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『アニー・ドギーバッグ』シリーズより「三人目、フランツ」

【八人目へ】

親が破産して自殺し、アタシたちは捨てられた。路地裏へ。売春やってたガキもいたけど、アタシたちはやらなかったし、やらせなかった。引き取ったやつが筋金入りのクソで、アタシたちに殺しを仕込んだ。

"ブリッツ"フランツ

「アンタもヒトデ野郎になったのかい、師匠(マスター)」
「そうだ。おまえも来い、アニー」

やつが両手を広げる。傷だらけの巨体に、濁った目。いやなオーラ。ヒトデに触られたのだ。アタシや、レミのように。
強い。アタシの師匠だ、手の内は多少はわかるが、勝てたためしがない。学ぶ相手だった。そのうえ、ヒトデだ。

「復讐か。恨みか。レミの仇討ちをするのか。いいだろう。恨むのはいいことだ。恨まれるのもいいぞ」
「恨んだうえで、恨まれて、殺す。そうするさ」
「長くはないな、そんな生き方は。細く長く、永遠に生きられるかもしれないのに。恨まれろ、アニー」

穢れたパワーが満ちてくる。やつにも、アタシにも。恨みの相互循環。そのために、レミは死んだのか? 恨ませるために。

「『うらめしや(Curses on you)!』」

レミの声でそう言う。双子の声で。恨み、恨まれ、復讐する。それでいい。アタシとレミの復讐を果たす。ヒトデ野郎どもを皆殺しにする。

西海岸の港湾都市『ステラ・マリス』。日中は世界有数のビーチリゾート。夜は犯罪都市。仕切っているのはギャング団「スターフィッシュ(海星)」。所属メンバーの人種・国籍・宗教は様々だ。警察機構も存在するが、ほぼギャングの息がかかっている。ボスの表向きの名は、リヴィオ・ラファエーレ。イタリア系の実業家。

POW!POW!

銃弾二発。避けられる。一瞬で懐に入られ、銃とマスクを叩き落とされ、両手首を掴まれる。稲妻の速度。
「遅いぞ、アニー。そんなふうに育てたか、おれは?」
「そう育てられたさ。レミと一緒に」
「殺しはしない。恨ませる。永遠におれを恨んでいろ」
「いやだね」
蹴り。足を掴まれる。アタシの両手首を掴んだまま。フランツの腕が四本に増えている。
「手足を引きちぎって、生かしておこう。一緒に暮らそう。前のように」

顔が近づく。息が臭い。されてたまるか。口を開き、舌を出す。
「『いないいない、ばあ(Peek-a-boo)』」

POW!

落とした銃から弾が出て、フランツの股間に命中する。
「あづッ!?」
怯んだ。POW! 舌の先から銃弾を発射。フランツの眉間に命中する。白目を剥き、死ぬ。
念の為、心臓も撃ってとどめを刺す。

POW!

「三人目。次」

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