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舞台照明デザインのこと その13 「明るさ」とは何か

明るさについて

人間の感覚器は、「差」で様々なことを判断する。
視覚も暗いと明るいの「差」で物事を判断する。

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ただし、暗いにも下限があり、ある程度の光の量が少なくなると見えなくなる。

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同様に、明るい側にもある一定の明るさを超えると、眩しくて見られなくなり、最終的には見えなくなる。

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これが明るさをコントロールしていく時の幅(レンジ)になる。
幅の中で、明るさを操作しいてく。

また、舞台全体の中での明暗差も重要。
舞台上の全体の中で明るい場所、暗い場所を作ったり、一定の明るさを確保したりもする。

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どの角度から当てるかの次の話

今まで話してきた舞台照明の話は、物体に対して、どのように当てるか。
という話をしてきたが、ここからは観客の視界全体に対して、どのようにアクセスしていくのかという内容に拡大していくことになる。

舞台空間において、観客は自分の好きなところを観ることが出来る。
また、空間の中でも見える範囲の中で明るいところに目が向く(※)という話は前に話した通りだ。
※周りくどい言い方だけれど、観客はあらかじめ見ている方向もしくは視界の中でしか、明るさを体感出来ないし、見ることが出来ない。このことも、また後で話すかもしれない。

西洋絵画

僕の舞台照明というものの概念や基礎に当たる部分は、西洋絵画を基にしている。
明暗差や彩度、色相というものを操って、視覚を操作すること、もしくは視界全体という平面としての画面を操作することは、絵画の世界で先に行われている。
視界の画面全体の中で、明るい部分(明度が高い部分)には、眼が行きやすく、暗い部分(明度が低い部分)には、眼が行きにくい。
これらの明るさの差(明度の差)は、西洋絵画においてルネサンス期以降に顕著に表れるイマージナリーライト(想像上の光)が先行して存在している。

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絵の場合は、画面の中で明度の高い場所を作ることになるが、舞台照明の場合は、画面全体の中で注目させたい場所の光量を多く、それ以外の光量を少なくすることで、観客の視界をコンロトロールする。

これが僕が考える舞台照明のデザインの要素の一つだ。

光の尺度

光についての物差しは、いくつかあり、光束(ルーメン)、照度(ルクス)、光度(カンデラ)と、いくつかあるがここでは扱わない。ある光源を使い、画面の中の明るさを確保するという意味で言えば、輝度(カンデラ毎㎡)というのが近い。

ここでは、その詳細を説明をしない。
理由は、専門的すぎることと、ここで扱う内容としては専門的過ぎるからだ。

簡単にまとまっているサイトを紹介する。
https://lighting.gs-yuasa.com/LED/glossary/

一番大事なのは、観客から見た画面の「明度」

光量の制御は、使用する照明器具の明るさの光量の調整か、ターゲットとなる空間(演者や場所)に対して向かっている台数などで行うことになる。かなり、曖昧な書き方をしているが単純に狙った場所を明るくするという方法論については、工夫が大きく出来るところでもある。どういうことかと言うと、単純に照明器具が多く点いていたり、明るくなっていたり、ということだけでは調整が出来ることではない。
舞台照明のデザインにおいて重要なのは、「画面の中での明度」だ。
観客の目を引くほどの「明度」が無ければ、観客はフォーカスを認知出来ない。

明るさ≠明度

舞台全体が明るく、更にある一定の場所が明るい。

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という状態があったとしても、その明るさの差が「画面全体の明度の差」として、認知されなかった場合には、舞台照明のデザイン上の差として認知されていない。ということになる。
視覚の刺激として、「差」を認知できるようになって初めて「明るさ」を観客が体感できる。

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人間の視覚という感覚器は、精度が高く順応性も高い。また、弾力性も高いため、視界の中の明度の差を吸収してしまうことがあり、つまり、明るいということが認知出来ないということが起きてしまう。

遮光された真っ黒い四角い空間(ブラックボックス)の中において、一定の光量が空間全体にあることを前提とししたとき、一部が物理的に明度が高いものがあったとき、同じ量の光が当たっていた場合に、そこの明度は高く見える。

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つまり、対象となる空間のうちの選んだエリアの明度という意味では、物体として明度の高いものがあれば、光量が一定であっても、そこが明るく見えるということだ。

空間の明るさ≒観客が見える面の明るさ(輝度)

空間の明るさとは、空間のうち観客から見た点(観測点)からの輝度であるとも言える。
人間の眼という器官が捉えられるのは、その観測点から見える見た目の明るさの差でしかない。この輝度(面の明るさ)を支配することが、舞台照明デザインの中でも重要なことだ。
それらを調整するために必要なのが、照明をどの角度から当てるかということだ。

まだまだ続く

明るさについての概念についてはここまでにしようと思う。
実際のデザインを当てはめながら、また詳説する。

では、また次回。


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