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雑多な怪談の話

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雑多な怪談話を入れます 写真は https://www.pakutaso.com/20170603152post-11830.html を利用しています
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#三題噺

SS 人類の失火【チャッカマン&魔物&法定速度】三題話枠

「魔物? なんだその通報は? 」  パトカーの中で同僚が不機嫌そうな声を出す。火事で警察に連絡が来た、消防ではなく警察だから事件性があると判断して、巡回中の俺たちが呼び出される。 「魔物がいるそうだ、精神的な問題かな? 」  幻覚や幻聴で炎が見える場合もある。住人が見えているモノは存在しなくても本人があると信じれば存在している。認知は通報した本人次第だ。  家賃が安そうな二階建ての古いアパートに到着する。郵便受けは半分くらいは壊れていた。人が住んでいるのだろうか? 「○

SS 甘い恋人【アーモンド&バズる&数独】三題話枠

「マルチグレインパンよ」  アーモンドの臭いがする、彼女はお菓子作りが楽しいのか、やたらと俺に試食させる。太ってきた。なんか虫さされなのか肌が痒い、腕をこすってると彼女がアーモンドケーキを切り分ける。 「はい、あーんして」 「自分で食べるよ」  数独のパズルを置いて自分で食べる。最近は専用の数独端末があるので無限にできるので重宝している。ケーキを食べながら甘みと苦味のバランスがいいのか口の中で香りが広がる。鼻に甘くアーモンド臭が残る。 「おいしいよ」 「ありがとう」

SS 遠くの太鼓【音楽理論&顕微鏡&反面教師】三題話枠

「なにか聞こえるんですね? 」  先生はやや大きな声で診察を始めた、俺は耳鳴りがすると訴えて耳鼻咽喉科で調べたが異常はない。次に紹介された精神科の医者は 「幻聴の可能性もありますので、軽い薬を出します」  俺は薬を飲んで改善すると信じていた。 xxx 「プロデューサー、耳鳴りは大丈夫ですか? 」 「薬をもらったよ……」  アシスタントが足早に去る、俺は打ち合わせを思い出したが気分が乗らない。耳なりがとまらない、いや何か言葉が聞こえる気がする。あの日からだ、あの女と面接し

SS 冥婚【公用語&男女平等&石】三題話枠

「公用語は北京語だけど、日本語や英語も通じるの」  妻は中国の生まれだ。里帰りで実家に戻りたいので、一緒に来てくれと頼まれた。有給を使い大陸へ旅行に行く。 「今でも男女平等じゃないのよ……」  妻は愚痴をこぼす、それは日本でも変わらない。平等と主張する世界には平等が無い。その皮肉に僕は苦笑いをする。 「干得好」  親戚は妻をもてなすが日本人の私には抵抗がまだある。北粛省の山深いこの地域は、古い風習が残っていて日本人は好まれない。覚悟をしていたので平気だ、それでも敵意は向け

SS 恋の幽霊 【行ったり来たり&将棋倒し&応募】三題話枠

「この小説を応募するの」  柏原三咲は、にっこりと笑うとかわいい、俺が試し読みをする彼女の小説は最近の流行なのか恋物語。クラスで出会った学年で一番かわいい女の子が、隣に住んでいるのは奇跡に感じる、小説が好きな俺は彼女の小説の感想を求められた。 「出だしから面白いよ」 「ありがとう」  幸せそうに笑う彼女は、不幸が訪れるとは思えない。俺と彼女の関係は、彼女が書いた小説と同じ、普通の男子高校生と頭が良いヒロイン、だったらよかったが現実は違う。親友の恋人だ。共通点は普通の男子高

SS 花魁淵 【ブックエンド&リニューアル&急ブレーキ】三題噺

暗い道を車で飛ばす。俺は逃げたい。リニューアルしたばかりの車は調子が良いのか新品のように走る。 「俺は関係ない、俺のせいじゃない」 彼女は、俺と別れたがっていた。俺はつなぎ止めようと必死だ。いいクルマを買って見せた。中古だがメンテした車に彼女を乗せる。そんな事じゃ何も変わらない。彼女から別れの言葉。哀願して怒って激怒して俺は彼女の首をしめた。彼女の死体を乗せて俺は車を走らせる。 「別れるなんて言うから……」 死体を捨てる場所を探す。そうだ深い淵がある。旧道に入ると江戸

SS つまった排水口【胸&月曜日&排水口】三題噺

「あんた、速く仕事に行きなよ」 寝ている俺を妻が蹴飛ばす。尻をさすりながら俺は起き上がる。俺はビルの管理と警備している。結婚するんじゃなかった。子供は居ない。妻は俺の薄給をなじる。離婚の事を切り出すと妻は怒り狂う。自分では働きたく無いと言う。めんどくさい状態だ。 今日は昼勤務で出勤すると苦情が来ていた。 「ここですか?」 排水口を俺は見る。だいたい詰まる場合は掃除していない場合が多い。特に毛がたまる場合がつまりやすい。 ビル管理で俺はトイレの苦情を受ける時もある。業者に頼

SS 暗い部屋【不動産&甲高い&おちこぼれ】三題噺

「この部屋です」 俺は客に部屋を案内する。不動産屋に努めて一二年目だ。やばそうな部屋は勘でわかる。この部屋はやばい。暗くかび臭い部屋はクリーニングしても変わらない。客も部屋を見ながら首をふる。 「ダメでした」 内見した後は別の部屋にすると言われた。俺は上司に報告する。嫌な顔をしながら俺を見ている上司は成立させろよと文句を言う。無理を言うな。何年も空いている部屋だ。大家も諦めている。 元はなんでも無い部屋だ。受験生が借りた。彼は勉強ができない落ちこぼれで、時間の無駄になる。

SS 歪んだ顔【通信教育&計画通り&シンメトリー】三題噺チャレンジ

私はゆっくりと屋敷までの道を歩く。道沿いの樹木が並木道を作りシンメトリーのように美しい。私は左右対称が好きだ。今の時代は女が働くのが難しい。それでも勉強をして私は看護婦になれた。 「あなたが新しく来た看護婦さん?」 家政婦が私を見ながら目が頭から足まで何度も往復する。 「アリシアと言いますよろしくお願いします」 「本当にかわいいわね」 彼女はそれだけ言うと屋敷の部屋を案内する。古い屋敷はかなりくたびれているのか湿気も多く陰鬱だ。二階の一番奥まで行くとドアをノックする。返事

SS 実話_バリケード_落武者 #三題噺

※性的な表現があります。 夕方に車に彼女を乗せると、肝試しに行く。彼女は怖い話と廃墟探検が好きだ。俺は彼女に、これから行く場所の説明をした。 「実話怪談?」 彼女はうっすら笑いながら俺の顔を見る。もう二十年以上前だろうか怖い話を実話怪談として紹介する場合が多い。昔の怪談は番町皿屋敷や四谷怪談のように侍が居る世界を描いていた。 それと区別するように現代の怪奇現象を語る場合は実話怪談と呼ばれる事がある。ただ実際は、幽霊の話に太平洋戦争の頃の兵隊や武士の幽霊の話が紛れ込んで

SS 五十年前の事件の後始末 町内会&昔ながら&熱帯夜 三題噺チャレンジ

「暑いな……」「暑い言うなもっと暑くなる」「お前も暑いつうてるだろ」「やめろ暑いわ」ざわざわと十二畳くらいの場所で町内会が開かれる。もう年寄りしか居ない。「今年はやるのか」と誰かがつぶやく。 ぴたっと雑談が止まる。「もうそんな事はしなくていいだろう」町内会長がゆっくりと言葉にする。 皆がうなずく 「そうだな時代が違うからな」 「そもそもやらなくても何も起きないよ」 「でも何か起きたら……」 じわりと空気が重くなる。熱帯夜で体が冷めない。誰かが笑い出す。 「考えすぎだよ」

SS ガイアナ大地の少女 保護者&世界遺産&ヤモリ 三題噺チャレンジ

「これが世界遺産のガイアナ大地か」平原に巨大な台地がぽつんと見えている大地は標高が二千メートルはある。大地の上には貴重な動植物が存在する。私たちは密林を抜けてあの大地を目指す。 「どんな動物が居るか楽しみだ」現地スタッフと共にガイアナ大地の斜面をロッククライミングで登り切ると頂上に到達する。私たちは荷物を整理していると、一人の現地の少女が立っている。「あの娘は君たちの子供か?」現地スタッフに聞くと彼らは硬直して動けない。「マクンバ……」現地の言葉で悪魔だ。悪霊が居るというの

SS 蔵の中【高野豆腐&応仁の乱&七月】 三題噺チャレンジ

「この絵巻は応仁の乱を描いているの」僕の彼女は写真集を見せてくれる。鎧を着た武者が戦っている。「そうなんだ、こんな古い物も蔵にあるんだね」彼女は蔵の遺品を整理するために、貴重な物は写真で保存しようと考えていた。 僕も手伝うと不思議な絵巻物を見つける。鬼が人を食べている。鬼は人を大きな板の上で切り刻む、そして大釜で煮る様子が描かれていた。「こんな怖い絵もあるよ」彼女に見せると興味を持ったらしい。 大学で民俗学を専攻している彼女は、文献を調べるのが得意だし熱心だ。「これは面白