圧倒的に訴えかけてくる映画。『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』タイ、2018年
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圧倒的に訴えかけてくる映画。『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』タイ、2018年

映画館で見たかったのですが、都合がつかずに見逃していた作品。とうとう見ることができました。見る前は、大昔のおフランスのギャグ映画『ザ・カンニング IQ=0』のタイ版を想像していたのですが、真逆でした。

主人公のリンは、とても勉強のできる女の子。両親が離婚して、教師の父親と暮らしているようですが、父親は娘の才能を無駄にしたくなくて、自分の経済力以上の名門校に転校させます。娘は以前の学校で十分だと思っていたし、進学校は学費も交通費も高いので躊躇しますが、優秀な生徒が欲しい校長が奨学金を出してくれることになり、転校を決意します。

友達がいない学校で、初めて優しくしてくれた女の子グレース。すぐに彼女と仲良くなりますが、彼女は勉強が得意でなく、試験結果が悪いと演劇部の活動に参加できないとリンに泣きつき、勉強を教えてあげます。でも、やっぱり覚えの悪い彼女。リンはグレースに演劇をさせてあげたいばかりに、ついカンニングを手伝ってしまいます。彼女としては、たった一回だけの親切のつもりでした。

ところが、グレースのBFは大金持ちの息子パッド。彼らはリンに試験のカンニングを頼むばかりか、リンの父親も多くの親も名門校に入学するため賄賂を払っていることをリンに教えます。貧乏教師の真面目な父親しか知らなかったリンはショックを受けますが、逆に、彼らからお金をとってカンニングの手伝いをすることで、父に楽をさせてあげようと決意します。それが世間の常識なら、自分はそれを利用して稼いで何が悪い、というように。

リンの勉強とお金稼ぎが順調にいっていたかに見えた頃、もうひとりの勉強ができる生徒が登場します。母子家庭で苦労人の真面目なバンク。彼はパッドたちのカンニングを学校に報告し、そのせいでリンは奨学金をもらえなくなり、留学のチャンスも失ってしまいました。

一度はグレースたちから離れたリン。でも、高校卒業が間近に迫ったパッドは、留学を両親から迫られ、もう一度グレースを巻き込んで、リンにアメリカ留学のための国際テストSTICのカンニングを頼みます。パッドは汚い手をつかってバンクも引き込み、リンは国境を超えた試験開始の時差を利用してのカンニングを計画します。

オーストラリアのシドニーで試験を受けたリンとバンクが、どうやってタイのパッドやグレースたちに答えを教えるのか。その方法は映画を見てからのお楽しみですが、カンニングがうまくいくかどうか、ばれるかばれないかのハラハラどきどきはアクション映画のようです。

この国際的なカンニングのニュースは、確か中国で聞いたことがあるような気がしましたが、映画の解説を読むと、やはり、中国でのカンニングの実話をベースにタイ風にアレンジした映画だそうです。さすが、科挙とカンニングの長い伝統ある中国。

映画の中では、バンクの家の貧しさやパッドの家の圧倒的な経済格差にクラクラしますし、決して悪い子じゃないグレースが、BFのパッドをいつも善意で擁護してしまうことも歯がゆいですが、一番驚くのはグレースを含め、お金持ちの学生たちがカンニングを全く悪いことだと思っていない感性です。自分たちは金を払い、貧乏なリンやバンクはお金を得る。それでWin-Winだと。

一番衝撃的だったのは、真面目な石頭だったバンクが、パッドの悪巧みにハメられて留学チャンスを逃した挙げ句、どうせ負け犬人生ならトコトン金持ちの学生をカモにして、カンニングで稼いで何が悪いと考えるようになってしまう展開です。

リンは、留学のチャンスをもう一度手にしたい一心で、パッドたちの提案に乗りますが、バンクの変わりようと、他人を犠牲にしてなんとも思わないパッドたちを見て耐えられなくなります。彼女の側に、不器用でも優しく真面目な父親がいてくれたことは幸いでした。物語の結末は、ぜひ映画を見て確かめて下さい。超おすすめです。

邦題:バッド・ジーニアス 危険な天才たち(英題:Bad Genius)
監督: ナタウット・プーンピリヤ
主演:チュティモン・ジョンジャルーンスックジン、チャーノン・サンティナトーンクン、ティーラドン・スパジラ・マリクン、イッサヤー・ホースワン
制作:タイ(2017年)130分
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2020年夏からnote練習中。信州生まれ。現在、大阪でお仕事中。一時、広島。神戸、松山での仕事経験あり。いつも、次に旅したい場所を探しています。おもしろい本やマンガ、映画をコメント欄などでおすすめしていただけると大喜びします。