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SS 蔵の中【高野豆腐&応仁の乱&七月】 三題噺チャレンジ

「この絵巻は応仁の乱を描いているの」僕の彼女は写真集を見せてくれる。鎧を着た武者が戦っている。「そうなんだ、こんな古い物も蔵にあるんだね」彼女は蔵の遺品を整理するために、貴重な物は写真で保存しようと考えていた。

僕も手伝うと不思議な絵巻物を見つける。鬼が人を食べている。鬼は人を大きな板の上で切り刻む、そして大釜で煮る様子が描かれていた。「こんな怖い絵もあるよ」彼女に見せると興味を持ったらしい。

大学で民俗学を専攻している彼女は、文献を調べるのが得意だし熱心だ。「これは面白いわ、少し研究してみる」

七月はぐずぐずと梅雨の気配が残るのだが、今年は暑い。水不足になりそうだ。彼女はあれから、僕とは会わずに研究に没頭している。ひさしぶりに電話が鳴ると「来てくれない?」と家に呼ばれた。

僕に夕飯を食べさせたいと言う。僕は喜んで家に行くと、蔵に連れて行かれた。「この文献はとても面白いのよ、この鬼の絵に調理方法が載っているの」「調理なのに鬼の挿絵なの?」僕は少し笑った。彼女もフフフと笑うと「人には教えていけない内容なの」と秘密めかして言う。

「なんで?」と聞くが、彼女はそれには答えずに「ここに載っているのは高野豆腐の調理方法よ」スポンジの様な豆腐だ、最近は食べていない。「そうなんだ、昔は作り方を秘密にしてたのかな」名産なら他人が作れない方が特になる。

「滋養に富んだ豆腐は、戦でも使えるの、乾燥すれば携帯食料にもなる」なるほど戦場にはコンビニは無いだろう、携帯できるなら便利だ。

僕はその後に夕食をごちそうになると、お酒を飲まされる。ビールや焼酎やいろいろな酒だ、酩酊して眠ってしまう。目が覚めると、蔵の中で縛られていた。状況がわからずにキョロキョロすると、彼女は近寄る。

「昔は、肉食は厳禁だった。でもね豆腐として食べるなら問題は無いのよ」彼女は資料を見せると「ここに、高野豆腐って書いてあるけど実は、人肉の調理の仕方だったの」鬼の挿絵の意味を理解する。

彼女は優秀だ、でも優秀すぎた。彼女は資料を使って実現できるかテストをしたかった。「この蔵は資料だけではなくて、調理器具も全部あったわ」ギラギラとした目を僕に向ける。僕は裸電球の下で、彼女に高野豆腐にされる。きっと人肉はスポンジのような食感なのかなとぼんやり考えた。

終わり

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