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実話ベースの映画ってのが信じられない。映画『LION 25年目のただいま』オーストラリア・アメリカ・イギリス、2016年。


何度かTwitterでおすすめされていたので、見てみました。意外に最近の映画でびっくり。もう少し、古い映画だと思っていました。そして、LIONというので単純にアフリカの映画だと思っていた。すみません。

ストーリーの舞台はインド。田舎で母と兄と妹と暮らしていたサルーが、兄の出稼ぎに無理やりついていき、駅ではぐれ、そのまま回送列車に乗ってカルカッタまで行ってしまいます。言葉も通じず、途方にくれてあちこちさまよう。ストリートチルドレンの子供たちと一緒にいて捕まりそうになったり、助けられたと思ったら人身売買みたいな人たちだったので、また逃げ出したり。偶然、自分をみつけてくれた人が警察につれていってくれて、福祉施設に入ったはいいけど、虐待といじめの温床みたいなところというインファナル・アフェア。

ところが、ここでサルーは、ものすごい幸運に恵まれる。里親を斡旋する団体が、サルーをオーストラリア人の里子に出してくれたのです。裕福な家庭に引き取られ、何不自由なく育つサルー。2年後には、弟がインドからもらわれてくきて、その後は、ちょっとサルーの家族も複雑になる。

あとから来た弟は施設で精神的に病んでいて、普通の生活ができずに里親を困らせてばかり。サルーは両親の愛情を一身に受けたいのに、両親の心配は壊れてしまった弟にばかり向けられる。そんなモヤモヤを抱えたサルーは、大学生になって、留学生たちと知り合い、自分以外のインド人と付き合ううちに昔の記憶を思い出し、自分のルーツを考えるようになります。

日常生活をそっちのけにして、それまで明るくいい子だったサルーの人間関係もかなり変わってしまいます。昔のインドの鉄道速度を計算して、グーグルアースで調べて、、、そして、とうとう記憶の中の故郷を見つけます。

これがフィクションだったら、すごいご都合主義っぽいなあと思うけれど、実話ベース。普通なら、インドの家族はとっくにどこかに引っ越していそうだけど、お母さんは息子が帰ってくるのを信じて引っ越ししなかったとか。「母の一念岩をも通す」そして、子供時代の記憶、しかも5才の記憶がこんなにはっきりしているものなのかと驚きます。

物語の最後で、養母が実は「子供のない夫婦」ではなく、「子どもを作らない夫婦」だったことを明かします。自分たちの子どもをつくっても、世の中はよくならない。それならば、今いる辛い環境の子どもを救おうという考えで。映画では、むしろここが一番の驚きだったかも。ニコール・キッドマンは、こういうクールで知的で、でも情熱ある母の役が似合う気がします。

世の中の人総てが結婚したり、子どもをつくったりする必要はないし、それを責める必要もない。自分のしたいようにすればいいし、うまく行かなくても、それもまた人生。私も子どもができないままだったら、きっとこの映画を見て元気になっていたと思う。

自分の幸せのためでなく、子供の幸せのために養子を迎える。うまくいくかどうかは神様しかわからない。でも、当人たちが満足できるなら、それはそれでオッケーなんだと思う。サルーが里親にめいっぱい愛されて欲しかったけど、もし彼が現状に満足していたら、インドの生みの親を探さなかったと思うし。里親とインドの両親の交友関係もできなかったろうし。

あと、娘と一緒に見たので、インドの状況とか見せることができてよかった。娘は「どうして子供が狙われるの?」、「男の子なのに危ないの?」(女の子のレイプは理解できる)と聞く度に、人身売買とか、臓器売買とか、そういうのが残ってる国があるんだよと説明できるから。文化や歴史もあるし、貧困の問題でもあるけど、買う方も罪悪感ないと教えると驚くみたい。

邦題:LION/ライオン〜25年目のただいま〜(原題:Lion)
監督:ガース・デイヴィス
原作:サルー・ブライアリールーク・デイヴィーズ
主演: デーヴ・パテール、ルーニー・マーラ、デビッド・ウェナム、ニコール・キッドマン
制作:オーストラリア・アメリカ・イギリス(2016年)


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