4局面を循環させていくリカルドのスタイルは浦和がどこを目指すのかということとは関係なく個人的な好みと合致していたので、この別れはとても悲しいです。ただ、この判断に憤れるほどの結果を出せていなかったのも事実なので、この別れは受け入れなければいけないとも思います。


発表の後に行われた定例会見でも再び結果が出なくなった時期から続投は無いかもしれないことを感じていたようです。

(明日の試合は今までリカルド監督が感じていたようなプレッシャーは少し軽減されるかもしれない。9月、10月ごろは勝利へのプレッシャーをより強く感じているのではないかと思っていたが、そういう変化をどう感じているか?)
「少し前から続投はないかもしれないと感じながら仕事をしてきました。クラブとの話し合いの中では来季のことは決まっていないと言ってもらっていたので、最後まで考慮してくれたことを感謝しています。1週間くらい前に正式に続投はないという話をもらいました。」

(クラブから続投しないことを伝えられたのは横浜FM戦の前で、フランクフルト戦まで指揮を執るのか?)
「横浜FM戦の後に話がありました。そのタイミングで正式に話がありましたが、私自身は1ヵ月以上前から感じていたことでした。フランクフルト戦まで指揮を執ります」


さらに、この会見でも直近の試合というよりはもっと広い期間を見た話やリカルド自身のサッカー観が見えるものでした。

(将来性のある若いチームという言葉もあったが、まとまってトレーニングを見られたトレーニングキャンプなどで、できなかったことができるようになった選手もたくさんいて、それは若い選手だけではなく、20代後半や30代の選手もそうだったかもしれない。選手個人を成長させるためにリカルド監督が大切にしてきたことはどんなことか?)
「今年のプレシーズンのトレーニングキャンプは理想とは遠い異質なものになっていましましたが、私は昨シーズンなど3-4-2-1を多用しましたが、それはたとえば汰木(康也)のようなシャドーがいたからできたことであり、今季それをやったときはボールのロストが多くなってしまいました。中盤の選手を減らしてウイングを置くという形で4-3-3に変えましたが、(ダヴィド)モーベルグの調子が上がってきたことと、松尾(佑介)の裏にも抜けられる、プレスもかけられる、コンビネーションもできる、点も取るという存在があったからそういうふうにできました。もう少し早くそちらに移行してもよかったと思います。それだけではなく、シーズン中の進化もありますし、組み合わせでできることもあると思います。私はシステムの数字ではなく、選手の調和が大事だと思っています。個でランキングをつけてそのベスト11を選ぶのではなく、チームの調和が保たれる11人を選ぶことがキーポイントだと思っています」

(最高の状態だったACLからチーム状態が下降して大敗が続いてしまったことが契約延長にならなかった理由の一つだと思うが、横浜FM戦で大敗した後、この1週間のトレーニングで強調したことはどんなことか?)
「まず言い訳はしたくありませんが、好調だったACLの後と優勝したSUPER CUPの後、新型コロナウイルス感染症の陽性判定者が多く出てしまいました。私が今、最も後悔していることは、ACLで良かった選手たちをもう少し固定してプレーすることが必要だったのかなというところです。他の選手にもチャンスを与えながら、少しローテーションしながら、ということをその後に行いました。ACLの選手やシステムをベースとしながら続けることは必要だったかもしれません。もちろん福岡のスタイルも考慮しながらですが、ACLの姿を取り戻すことを今週の最も大きな目標としてトレーニングを行ってきました。横浜FM戦ではいろいろな選手にチャンスを与えましたが、ACLのころが最も良かったと感じています」

(ここについてもう少し積み上げたかったけどできなかった、レッズで今まで出せなかったことで見せたいというような心残りはあるか?)
「もちろん心残りはあります。なぜ続投しないのかということも考えましたが、まず今シーズンを振り返ってみますと、補強のところで不運でした。獲得したくてもできなかった選手がいたりします。年末は天皇杯のセレッソ大阪戦や大分戦の準備を進めているなかで、移籍マーケットに入っていくことが少し出遅れた部分もあったと思いますし、(ブライアン)リンセンももっと早い時期に来ることが理想でした。ただ、私もスポーツダイレクターという仕事を過去にしたことがあり、補強の難しさはよく分かっていますので、不運だったと思います。ここで一つ思えることは、オフの間、もちろん気にしながら連絡は取っていましたが、もっと密にそれができていればと思いました。その他の点では、もっと早く4-3-3に移行していてもよかったと思います。ただ、モーベルグの状態が上がってきたところでそちらに移行しました。ACLの後は全員が非常に大きな努力をして、消耗している状況でしたが、そのままその形で続けた方がよかったのかということも思っています。怪我人も多く出ましたが、ここ2ヵ月は違った形で戦っていました。もちろん言い訳はしたくありませんし、先ほど自己批判するという話をしましたが、他に何ができたかということを考えながら過ごしています」

(相手ありきなのか自分たちありきなのか、そのバランスをどう考えているか?)
「サッカーではどのチームでも相手を考慮しながらゲームプランを組み立てていくと思います。福岡が5-4-1で来るであろうと予想していますが、3-5-2や4-4-2でプレーしないという保証はありません。そういうことがあればしっかりと柔軟に対応しなければいけません。また、選手たちは機械ではなく人間だということも考慮しながら進めなければいけませし、いろいろなタイミングを合わせなければいけないと思います。どの試合でも自チームのゲームプラン、相手チームのゲームプランを用意しますが、実際にプレーするところでそれに合わせる最終的なゲームプランが必要だと思いますし、最初に用意したゲームプランが実際に試合で行われるゲームプランに近ければ近いほど勝つ可能性が高いと思っています」

また、クラブ公式では省略されていましたがフットボール本部の中でも今年は変化があったようなことも話しています。

「これを言って問題になるとは思わないが、西野さんと私はかなり近いサッカー観があった。土田さんは少し違う見方があった。いろいろな考え方があっていい。重要なのは全員で忍耐強く、敗戦があった場合も分析しながら進んでいくこと。土田さんはその立場にいてこのような決断を下したが、彼との人間関係は素晴らしいものがある。それぞれの立場で決断している。浦和で仕事をできて誇りに思う。選手やフロント、サポーターには感謝している。彼らが批判する時はチームに問題がある時。その解決がすぐできるもの、簡単にできないものもあった」

「クラブのフロントでも変化があり、続投の難しさは感じていた。このプロセスを別の方と続けることは少し前からクラブが決めていたかもしれない。サッカーはこのような世界なのでそれは尊重する。監督として2年間を過ごし、自分も成長できて嬉しく思う。我々が勝ち取ることができるものは勝ち取った。そこには誇りを感じる。浦和レッズの監督として仕事ができて非常に光栄に思っている」


そして、福岡戦は今年の浦和を象徴するような、手前でボールは持てるけどそこから裏へのアクションが少ないことで相手の守備ブロックを動かせずに攻めあぐねて引き分けてしまいました。

(前半はアグレッシブさに欠ける印象があったが、リスクを負って攻めることとボールを保持することのバランスをどのように考えていたか?)
「まず、前半のところで全体に話したのは、もっとスペースを狙っていかないといけない、ということでした。足元に入るパスが多かったので、もっと縦に速くする、そういう話はしました。リスクについては、福岡はカウンターが特長というわけではなく、どちらかというと押し込んだところからクロスを上げてチャンスをつくるチームなので、我々が攻めるときにリスクを深く考えることはなく、ただいかに崩すかというところで、背後を狙うところがなかったのかなと思います。前半の決定的な場面は、小泉(佳穂)が頭で合わせた部分だけだったと思います」


最終節ということで、ここでもシーズンを通しての総括のようなこともリカルドから話されています。

(今日の引き分けで今シーズン15引き分けとなり、これはサガン鳥栖と並んでリーグ最多だった。負け数は川崎フロンターレと1試合しか差がないが、勝てなかった試合の差で勝ち点差が開いている。どういうところが足りなかったと感じているか?)
「まず、ここまでチームを構築していく時間、プロセスが違うと思います。彼らはそもそもタイトル争いをしていて、そこに至るまでに年月をかけて細部を構築していったチームです。そこが違いだと思います。

選手たちのプロファイルで、チームを一つ構築していく上でどういったスタイルがあるのか、それに合ったプロファイルの選手はどういった選手たちなのか、というところからまずは始めていかないといけませんでした。実際に構築していく中で、いい選手か悪い選手かという話ではなく、適切な選手なのか、そうではないのかというところが非常に大事な点だと思っています。そういった点ではメンバー構成のところでシーズンのはじめに、我々がこのスタイルをやっていく上で適切な選手を見つけていけたのかどうか、今いる選手が悪いと言っているわけでは全くないのですが、そこが果たされていたのか、それに関しては、タイトルを獲る横浜F・マリノスや川崎フロンターレと、我々との差だと思っています。やはり、プロセスが最大の違いなのかなと感じます。

ただ、私にも責任がありますし、間違いを冒すこともあります。徳島ヴォルティス時代には、うまくいかなかったときにみんなが一つになって、このプロセスをどう変えていかないといけないのか、とまとめていくことが非常に大事だと思っていました。自分たちが構築してきたことが3年目4年目になってやっと形に出てくるものだと思っています。先日の記者会見でもお話ししましたが、プレシーズンでは若手の木原 励が唯一のFWだった、これは優勝を掲げる上で果たして現実的なのかと言われれば、決してそうだとは思いません。いい選手はいますが、適切だったかどうかというところ、そしてプロセス、時間が足りなかったと思っています」

(場内を一周する際、レッズのゴール裏に人がいなかったが、それを見てどのように感じたか?)
「全員を納得・満足させることはできないのかなと思います。私を批判するグループがあるのはもちろん理解しています。そしてそれを受け止めることも大事だと認識しています。まずは私が責任を負わないといけない立場ですが、このクラブが掲げた期待値は非常に大きかったと思います。掲げたものが結局のところ、監督・選手たちに大きな代償を払わせる形になってしまったと思っています。

正直なところ、浦和レッズが今タイトルを獲れるかと言えば、そうは思いません。タイトルを獲るために必要なプロセスがあった先に、タイトルはあると思います。では、タイトルを獲っていく上で、我々がどう進んでこられたか、はじめることができたかを、もう一度振り返らないといけないと思います。メンバーのところは先ほど話した通りですし、シーズンでのいくつかの問題点、アクシデントもそうです。そしてどういった選手が加入してくるか、いつ加入してくるかも、我々が届かない理由の一つだと思っています。

まず、タイトルを目指すにあたって、我々が川崎フロンターレとの29ポイントの差、これを現実的にどう埋めていくのかが果たされたのかと言われれば、決してそうではないと思っています。もちろん、どういうふうにそこを縮めていくのかを分析し、それを遂行するべきなのですが、分析が正しくできていない、現実的ではないところだったと思います。もちろん掲げるにあたって、私もその場所にいましたし、どういうふうに目指していくかという話もしました。誰かではなく自分も含めて、一つ大きなクラブとしてのミスだった、その期待値設定がよくなかったと思います」

クラブによる編成、目標設定、そうしたところは三年間の総括記事の方で考えていきたいと思います。総じて見てみると、10月、11月は今シーズンの良くなかったところが再び表面化してしまった、寂しい1ヶ月となってしまいました。


◆コンセプトは表現できていたか

※各項目5点満点
【個】個の能力を最大限に発揮する
 →2点(2月=2点、3月=3点、4月=3点、5月=3点、6月=2点、7月=4点、8月=4点、9月=2点)
【チーム】攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをする
 →2点(2月=3点、3月=3点、4月=3点、5月=4点、6月=2点、7月=4点、8月=4点、9月=2点)
【姿勢】前向き、積極的、情熱的なプレーをする
 →2点(2月=4点、3月=3点、4月=3点、5月=3点、6月=3点、7月=4点、8月=5点、9月=3点)

この2年間でリカルドによって強調され、成長したのは手前からボールを繋ぐときのポジショニングとそこから相手をずらしたり止めたりするためのアクションでした。ただ、プレーするのは人間なので、何かに対して時間をかけて積み上げるとそこへの意識が強くなって別の何かへの意識は弱くなります。

ゴールを目指すけど、そこは相手が埋めているからそのエリアを空けるためのアクションであるという順序であるはずが、手前から繋ぐことを優先的に積み上げてきたことによってサッカーの大前提である相手ゴールに近いところから目指すという意識が薄くなってしまったきらいがあると思います。

ダイレクト志向であってもポゼッション志向であっても、状況に応じて「結果的に」手前から繋ぐことが発生するのであって、裏へボールを出して成功する、あるいはそこでのネガトラで優位に立てる可能性と、手前から繋ぐことで優位に立てる可能性とを比べた時に、どれくらい前者のリスクを許容するのかという違いでしかないと思います。

ここのリスクをリカルド以上に選手たちが恐れてしまったのかもしれません。最終節も岩波や岩尾がオープンにボールを持っているのに前5枚が誰も裏へのアクションを起こそうとせずに手前でボールを受けたがっていた場面が何度もありました。

リカルドが徳島でやってきたことをそのままやって欲しくて彼を招聘した訳ではなく、だからこそリカルドにぴったり合った選手だけを補強している訳でもありませんでした。それでも、こうして選手たちがリカルドの色を強く解釈してしまったことで選手たちの良さも出なくなってしまうというのところにサッカーの難しさやマネジメントの難しさを改めて感じました。

これらの理由から【個】や【姿勢】の部分を評価することは難しいですし、【チーム】の部分もユンカー&リンセンを前に並べた時の攻守が分断されやすかった展開ではなかなか評価できないです。


さて、この後は2022年の総括、そして既に前提共有として3本アップしている三年計画の総括へと進んでいきます。どんよりした空気でシーズンが終わっていっただけでも気持ちが滅入ってしまいますが、クラブが変革を打ち出した中で起きた失敗に対して目を背けずに向き合わなければまた我々はすべてをリセットしてやり直しになってしまいます。

やるべきことは何が成功して何が失敗したのかを受け入れて、失敗した部分を少しでも改善できるように考えて行動に移していくことでしかありません。

最終節の試合後の埼スタの雰囲気もそれぞれが自分の中にある正義を表明しているだけで、それらがバラバラの方向を向いている寂しさがありました。僕がこれを書くことが誰の何の役に立つのかなんて分からないし、誰のためというより自分の頭の整理のために書いているので偉そうなことは言えませんが、2023年以降も続く浦和レッズの物語を少しでも期待をもって明るく見られるように今思うことをきちんとまとめていこうと思います。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。


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