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一つの波周り、詩やその周縁/Keitoh Natsuko

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    水路三号

    ケイトウ夏子の個人詩誌三号。五篇を収録。見ない人の分まで空をみている「揺籃期」より◉目次月の水差し半夏うるおう湾で記述揺籃期B6 16p発行日 2024年8月21日
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    蝉文学 Vol.1

    児島成さんが編集・発行した、蝉がテーマの小説と詩のアンソロジーです。【執筆者】(五十音順・敬称略)伊島糸雨ケイトウ夏子児島成小林福実里見詩情田中館愛嬌晦灘奏子旗原理沙子晴モリノ凛山田彩緒山田真佐明2023年11月11日 初版発行2024年5月19日 2版発行B6
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    ギルド

    「終幕があたらしい幕開けとなる」35編の詩の記録武田地球・ケイトウ夏子・中川達矢・渡辺八畳の四人で、前の詩作品の終わり二行に繋げて連詩を行いました。初売 文学フリマ東京372023年11月11日 発行A5 76P
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記事一覧

水路三号について

個人詩誌、「水路」三号ができました。 オンラインストアから購入頂けます。順次、本屋さんで取り扱いもしていく予定です。 読んでくれる方、気にかけてくれる方のおかげ…

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4日前
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汝の睡眠の島を 死ぬほど好んでゐる。

夏 ポール・ヴァレリー(訳/鈴木信太郎)

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9日前
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『八月の光』冒頭読み比べ

道端に座り、荷馬車が丘をのぼってくるのを見ながら、リーナは思う。〈あたし、アラバマから来たんだ。すごく遠くまで。アラバマからずっと歩いてやってきたんだ。すごく遠…

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3週間前
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6月

昨日は… 昨日は、「夏至の庭」と銘打ったキャンドルと燭台の展示を見に行った。まだ初夏の光が眩しくギャラリーに差し、その空間だけ時間が止まったようだった。一つも灯…

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2か月前
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「生きていてよかったと思えた」と言われたとき、聞き取れる耳を持っていた自分にも感謝する

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2か月前
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引用から

――たとえばジャケットの場合、着て、前のボタンを一つかけると、そこにジャケットの重心がすっとかかる。その瞬間に服が命を得て、ボタンは役目を終える。扇のかなめと言…

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2か月前
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第一詩集のこと

 三年前に出した第一詩集『例えば鳥の教え』。いまだに手に取ってくれる人がいることが、本当に有り難い。読み手なしには成立しないこと。初めて手に取る人の導入にもいい…

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2か月前
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稜線のまどろみへ

 六月。都内は早くも夏の気配がしている。それでも、昨年の同じ時期よりは涼しいように感じる。駅から少し歩く場所が目的地の場合、日が落ちてから行くのがいいだろうか。…

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2か月前
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夜明け剥がし

鍵を縦にして 開け放ったドアから 私は出ていく 「ぐにゃりとした道を渡って」 来た道を戻るだけ けれど 復唱して 風景に埋没していたベンチを 視界から取り出して洗い リ…

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2か月前
8

傘をさすと怒られる場所の一つが競馬場だった

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2か月前
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参加した詩誌『mare vol.2』ができました。写真と作品のマリアージュ、フルカラーの紙面になっています。
よければお手にとってみてください。
https://amzn.asia/d/3Ppp5Wy

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3か月前
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振り返り

文学フリマ東京38から一週間が過ぎようとしている。 今回から入場料がかかるようになったのと、自分は新刊がなかったのとで、どれだけの人が来てくれるのか不安な面もあっ…

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3か月前
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下に落ちる星(つまり流れ星)と上にのぼっていく花で封をした。みんなどこの夜にいるだろう。

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3か月前
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静謐なピアノを水のように携えて、今日は
https://youtu.be/ci53bEL8KWA?si=yAZkQU4mscw9rk_h

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3か月前
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その歩み

GWの後半。駅のポップアップショップに紅茶の店が出ていた。見たこともない茶葉がたくさん並んでいた。 「これは何の茶葉ですか?」という店員に向けての質問に、隣に立っ…

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3か月前
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一人が一つの星とは限らない、これは自分にとってとても新鮮なできごとだった。「ふたりの」終わり方もあるんだね。/映画「異人たち」

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3か月前
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水路三号について

個人詩誌、「水路」三号ができました。
オンラインストアから購入頂けます。順次、本屋さんで取り扱いもしていく予定です。

読んでくれる方、気にかけてくれる方のおかげで、三号まで来れました。
どうぞ、よろしくお願いします。

汝の睡眠の島を 死ぬほど好んでゐる。

夏 ポール・ヴァレリー(訳/鈴木信太郎)

『八月の光』冒頭読み比べ

道端に座り、荷馬車が丘をのぼってくるのを見ながら、リーナは思う。〈あたし、アラバマから来たんだ。すごく遠くまで。アラバマからずっと歩いてやってきたんだ。すごく遠くまで〉

(諏訪部浩一訳/岩波文庫)

道ばたに坐り込み、馬車が坂道を登って近づいてくるのを見ながら、リーナは思う。『あたしはアラバマからやってきた。遠くまで来たものね。はるばるアラバマから歩いてきた。ほんとに遠くまで来たものね』

(黒

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6月

昨日は…
昨日は、「夏至の庭」と銘打ったキャンドルと燭台の展示を見に行った。まだ初夏の光が眩しくギャラリーに差し、その空間だけ時間が止まったようだった。一つも灯されていないキャンドルを一つずつゆっくり眺め、夏至が来るのを待つ心持ちに。一番小さなキャンドルを購い、巾着に入れてもらった。

その後はいつも行く場所へ。『荒地詩集1955』がまだ残っていたので、ありがたく購入。これだけで満たされた。日に灼

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「生きていてよかったと思えた」と言われたとき、聞き取れる耳を持っていた自分にも感謝する

引用から

――たとえばジャケットの場合、着て、前のボタンを一つかけると、そこにジャケットの重心がすっとかかる。その瞬間に服が命を得て、ボタンは役目を終える。扇のかなめと言い換えてもいいけど、成仏する、その位置を探すことが、服を生かしも殺しもします。三つボタンでも六つボタンでも、ポイントになるのは一個だけ。残りのボタンやカフスボタンは、単なる飾り、様式美にすぎません。ついでに言うと、ボタンをはずしたとき、身頃

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第一詩集のこと

 三年前に出した第一詩集『例えば鳥の教え』。いまだに手に取ってくれる人がいることが、本当に有り難い。読み手なしには成立しないこと。初めて手に取る人の導入にもいいのではないかという、過去に書いてもらった評を今日は二つ挙げておく。

・高嶋樹壱さん
 テキストに沿った丁寧で確かな読みをする方。他の詩集評も必読。まさか読んでくれているとは思わなかったので、当時は驚いた記憶がある。

・内島すみれさん
 

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稜線のまどろみへ

 六月。都内は早くも夏の気配がしている。それでも、昨年の同じ時期よりは涼しいように感じる。駅から少し歩く場所が目的地の場合、日が落ちてから行くのがいいだろうか。
 私の周りは暑さを苦手とする人の方が多い。

 あったような、なかったような夏を思い出させてくれる、引用を置く。導入として。

夜明け剥がし

鍵を縦にして
開け放ったドアから
私は出ていく
「ぐにゃりとした道を渡って」
来た道を戻るだけ
けれど
復唱して

風景に埋没していたベンチを
視界から取り出して洗い
リハーサルをする
目印の

川のせせらぎを
耳に味わって進む

重心が順調に移動して

バス停とバスが近付くころ
灯台の役目が一つ剥がれる

傘をさすと怒られる場所の一つが競馬場だった

参加した詩誌『mare vol.2』ができました。写真と作品のマリアージュ、フルカラーの紙面になっています。
よければお手にとってみてください。
https://amzn.asia/d/3Ppp5Wy

振り返り

文学フリマ東京38から一週間が過ぎようとしている。

今回から入場料がかかるようになったのと、自分は新刊がなかったのとで、どれだけの人が来てくれるのか不安な面もあったが、一緒に出店した人のおかげもあってか、予想以上にたくさんの人に会うことができた。手元の『例えば鳥の教え』はなくなった。感謝している。

詩歌トライアスロンの選考会以来に会えた人、当日電車に乗って遠方から来てくれた人、先に本屋で作品に

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下に落ちる星(つまり流れ星)と上にのぼっていく花で封をした。みんなどこの夜にいるだろう。

静謐なピアノを水のように携えて、今日は
https://youtu.be/ci53bEL8KWA?si=yAZkQU4mscw9rk_h

その歩み

GWの後半。駅のポップアップショップに紅茶の店が出ていた。見たこともない茶葉がたくさん並んでいた。
「これは何の茶葉ですか?」という店員に向けての質問に、隣に立っていた女性が答えてくれた。自分に背恰好が似ている人だった。ワンピースの色も同じ。珈琲店で働いているが、紅茶が好きだという。生活に香りがないとくるしいですよね、という会話をできてよかった。

パッションフルーツ。黄色い花を浮かべて飲む紅茶を

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一人が一つの星とは限らない、これは自分にとってとても新鮮なできごとだった。「ふたりの」終わり方もあるんだね。/映画「異人たち」