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話し手の魅力が映像の魅力。映画『カツベン!』周防正行監督、2019年


久しぶりの周防正行監督の映画。
一番思い出深いのは『shall we ダンス?』。遠距離恋愛と職場ハラスメントに耐えていた辛い時期、私を支えてくれた映画だから。

今回の『カツベン!』も期待を裏切らず、楽しくておかしくて、ハッピーになれる映画でした。明治末期から大正ぐらいにかけてのお話。当時の映画は音がなくて、映像の横で弁士がしゃべる形式。映画の人気は弁士の人気に比例するので、映画館同士の競争では引き抜きなんかもあったりする。

映画館のある都会と違って、田舎には映画が巡回してくる。地元の悪ガキな子供達は、お金がないので勝手知ったる小屋にもぐりこんで、映画をみたりもできてしまう。そんな、映画好きで活動映画の弁士になりたい青年と、女優になりたい娘さんをめぐるレトロなコメディ。

娘や夫と一緒に行って正解。主人公カップルもかわいいけど、井上真央があんな素敵な女優さんだったとは。かっこいい悪女、大正モダンガール。とっても似合ってる。いいなあ。

ちょっとドタバタが過ぎるので、1時間半くらいにまとめたらテンポが良い気もするけれど。でも、『ニュー・シネマ・パラダイス』へのオマージュっぽいテープの継ぎ接ぎシーンやラストはいい感じでした。世の中は変わっていくし、流行りのものは廃れるし。でも、いいものはいいし、映画はステキ。

映画の余韻が醒めやらぬうちに、娘と『shall we ダンス?』を見ました。これがまあ、今から見るとものすごく時代をものすごく感じさせる映画でびっくり。20年も昔なんですね。映画は小説よりも時代遅れになってしまう速度が速いって聞いていたけれど、それを実感してしまいました。いろんなものが昭和っぽい。本当は平成の映画なのに。

残業のない会社。郊外の庭付き一戸建て。専業主婦。仕事と同じくらい力を入れられる趣味。ノスタルジーを感じるというより、別世界みたいで気持ち悪いくらい。この20年の変化って一体なんだったんだろう?

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題名:カツベン!
監督:周防正行
出演者:成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾
制作:日本(126分)


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