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エニグマと天才数学者の秘密。映画『イミテーション・ゲーム』アメリカ、2014年

この映画は、第二次世界大戦中にドイツの暗号機エニグマを解読してイギリスの勝利に貢献したのに、その後は同性愛の罪で訴追された数学者アラン・チューリングの物語です。

主演は当時、BBCのドラマ『シャーロック』で、ものすごい人気になっていたベネディクト・カンバーバッチ。私も娘も大好きだったので、映画もかなり期待して見に行きました。ちなみに、暗号機のエニグマって、映画でも出てきましたが、こんな感じだったようです。

エニグマが当時「世界最強」だったのは、暗号のパターン数が10人の人間が1日24時間計算しても、全ての組合せを調べ終わるまでに2000万年かかるものだったからとか。この暗号解読のために、チェスのイギリスチャンピオンや言語学者など6人が集められて、MI6のしたで暗号文を分析するチームを結成します。

なんとか計算で暗号の答えを見つけようとするチームメンバーに対し、チューリング博士は、一人で勝手に奇妙なマシンを作り始めます。これがコンピューターの元祖といわれている、暗号解読の計算機。現在では高く評価されているチューリング博士ですが、第二次大戦中のこの時期には、まだ誰もコンピューターなんて知りません。当然、チームで孤立します。

でも、小さいころからずっと周囲から孤立してきたチューリング博士。最初から、共同作業をするつもりがありません。、チームは崩壊寸前。そんな中で、チューリングとチームを救ったのは、クロスワードパズルの天才ジョーンでした。キーラ・ナイトレイ、ステキです。

数学者、暗号研究者、計算機科学者、哲学者と才能あふれるチューリング博士。でも、同性愛は当時のイギリスでは犯罪。バレたらチューリング博士は犯罪者になってしまいます。チューリング博士の苦悩が、この映画のみどころの一つです。

映画では、彼が無事に計算機を発明して、ドイツの暗号を解読することに成功します。でも、ここで終わりではありません。全ての暗号を解読をしてイギリス軍を助けてしまったら、ドイツに暗号を解読したことがバレてしまいます。彼らがエニグマを使うのをやめて、全く別の暗号機を使い始めたら、作戦は水の泡。

というわけで、暗号を解読したということがバレない程度にイギリス軍を助けて、ナチスがギリギリ負けるように仕向けます。戦争に勝つために、見方の犠牲をある程度許容する作戦。きついです。犠牲者の中には、暗号解読チームの家族もいました。辛い決断ですが、戦争に勝つって、こういうことだという現実をつきつけてくる映画です。

いつも、天才が登場する映画を見ておもうのは、一般人と天才の間をとりもつコミュニケーターが必要だということです。これは、現実社会も同じで、有能な人の「ふつう」と一般人の「ふつう」が違いすぎると、大概、多数のふつうの意見が通ってしまって、計画は失敗するし、天才の才能は潰されてしまいます。

あと、通訳できるのに、天才に嫉妬するコミュニケーターが登場するというのも定石でしょうか。モーツァルトの映画のサリエリみたいに。でも、この映画はキーラ・ナイトレイが女性として、チューリング博士を守る役割でちょっとホッとできました。

邦題:イミテーション・ゲーム(原題:The Imitation Game)
監督:モルテン・ティルドゥム
原作:アンドリュー・ホッジス『Alan Turing: The Enigma』
主演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイほか。
制作:アメリカ(2014)114分



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