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【雑感】2022/10/12 浦和vs札幌(J1-第27節)

鳥栖戦に続いてビルドアップでは明確な型を持っていて、非保持はマンマーク志向の相手ということで、スタメンもゲームプランも継続ということで臨んだように見えました。

単純なシュート数や枠内シュート数は札幌の方が多かったものの、そのうち決定機はいくつありましたか?という視点で見ると浦和の方がより決定機は作れていたと思います。リカルド体制になって多く見られてきた(その中で結果を出してきた)手前から繋いで相手を攻略していく、相手からさっさとボールを取り上げて失点の可能性を減らしていくというスタイルが見られる展開にはならなかった上に勝てなかったということで、「結局何がしたいの?」というところが見えにくい試合ではあったと思います。


札幌はご存知ミシャ式の4-1-5でのビルドアップでしたね。札幌の基本配置を数字で表そうとするとどの局面を切り取るのかによって変わるし、そもそも多くの媒体で便宜上書かれている3-4-2-1で並んでいるタイミングなんてほとんどないよねとなるので、保持の配置と非保持のマーク対象だけ整理しておきます。

札幌の保持は荒野がアンカー、高嶺が左CBとして振舞う4-1-5が基本形

札幌の保持と非保持の図を見比べてみると各選手の位置があまり変わりません。なので「この試合は札幌が4バックだった」という言い方もされたのは保持の形のまま非保持で高嶺と岡村がリンセンとユンカーの担当だったという点だろうと思います。

浦和の保持は4-◇-2とも取れるような並びだったように見えました。岩尾と敦樹は縦並び気味で、ビルドアップで2CB+岩尾がロックされた時には小泉が岩尾の左側に下りてくるアクションが多かったです。ただ、鳥栖戦と大きく変わったわけではないので、札幌としては保持⇔非保持の移行をスムーズにすることも踏まえて非保持のマーク対象を割り当てたのだろうと思いますし、それによって前半は25分くらいまでは札幌の方が4局面の循環がスムーズで優勢に見えたのかなと思います。


札幌の保持に対して、試合序盤はユンカーとリンセンがアンカーの荒野を消すように中央に並ぶところから始めて、2トップの脇に侵入してきたら横方向に矢印を出すようにしていました。

ただ、そうすると札幌の最後尾はオープンな状態でどんどん前に入っていけます。そのため、浦和の守備ブロックは一番前の2トップの位置がハーフラインくらいまで押し下げられてしまって、ボールを奪う位置がペナルティエリアの少し前くらいまで低くなってしまいます。そこから保持へ移行するとしてもボールを逃がす場所が後ろにはないので、結局カウンター気味に裏を狙ったボールを出してユンカーとリンセンに頑張ってもらうという形が増えたとも言えそうです。

それでも、14'10~のように札幌がバックパスをして浦和が前へ出ていける時には2トップが荒野ではなく岡村、高嶺、菅野のところまで出て行って、荒野のところには敦樹を押し出してチェックするというアクションがありました。


25分くらいまでは札幌優勢と書きましたが、25'15~に札幌がゴールキックを繋いでスタートさせていて、そこへユンカー、リンセン、小泉がチェックに出て行っていて、さらにそこへ敦樹が加勢して岡村からのパスが小泉にプレゼントされる形になったところから札幌の保持の開始地点が低くなって浦和がプレッシングを仕掛けられるようになっていきました。

25'15~、25'55~、28'45~と前のめりにプレッシングをかけてボールを奪うことに成功しており、そこからショートカウンターで一気に攻め込む場面を作れていました。この3回のうちのどこかでゴールを取り切ることが出来れば試合の流れも印象も全然違っただろうと思います。


後半に入っても敦樹を前に出したプレッシングは継続で、札幌もそこに対してポジションを入れ替えるという対抗策は特に無かったように見えました。また、プレーエリアが中央付近になることが増えると保持の形を4-◇-2にしていて中央に人が多くなりやすい浦和の方がこぼれ球を拾えることが多くなったのかなと思います。

さらに、ビルドアップ隊の位置が高くなると岩尾がCBの間に下りたり、ショルツが運んだり、小泉の位置がより中央に入ってきたり浦和の選手たちのポジションに変化が出てきたことと、札幌の方がコンディションがあまり良くなかったのか前3枚のプレッシングが鈍くなったことで浦和の方がボールを持てるようになっていきました。

ただ、55'03~の外で大久保がボールを持ったところを酒井が外から回って大久保のカットインコースを空けた時などが象徴的ですが、相手ゴール前へ侵入していくときのパスが弱かったりズレたりすることが多く、チャンスになっても良い盤面の状態なのにチャンスにならないというもどかしい場面がありました。

そうした状況の中で松尾や明本が入った後には73'50~のロングカウンターや78'52~の松尾がロングボールを福森より先に触った流れで2度菅野との1対1の局面が生まれました。


最終的には大久保のシュートに対して福森がハンドを犯してしまい、4月のアウェーゲーム同様に浦和はPKでの得点で引き分けとなりました。スコアの流れとしては先制されてから追いついたので勝ち点1を取ったという言い方も出来ますが、試合の中身を見れば普通に勝ち点3取って欲しいよねという試合だったと思います。この試合での得点がPKによる1点のみというのはチャンスの数や質からすると足りないです。

この試合で実際に起きた現象のうちどれがゲームプランに即したものかは分かりませんが、前半の25分以降のショートカウンターでのチャンスについてはそこで決めきることが出来ないのであればユンカーのプレッシングでの貢献度の低さ(やる気はあるもののグローインペインでコンディションが良くないという要素はあるかもしれない)を許容することは難しくなります。それなら松尾をスタートから使ってきちんとプレッシングが機能する回数を増やした方が試合を安定させられるよね?と。

ユンカーがプレッシングで二度追いがほとんど出来ない中でも前半の途中からは非保持で形勢を立て直して決定機を何度も作れた点はスコアとは切り離してきちんと評価すべきでしょう。重複しますが前半25分以降にあったショートカウンターのうちのどれかで点が取れていたり、後半の松尾と明本の決定機が活かせていればこの試合自体であったり、この試合を踏まえたリカルドに対して全然違う印象を持つ人は少なくないと思います。


鳥栖戦の後にTwitterにも書きましたが、そもそもリカルドを招聘した理由はサッカーにおいて求められる色々な要素のハイブリッド型を目指しているからとクラブ側が言っています。

なので、鳥栖戦やこの札幌戦でロングボールが多かったこと自体は特に問題ないというか、相手に対して有効だと思うならそれをやるのが適切だと評価するのが妥当だと思います。

ただ、もう一つの視点として、この札幌戦では特に後半はビルドアップ隊に猶予のある時間帯があったので、そういう時にはしっかりポジションを取って、ボールを繋いで相手を攻略していけるような場面を作れても良かったなと思います。そして、その部分はボール扱い、判断、コンディション、色々な要素が絡んで上手く表現できていなかったのかなと。

相手に合わせて対策することは大事だけど、とは言え自分たちが一番自信をもってやれること(時間をかけて積み上げてきたこと)はそれが出来る状況があるなら優先的に表現できるようにしたいよね、という部分で不満は持ちました。


選手個人のところで見ると、マンマークに対して上手くいかない場面が過去の試合で散見された小泉も、この試合では後ろから寄せられてもボールをキープしていたり、ボールを奪われてもすぐに取り返したり、彼自身に強さが出てきたようにも見えました。ただ、結局は試合を決める仕事が出来ない限りはそこまでの評価しかされにくいですし、もっと出来るだろ!と求めたくなってしまいます。

監督がお膳立てできるのは良い形で敵陣ゴール前にボールと人が入る状況を作ることと、悪い形で自陣ゴール前の局面を迎えないようにすること、いずれもピッチ上の環境設定であって、その局面で決め切るのかどうかは選手に委ねられています。そういう点では個人的にはリカルドよりも選手たちのパフォーマンス自体の方に不満が多かったかなと。


裏で行われいた試合の結果、今季のJ1の優勝争いは次節に持ち越しとなったので浦和の次戦は対戦相手の方に大きな注目が集まることになりそうです。ただ、相手の状況がどうこうとか、浦和の今年の順位がどうなのかとかをかまっている場合ではなく、浦和が今後どういう方向で進んでいけるかを左右するのが残り2試合だと思っています。そういう点で、リーグ全体の空気を読むとかそういうことは一切せずに自分たちのやるべきことにだけ焦点を当てて2週間という時間を活かしてもらいたいと思います。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

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