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こんな学生時代を送りたかった。『クララ白書』『アグネス白書』氷室冴子


『クララ白書』、そして『クララ白書ぱーとⅡ』は、氷室冴子さんの出世作。主人公の桂木しのぶ(しーの)は、明るくて素直でちょっとおっちょこちょいだけれど憎めない性格で学園の人気者。地元のミッションスクールに通っていただけど、中学3年になって、急に家庭の事情で寄宿舎生活をすることになり、生活が一変します。

まず、直面したのがクララ舎の入舎テスト、食料庫破り。厳しいミッションスクールで、それアリ???という驚きもさることながら、同じく中学3年になって転校してきた不思議なマッキーや菊花とチャレンジするはめになります。見知らぬ3人のミッション・インポッシブルは果たして成功するのか!? わくわく、どきどきです。

田舎の小説好きだった私は、まず北海道に女子校、ミッションスクール、そして寄宿舎ってところだけでドキドキしてしまったし、先生ではなくシスターってところもワクワク。舞台になった札幌も、どんなところだろうと想像して楽しかったです。

一応、氷室冴子さんの母校、藤女子大学と同じ敷地にある、藤女子中学・高校がモデルらしいとの情報は、大学生になって知りました。そして、卒業生には中島みゆきさんもいるのだとか。でも、そういう現実よりも、架空の登場人物がみんな魅力的で、本当に楽しそうで。こんな学生生活を送りたかったゾ!という、人類すべての欲望を叶えてくれる、すばらしい作品です。

無事、食料庫破りは完了し、仲良くなったマッキーや菊花の微妙な時期の転校&入舎の原因も、その後、判明していくというわけ。この仲良し3人組に、素敵な上級生のお姉さまたちや、かわいい(?)後輩たちが加わると、生徒会に学園祭、クリスマスバザー、友達の初恋と楽しくもドタバタな学園モノができあがります。

氷室さんの軽快なコメディ・タッチと、女子校ならではのエピソードが絶妙のコンビネーションで楽しめる永遠の名作。結婚してから夫に読ませたけど、超絶ハマったし、娘も大・大・大好きな作品です。

『アグネス白書』『アグネス白書ぱーとⅡ』は、続編になる高校生ライフ。アグネス舎生になったしーのに、新たな同居人がやってきて、しかも彼女がトラブルメーカー。全国模試ベスト50に入るようなウルトラ秀才が、寄宿舎中にトラブルの嵐を呼んで...…というお話。

高校生になって、ちょっぴり大人になった彼女たちには、それぞれ恋の悩みもやってきます。高校生編では、しーのたちの成長も楽しめるのがいいですね。私の真っ暗だった中学・高校時代の恩人は、明るく楽しい氷室さんの作品でした。

『クララ白書』のシリーズは、その後、同じ集英社からハードカバー化されています。タイトルはSaeko's early collection。普通は、ハードカバーから文庫になるものですが、時代の先駆けだった氷室さんの作品の場合、逆なんですね。時代を感じさせる単語を、かなり手直ししてあります。

そして、その後は、『クララ白書』のイラストをかなり少女マンガっぽくして、コバルト文庫でも再版されてて、2度びっくり。でも、いつの時代の読者にも氷室さんの作品は読まれて欲しいので、娘も喜ぶような表紙になるのもありがたいです。

天気予報で、梅雨の情報が流れるようになると、氷室冴子さんの命日、6月6日が近づきます。


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