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【隙間怪談-2-】

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#ホラー

それは反則だろ

それは反則だろ

これは昨日の僕の話。

深夜2時過ぎ。
そろそろ寝なければ、と電気を全て消しベッドに入って暫くした頃。

ぱきん、ぱきん。
天井付近から音がした。

パン!
次は床の方から音がした。

いわゆるラップ音だとハッとする頃には数秒に一度の間隔でパキン、バキッ、パン!コンコン!と空間内のあらゆる場所から音がする。

コンコンコンとフローリングの床を叩く音も混じるのだが、指先でコンコンとやった時と同じ音と

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いない

いない

「引っ越しをする事になって家財道具とか荷物を纏めてたんですけどね。その時にアルバムが沢山入った段ボール箱が出てきたんですよ。もう20年以上になるもので、娘が産まれてから写真をよく撮るようになったのを大事に仕舞ってあったの」

杉本さん夫婦には一人娘がいる。

初めての子供が娘だったから、2人とも本当に彼女の事を猫可愛がりしていたという。
段ボール箱一杯になるほど写真を沢山撮ったし、子供の頃に旅行へ

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“ない”

“ない”

「もう何年も前からになるのよ」

日向さんは、某所教室で人に絵を教えている。
たくさんの生徒を受け持っていて、彼女自身も個展を開いたりしている。

「もう何年も前。うちの教室に1人の女性が通っていたのよ。主婦の方。その方、何枚も絵を描いて手慣れてきた時に、今は家にある物で一等気に入っている物を描いてるのよって話してくれたの。それは子供の頃から大切にしてる人形で、フランス人形だったのだけれど絵に描い

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握り仏

握り仏

それは、羽岡(はおか)さんが晴れた日に公園へ足を運んだ時の事。

彼女はベンチに腰掛け、息子のカツミくんはベンチから少し離れたところで砂場で山を作って遊んでいたという。

「おかーさん!」

砂場で遊び出して10分程した時、遠くからカツミくんの呼ぶ声がしたので羽岡さんはどうしたの?と砂場へと駆け寄った。

「砂まみれのカツミが右手をぐっと握ってこっち向けて開いたんですね。そしたら手のひらに、すっご

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猟犬塚(2)

猟犬塚(2)

前編:猟犬塚(1)

「えっ、痩せた?」
「ああ、痩せた痩せた。こっちきてからスルスル痩せたよ」

兄はあっけらかんとそう話した。

「いやいやいや、痩せすぎでしょ!って言ったんだけど。“いや〜忙しくてバタバタしてたりして食欲落ちちゃって〜!”とか笑ってたんだ。そんなもん?って返事して、誘われるまま兄の家に遊びに行ったんだけど」

“獣臭い”

それが兄の部屋に入った第一印象だった。
犬、猫、鳥、

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お家の絵の女

お家の絵の女

まだ、タツヤくんが物心つかない頃の話だ。

とても綺麗な女性が玄関前にぽつんと佇んでいるのを見る事があったという。

薄桃色のワンピースをふんわりと着こなした、鼻筋がするっと通ったとても綺麗な優しげな顔の女性だ。
彼女はずっと玄関のドアのあたりを優しそうな眼差しでずっと見つめていた。

両親にあれは誰かと尋ねた事がある。
何だかとても綺麗で優しそうな顔の女の人が、そこに立っている、と。
ただ、それ

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百物語

日吉(ひよし)さんは一度、百物語を“真剣に”やってみた事がある。

「昔ね、百物語は小学校の頃に修学旅行でやった事があったのよ。でも、百物語のワクワクって最後の1話が終わった時に何かが起こるかも!ってのが醍醐味でしょう?要は、幽霊を呼ぶための儀式に近い遊びって事……。でも子供の頃の百物語って話がダブったり適当だったりして、こんなの絶対に儀式として成立しないでしょう」

小学校の修学旅行。
お泊まり

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どれだったんだろう

どれだったんだろう

最近の僕の話である。
部屋の模様替えをした事にこの話は起因する。

僕の部屋には、コレクション棚がいくつかある。
中には、海外の置物や古い食玩、エジプト香水瓶、ビスクドール、人形などが大量に詰め込まれている。

数ヶ月前の話。
僕はこのコレクション棚の中身を処分し、新しい物と入れ替える事を決めた。
もう10年以上も飾っていたがそろそろ入れ替え時か、という心持ちである。

“とりあえず久しぶりに開け

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残されたもの(1)

残されたもの(1)

この事は、豊海(とよみ)さんの父が大病に罹った事が発端だった。

「父に癌が見つかったんですよね。調べた時には末期で、なんとかどうにかしよう……って家族で躍起になってたんです」

慢性的な体調不良をきっかけに病院で精密検査を受けたところ、癌が発覚し入院する事になったのである。
豊海さんも母もパニック状態。
何とか持ち堪えて入院の手続きを済ませたが、その頃の記憶は多忙に押し流されてもう薄らとしか思い

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おじぎ

おじぎ

「心霊スポットってさ、別に有名じゃなくても幽霊がいるかもしれない場所は全部スポットになるじゃん?わかる?」

大畑(おおばた)さんはかつて“全く有名ではない心霊スポット”……というか、自殺のあったとある部屋……つまるところ“事故物件”という奴に興味本位で住んだ事がある。

幽霊を全く信じていなかった大畑さんは、一度くらい幽霊とやらを体験してやろうじゃないかとそういう気持ちだったのだ。

「事故物件

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全然わかんない

全然わかんない

楠川(くすかわ)さんには悩みがある。
夜遅く、バイトから帰るために通る道に奇妙なものが“ある”という。
それは真っ黒な靄で、電信柱のそばにスゥっと佇んでいる。

初めて見た時はただの頭上の電灯が影を作っているのだと思っていた。
目を凝らすと、うっすらと人1人が立っているくらいの大きさの“靄”がそこにある。

それは見るたびに濃くなっていった。

バイト終わりに通りかかるたび気になって電信柱の側に佇

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「て」

「て」

「何もない場所って、聞いてたのよ」

松原さんは春に引っ越しをした。
社会人5年目、収入も生活も安定してきたため職場にもう少し近い利便性のいい場所に引っ越そう、とそう考えたのだ。
色々と理想の条件があったのだが、松原さんはとにかくリーズナブルな物件を探していた。

「とにかく少しでも安ければ嬉しい、ってスタンスで……でもお風呂はちゃんとしてて、トイレは別がいいとか色々理想はあったのよ。それでも安い

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いるだけ

いるだけ

今井(いまい)さんは大学生になってすぐ学校に近い場所で一人暮らしをはじめた。

彼女は母と姉の3人暮らしだったが、社会人の姉はまだ実家で暮らしていたので比較的すんなりと心置きなく家を出ることができたという。

「引っ越してからすぐ里帰りしようって思ってたんだけど」

春から通う新しい学校に初めてのアルバイト。
スケジュールがあまりに忙しく帰るタイミングをずるずると先延ばしにしていた。

「久しぶり

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土の臭い

「常連さんの中に、いつも延長ロングで1回ヤって昼寝していく客がいたのよね。カツジって人。40ちょっと超えたくらいのオジサン」

小松さんはかつて風俗で働いていた。
3年程同じ店で働いていたが、定期的にくる常連も何人かついていた。
そこまで人気だったわけでもないが、売れていないわけでもない微妙なラインだったと本人は言う。

「ワケ有りの客って感じ。丸坊主で人相が……眼光鋭いっていうか……。それに、上

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