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SS 恋の幽霊 【行ったり来たり&将棋倒し&応募】三題話枠
「この小説を応募するの」
柏原三咲は、にっこりと笑うとかわいい、俺が試し読みをする彼女の小説は最近の流行なのか恋物語。クラスで出会った学年で一番かわいい女の子が、隣に住んでいるのは奇跡に感じる、小説が好きな俺は彼女の小説の感想を求められた。
「出だしから面白いよ」
「ありがとう」
幸せそうに笑う彼女は、不幸が訪れるとは思えない。俺と彼女の関係は、彼女が書いた小説と同じ、普通の男子高校生と頭が良いヒロイン、だったらよかったが現実は違う。親友の恋人だ。共通点は普通の男子高校生の所だけ。
「じゃあ明日ね」
最後の別れの言葉は、いつもの挨拶。唐突な別れは、翌日に聞かされた。親友から彼女が死んだと教室で泣いていた。駅の階段で将棋倒しの巻き添えだった。
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遺影は白黒の中学生くらいの写真だ、まだ幼さが残る彼女の笑顔を見ていると泣けてくる。両親も泣いている、親友も泣いている、俺も泣いた。それでも毎日の生活を続けると、記憶は薄れる。居ないのが当たり前の日常になる。親友は新しい彼女を作っていた。
「失礼よね」
俺の隣で怒っている三咲は、親友を見ている。俺は教室の椅子に座りながら横で立っている幽霊の彼女をぼんやりと横目で見た。初めは驚いたが、親友は三咲の声が聞こえない。だから俺に彼女の事が見えると判ると幽霊に憑依された。
「だって一生懸命に書いたのに応募出来ないのは、くやしい」
三咲は、そんな理由で現世に居る。俺に指示を出して小説を書かせて、俺の名前で投稿サイトから応募した。自作を世の中に出したい強い想いがある。賞の発表の日は、俺の横で行ったり来たりしながら落ち着かない。俺はもう彼女に馴れていた。それどころか、四六時中一緒に居るから、もう家族同様だ。賞の発表の日が来た。
「当選したぜ」
「やった! 傑作を作ったからね」
嬉しそうに笑う三咲は、これで成仏するのか? と思ったが、それからずっと一緒だ。俺が一流の作家として成功できたのは、三咲の実力だった。今でも俺の横で笑っている。彼女は小説が発表されるだけで満足しているが、彼女には秘密で俺は遺書用の原稿を作っている。死ぬときに真実を残したい……
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