東京百景 著:又吉直樹
3回目読了。どうして3回も読んだか、それは二、三ページで一区切りしてくれる本だったからだ。2回目読んだ時はこんなのあったっけと忘れてる描写もあったが3回目ともなるとほとんどを覚えていた。
私は池尻大橋の小さな部屋が好きだ。ほとんど先輩後輩とのエピソードが多い中、これは男女の恋を描いてる唯一と言っていいエピソードだった。まるで劇場を読んでいる時みたいな記憶が蘇る。というか劇場はこのエピソードを膨らませて書かれたんじゃないかというくらい瓜二つの物語だった。
冒頭、はじめにで一つでも刺さる風景があったならなお嬉しいと書かれているが、きちんと刺さった風景が池尻大橋の小さな部屋だった。
私は又吉さんの文章が好きなのか嫌いなのかわからない。けど、人物として興味を抱いている。だから又吉さんが書いたのかと知ると、取り寄せて一通り読んでみるのだ。又吉さんは謙虚な方である。自意識の捨て場所と言う題のエピソードもあるが恥ずかしがりな又吉さんの周到な頭の中の言い訳が面白い。なんの変哲もない日常の切り取り方を見ている。最後の風景で相方の綾部さんの話が出てくるが、綾部さんに求められる即効性のあるネタでは無く、自立して自分のネタを書こうとした動機づけが東京百景になったと書いてある。読後、心地良い疲労感を覚えているのは私だけじゃないだろうと思う。
火花を読んだ時もそうだった。あの又吉さんが本を書いたといの一番に買って読んだのだ。その頃は私の読書歴も浅く、頼りないものだったのだが、それから何年経っただろう。随分いろんな本を読んだし、芥川直木賞に本屋大賞を追っかけて読んでいる。けれど、又吉さんを読んでしまうのは又吉さんが尋常じゃないくらい本が好きで読書家だからだ。そんな人への敬意を表すような素ぶりで又吉さんを読んで来た。自分のわからない事にたくさん触れて来てるだろうと一番に思える人だから読んでみる価値があると思えるのだ。
又吉さんのお母さんに東京タワーを見せてあげたかったと言う一節を拝借し、トップ画像は東京タワーにしてみた。中学生の時近くまで行ったのに併設されてる水族館に行き、登らなかった東京タワー。登っとくんだったな。中学生の時、修学旅行を同じ班で回った人に謝罪したい。
以上