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 イノセント 著:島本理生

 長い長い物語だった。徳永比紗也と真田幸弘の恋愛模様と如月歓と言う神父の話しが交互に織り交ぜられ、最後は謎が溶け合うようにハッピーエンドで終わった。

 比紗也は震災で夫を亡くしたシングルマザーだ。芳紀の子供の紡を抱えて単身で上京しジェーンと言うサザンの曲しか流さないゲイの店長の下で美容師として働いていた。

 函館の旅行の頃にはまだ震災は起きてなく、真田と旅先で出会い、食事を共にした。妊婦だと言うので安産祈願にと教会でロザリオを買い与えた真田。それが目印になって東京でばったり再会する。シングルマザーになっていて夫が死んだ事も知らないまま、真田は比紗也に恋をした。紡も預かってできる事はしてやろうと一月余りの同居生活を送る。

 比紗也には血の繋がって無い義父が居て、比紗也を当てにして付き纏っていたので避難先に選ばれたのが真田の家だった。

 しかし、一月(ひとつき)経って帰ってみると義父はまた付き纏って来た。比紗也を守ったのは如月歓だった。教会に身を寄せ義父に比紗也に近付かないように約束させ、比紗也は函館の教会に避難した。歓は比紗也に回転ドアで指を挟まれそうになったのを傘で止め、危ない所を助けて貰った縁があった。歓は神父を辞めたとしても比紗也は守り切ると決意して匿うのだった。

 この長い話しは所々休憩はあるものの、主人公が入れ替わり立ち替わり、違う人の言葉で外堀を埋めるように書き連ねられていた。そこが幾分読み難くもあったが読後の満足感はたっぷりの内容だった。

 島本理生さんの著作は情景描写や心理描写が目立つがこう言う脚本っぽい書き方もできるのだなと感心している。話しの繋ぎ目が幾重にも重なって重厚な物語になっていた。

 比紗也の母、紗也は夜の世界で働いていて比紗也を置いて蒸発してしまった。紗也に入れ込んだ客が義父となって登場する。まぁ、また機能不全家庭の主人公ではあったのだが、心の襞をトラウマのように描写する悲壮感は今回の比紗也には無い。逆に奔放にセックスをしてしまう魅力的な容姿の主人公となっていた。

 ラストはほっこりと安心して終わった。比紗也と真田に幸あれ。


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