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SS 暗い部屋【不動産&甲高い&おちこぼれ】三題噺

「この部屋です」
俺は客に部屋を案内する。不動産屋に努めて一二年目だ。やばそうな部屋は勘でわかる。この部屋はやばい。暗くかび臭い部屋はクリーニングしても変わらない。客も部屋を見ながら首をふる。

「ダメでした」
内見した後は別の部屋にすると言われた。俺は上司に報告する。嫌な顔をしながら俺を見ている上司は成立させろよと文句を言う。無理を言うな。何年も空いている部屋だ。大家も諦めている。

元はなんでも無い部屋だ。受験生が借りた。彼は勉強ができない落ちこぼれで、時間の無駄になる。絶望した彼はその部屋で自殺した。定番だ。その後は何名か部屋を借りる。そして鏡に映る受験生を確認した。事故物件として認知された。

「この部屋ですか?」
四〇代くらいの女性が部屋を内見する。陰鬱な雰囲気の彼女は嬉しそうに見ている。
「ここにします!お願いします」
甲高い声で叫ぶ。心臓が飛び上がる。
「わ…わかりました、落ち着いて」
契約が成立をした。俺は喜ぶべきなのに違和感がある。

「例の部屋が契約成立しました」
俺は上司に報告する。意外そうな顔で俺を見ているが、親指を立てて成果を喜ぶ。お前は溶鉱炉に沈むターミネーターか。

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「例の部屋で住人が自殺したぞ」
上司が俺に調べてこいと言われる。俺は部屋に向かう。警察がまだ居た、知り合いの警官と話をする。

「首つり自殺ですね、この部屋は呪われてますねぇ」
冗談のように言うが俺は顔が真っ青になる。俺のせいだ。客に被害がある事を知りながら貸した。罪悪感で一杯だ。

部屋の掃除を頼む。また自分で内見をする。薄暗い部屋だ、人の気配がする。俺は反射でふりむいた。女と男が居る。幽霊だ。

「あーあなた不動産屋さん?やっと彼氏に会えたわ」
「いやーこんな所で会えるとは」

ニコニコと笑っている。俺はわけがわからず事情を聞くと幽霊達は、同級生だと言う。彼が死亡した事は判っていたがどこで死んだか調べていた。幽霊の彼と出会えた。これからもこの部屋で楽しく暮らすと言う。

「貯金を振り込んであります。部屋をたまに掃除してね」
俺は幽霊の住んでいる部屋を定期的にメンテナンスしている。

終わり

Ghosts of a man and woman laughing in a hotel room,dark,weird,kawaii,elaborate --v 4 


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