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伊藤馨の舞台照明

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僕の照明デザインについての備忘録というか、デザインの仕方についてのマガジン。果たして、ちゃんと完結できるのか。
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#舞台照明

舞台照明のデザインのこと その1 そもそもデザインってなんだよ

舞台照明のデザインのこと その1 そもそもデザインってなんだよ

はじめにFacebookで照明のデザインの教本みたいなのってないんですか?
と聞かれて、不勉強なのもあり、Francis ReidのStage Lighting HandBookしか、思いつかなかった。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00G24TFR2/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
この本には、照明のデザインと

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舞台照明のデザインのこと その2 このnoteの概要

舞台照明のデザインのこと その2 このnoteの概要

時間と空間にトラップをしかけること実際に照明をデザインしていくという時に、僕がすることは作品の中で重要だと考える場面をピックアップする。これはある舞台上の状態での止まった画を抜き出す作業である。
ある瞬間のある状態を印象付けたいと考える場所を選んでいくことを中心にしている。

ある場面の俳優やダンサーの動きに合わせて照明が変化していくだけでなく、先に必要な場所に必要な明かりをつけていようなことが必

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舞台照明のデザインのこと その3 デザインには強度がいること

舞台照明のデザインのこと その3 デザインには強度がいること

前回の終わりに具体的なデザインについては、
明かりの角度について
明かりの色について
明かりの明るさについて
シーンという概念について
キューという概念について
シーンとキューの組み合わせについて
照明をデザインしていくためのフックについて
最小限の照明について

というような章立てで書いていこうと思う。

とか、書いていたけど、超重要なことを説明していなかった。

それは、デザインの強度について

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舞台照明デザインのこと その4 デザインおける角度についての前提

舞台照明デザインのこと その4 デザインおける角度についての前提

前回までのおさらい舞台照明のデザインには、強度が必要という話をした。
この点をもう少し追記しておく。
この強度というのは単に明るさとか派手さみたいな意味ではなく、デザインそのものが持つ強さ=作品に対してマッチしているかどうか。
が、一番大事だ。

おい、前回「美」とか言ってたじゃねえか。とか言わない。
舞台の世界ではその意味がどうあるかに関わらず、「調和」による「美」が貴ばれる。この「調和」という

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舞台照明デザインのこと その5 角度についての具体例

舞台照明デザインのこと その5 角度についての具体例

まず、このnoteについての前提条件を説明していなかったので、今更ながら、追記したいと思う。

このnoteのマガジンについて このnoteのマガジンはすでにお気づきの方もいると思うけれども、舞台照明のデザインがこれを読むと出来る。というような「できるシリーズ」ではなく、僕がデザインの型や様式としている概念や実際を文字化しているものである。しかも、舞台照明(演劇、ダンス)をデザインするときの僕が思

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舞台照明デザインのこと その6 角度だけでデザインする

舞台照明デザインのこと その6 角度だけでデザインする

はじめに前回は、基本となる四方向の照明の見え方についてのことを書いた。

また、前、後ろ、下手(向かって左)、上手(向かって右)の照明を付けた状態(トップ画)がスタンダードだと書いた。これは本当でもある部分が多いが嘘でもある。

照明を点けるという意味でのスタンダードであって、ここからどうするか。というのがデザインの話になってくる。
この角度の項では、明るさの違いとか色を変えるとか、それによる見え

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舞台照明デザインのこと その7 角度の拡がり 基礎からの応用

舞台照明デザインのこと その7 角度の拡がり 基礎からの応用

前回までの流れ4つの方向からの照明を使い、それをどう使うのか。
というところまで話をした。

また、ここから読む人のためにも繰り返しになるが、ここで書いているのは、僕個人、つまり伊藤馨の照明のデザインの仕方を書いている。
おそらく、人の数だけデザインの仕方はあり、その人が大事にしているものがある。そして、それは尊重している。

デザインの強度という言葉が何度も繰り返し出てくる。これは、デザインが持

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舞台照明デザインのこと その8 真上(トップ)とは、またデザインの入り口

舞台照明デザインのこと その8 真上(トップ)とは、またデザインの入り口

はじめに前回予告した通り、真上からの明かり(通称トップ)についての話をする。
それと、文字数に余裕があれば、前回までの説明をしていた角度の話を更に突き詰めていきたいと思う。この角度の話はとても長い。
では、今回もよろしくお願い。

サスって、言葉がややこしいんだよな唐突に愚痴からスタートしましたが、よく舞台の仕事で「サス」って言葉を聞くと思う。なんなら照明さんも「サス明かり」とか言ったりする。

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舞台照明デザインのこと その9 舞台表現ということ。からの方向性(ディレクション)とデザインのこと

舞台照明デザインのこと その9 舞台表現ということ。からの方向性(ディレクション)とデザインのこと

時空間芸術である舞台表現僕の考え方としては、

まず、前提として、演劇やダンスといった舞台表現は時空間芸術である。

時間と空間を共にしたものにしか味わうことが出来ない芸術。
じゃ、映像で撮ったものは違うのか。
僕の答えは違います。
だ。
どういうことかと言うと、映像(2次元=2D)は、時間と空間をあらかじめ切り取ったものだと言うこと。どんなに精緻な作品であっても、時空間芸術とは呼べない。
映像で

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舞台照明デザインのこと その10 では、少し大きめの劇場に置き換えて考えてみようのこと

舞台照明デザインのこと その10 では、少し大きめの劇場に置き換えて考えてみようのこと

はじめに前回までで、舞台照明の基本となる方向性についての話をした。
ただ、これは
「舞台上にあるとされる物体に対してどういう方向から照明を当てていくのか。」
までにしかなっていない。実際は劇場という機構を使って、舞台照明はなされるものだ。

劇場に当てはめてみようという、わけで今回は実際に劇場においては、どういう照明の位置関係になるんだろう。ということを説明していこうと思う。

今回モデルとしてい

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舞台照明デザインのこと その11 人間の眼と舞台照明

舞台照明デザインのこと その11 人間の眼と舞台照明

ここから先のことについて前回までで、方向についてのことと舞台での名称とかを整理した。
方向に関しての印象とか、具体的な使い方については、更にこの先に行かないと説明が出来ないことなので、まずはいろんな方向や角度があって、それを駆使する。
っていうことと、それらは単純化して覚えておくと便利ですよ。って、ことまで進んだ。

次回以降は、人間の眼というものがどういうように機能するのか。
と言うことを切り口

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舞台照明デザインのこと その12 眼に入る光には二種類あること

舞台照明デザインのこと その12 眼に入る光には二種類あること

しばらく時間が空いた理由があります。
お盆休みでした。
嘘です。

ちょっと今回のテーマが大変なので、苦戦してた。

操らなくてはならないのは二つの光二つの光とは、
透過光と反射光

透過光は、物体を通過して直接眼に入ってくる光

反射光は、物体に反射して眼に入ってくる光

照明で操らなくてはならないのは、主に反射光だ
照明って言うくらいなのだから、透過光なんじゃないの。
って、思うかもしれない。

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舞台照明デザインのこと その13 「明るさ」とは何か

舞台照明デザインのこと その13 「明るさ」とは何か

明るさについて人間の感覚器は、「差」で様々なことを判断する。
視覚も暗いと明るいの「差」で物事を判断する。

ただし、暗いにも下限があり、ある程度の光の量が少なくなると見えなくなる。

同様に、明るい側にもある一定の明るさを超えると、眩しくて見られなくなり、最終的には見えなくなる。

これが明るさをコントロールしていく時の幅(レンジ)になる。
幅の中で、明るさを操作しいてく。

また、舞台全体の中

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舞台照明デザインのこと その14 カラーについて

舞台照明デザインのこと その14 カラーについて

ちょっとふりかえり前回、観客の視点(観測点)からの画面の明度についての話をした。
照明のデザインによくある誤解として、
点灯している照明がどれくらい明るいか
と、
その箇所が明るいかは同じものではない
ということ。
狙った箇所の明度をコントロールする必要がある。

新しい要素色相
つまり、カラー
カラーの説明は、難しい。
日常的に我々が使っているのは、反射光の色についての用語であり、透過光の名前で

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