これからも人が死ぬ

ユリバース ~fleur de lys de la mort~

ユリバース ~fleur de lys de la mort~

 (マリア、どうしても行くの?)  (うん、私行ってみたいんだ。ひいおばあちゃんの故郷に)  (絶対、絶対戻ってきてね)  (うん、約束。)  (これ、持ってて)  (うん、うん)  また、別れの夢を見た。  まだ小さかったころ、まどろみの中で聴いた日本の物語。それに憧れ、ブラジルからホームステイに来て二週間。ここでの暮らしは驚きと楽しみに満ちている。それに遠い親戚のヨシダ夫妻は朗らかで親切で、とてもよくしてくれる。  でも、寂しいものはしょうがない。 「地球

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『英雄は帰らじ』

『英雄は帰らじ』

 その日が私の初陣だった。地平線まで続く揃いのブルー・コート。戦友たちの顔は功勲への期待に輝く。  人馬兵連隊はその存在意義を銃の登場により危ぶまれたが、その体躯と速度からの衝撃力は未だ健在。  この一戦で武功を示し、家名に恥じぬ男であることを証明する。相手は弱体なる人間の小国連合。負ける理由はない。  喇叭が鳴る。同胞たちが一斉に地を蹴る。負けじと走る。接敵まであと五百、四百、三百。  向けられたのは奇妙な銃だった。キャメラのように三脚に据え付けられ、複数人がかりで操

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We“can't”sleep:保安官補佐パトリックの覚書  『Snake oil ①』

We“can't”sleep:保安官補佐パトリックの覚書  『Snake oil ①』

 イリノイ、クインシーから馬で半日ほどの郊外。ぽつんと立つ小屋を見下ろす丘の上。  俺は退屈に耐えていた。 「しかしだ、またガセじゃないのかね」  何杯目だかわからない安コーヒーを啜り、ぼやく。 「気を抜くなよぉ、パット」  大男のオリバーが愛用のコルトを磨きながら言う。 「“we never sleep”。それに、ハルとジョンが戻る頃合いだよ」  得意げな顔。神はこの男にユーモアセンスをくれなかったらしい。きっと腕っぷしと頑丈な胃袋を与えたところで贔屓になると思

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【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第五話

【AZアーカイブ】ゼロの蛮人(バルバロイ)第五話

鎖に繋がれたトラクスは……いつも叩いてばかりの私を、きっと恨んでたんだろうな……何とか脱出しようとして私を人質にして…… とうとう脱出して、盗賊になって…… でも屋敷に忍び込んだところを、父様に見つかって…… ああ……何て事をするの、トラクス…… 父様が死んでしまった………ああ……母様や、お姉様たちまで…… 私の……私の家族が死んだのは………私のせい……… 私のせいだ……! 私が悪いんだ……! こんな事になるなんて…… ご主人様に受けた恩を…… 仇で返すなんて……

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死体溜まりのドック・タウン(1)

死体溜まりのドック・タウン(1)

・プロローグ 「ところで。俺が言いたかったことは『そこで待っている』……ただそれだけだ。それでオチは?」 男のみぞおちを殴る。 「お前だけだ。誰が手を引いてる」 再びみぞおちを殴る。手を差し出す。札束だ。 「なんだそれ」 彼は一瞥して再び殴る。血を吐いた。 人気のない路地裏。後ろでは強盗退散目的で設置されたのにもかかわらず全く効果のなかった警報機が鳴り響く。信用金庫はドアノブをひねるようにこじ開けられ、中にあった客の銀行への盲信によりかき集められ日本経済の微小な割合を占め

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「アニー・ドギーバッグ」序章・ライナーノーツ

「アニー・ドギーバッグ」序章・ライナーノーツ

おれだ。どうにかこうにか、最初の逆プラ作品の続編に一区切りつけた。これでリザルト画面が表示され、おれにはEXPが入り、レベルをあげ、一旦セーブし、各種装備を整える事ができる。一息ついたところでライナーノーツというわけだ。アポカリキシ・クエイクのもやる。 ★ 一話一話の解説はめんどいのでしない。ただフランツの蘊蓄話は、おれが昔世界史板のスレに書き込んだやつの流用だ。ほんとかどうかは知らない。 なぜ最初にこれを書き始めたか? まず、話がシンプルだからだ。アニーが出て殺す。シ

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『アニー・ドギーバッグ』シリーズより「十人目、トオル・シンジ」

『アニー・ドギーバッグ』シリーズより「十人目、トオル・シンジ」

【八人目へ】 ★ 「見ィつけた」 隠れ家のひとつ、屋根裏部屋。十人目は、向こうからやってきた。屋根を音もなくこじ開けて。アタシも有名になったようだ。それを待っていた。 「やあ、アニー。恨みをありがとう。私もおかげでのし上がれているよ」 「こちらこそ。よく来てくれたね、歓迎するよ」 POW! 銃弾を仰け反って回避した、日本系の男―――『トオル・シンジ』。ゲドンが言ってたやつ。レミの直接の仇のひとり。 跳躍して穴をくぐり、屋根の上へ。恨み、恨ませる。もう九人、それ以上

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『アニー・ドギーバッグ』シリーズより「三人目、フランツ」

『アニー・ドギーバッグ』シリーズより「三人目、フランツ」

【八人目へ】 ★ 親が破産して自殺し、アタシたちは捨てられた。路地裏へ。売春やってたガキもいたけど、アタシたちはやらなかったし、やらせなかった。引き取ったやつが筋金入りのクソで、アタシたちに殺しを仕込んだ。 "ブリッツ"フランツ。 「アンタもヒトデ野郎になったのかい、師匠(マスター)」 「そうだ。おまえも来い、アニー」 やつが両手を広げる。傷だらけの巨体に、濁った目。いやなオーラ。ヒトデに触られたのだ。アタシや、レミのように。 強い。アタシの師匠だ、手の内は多少はわ

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『アニー・ドギーバッグ』シリーズより「八人目、ルム」

『アニー・ドギーバッグ』シリーズより「八人目、ルム」

アニー・ドギーバッグ。彼女は食い残された。 ★ 【六人目へ】 「これで何人目だ?」 「十三人、てとこですか。三人同じ場所で死んでるのが二つ、二人が一つ」 トイレ、路地裏。その前は酒場。ここ数日で起きている連続殺人事件だ。手口は似通っている。拳銃で蜂の巣か、脳天に鉛玉か。時々刃物かなにかで死体が損壊している。検死によれば、死ぬ前の傷。いたぶられたというよりは、犯人に反撃しようとしたところを斬られた、といったふうだ。銃を持つ手が転がっていたりする。 「監視カメラは」 「

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【聖杯戦争候補作】兆し

【聖杯戦争候補作】兆し

モンスター【英:monster】 怪物、化物。語源はラテン語「monstrum(不可思議なもの、奇怪なもの、正体不明の怪物、驚異)」で、動詞「monere(警告、忠告、予兆)」に遡る。 古代人にとって、驚くべき出来事や奇怪な生き物の出現は、神々から人間への警告であり、何か異常なことの前兆であると考えられていた。 monition(警告)、premonition(予告)、monitor(忠告者・監視者)、monument(記念碑)なども、同じ語源から派生している。  ◆ ◇

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