『八月の光』冒頭読み比べ

道端に座り、荷馬車が丘をのぼってくるのを見ながら、リーナは思う。〈あたし、アラバマから来たんだ。すごく遠くまで。アラバマからずっと歩いてやってきたんだ。すごく遠くまで〉

(諏訪部浩一訳/岩波文庫)


道ばたに坐り込み、馬車が坂道を登って近づいてくるのを見ながら、リーナは思う。『あたしはアラバマからやってきた。遠くまで来たものね。はるばるアラバマから歩いてきた。ほんとに遠くまで来たものね』

(黒原敏行訳/光文社古典新訳文庫)


道端に坐りこんで、馬車が丘をこちらに登ってくるのを見まもりながら、リーナは考える、『あたしアラバマからやってきたんだわ。アラバマからずっと歩いて。ずいぶん遠くまで来たのねえ』。

(加島祥造訳/新潮文庫)


*フォークナー『八月の光』の訳読み比べ

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