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SS つまった排水口【胸&月曜日&排水口】三題噺

「あんた、速く仕事に行きなよ」
寝ている俺を妻が蹴飛ばす。尻をさすりながら俺は起き上がる。俺はビルの管理と警備している。結婚するんじゃなかった。子供は居ない。妻は俺の薄給をなじる。離婚の事を切り出すと妻は怒り狂う。自分では働きたく無いと言う。めんどくさい状態だ。

今日は昼勤務で出勤すると苦情が来ていた。
「ここですか?」
排水口を俺は見る。だいたい詰まる場合は掃除していない場合が多い。特に毛がたまる場合がつまりやすい。

ビル管理で俺はトイレの苦情を受ける時もある。業者に頼む場合もあるが、簡単なものは自分で対応する。和式便所にパイプクリーナーを入れて放置した。毛が溶けて排水に問題が無くなる。

「トイレでそんなに毛が抜けるかな…」
「あのー、警察が来てます」
女性社員が声をかける。俺は玄関の刑事に話を聞かれた。手帳を見せながら、異常が無いか。不審者は居ないかを聞かれる。特に思い当たる事も無い。

「問題ありませんよ」
刑事は礼を言うと名刺を渡して、なにかあったら電話してくれと言われた。

「月曜日になるとつまるな」
休みが明けるとなぜか排水口がつまる。俺は業者を呼ぶことにした。業者から話を聞くと油脂が酷いと言われる。会社で油脂を使うわけがない。硫黄の臭いもあるので、残飯とか流しているのかと言われた。

「俺に言われてもなぁ、張り紙でもするか、便以外は流すなとか」
古いビルでセキュリティ面でも弱い。浮浪者でも侵入しているのか?俺は日曜日の巡回を増やす事にする。監視カメラもろくにない職場で、外れの現場だ。

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午前四時に巡回する。この時間帯は初めてだ。トイレに入ると、床が濡れている。トイレの電気をつける。血で真っ赤だ。足が震える。ふりむくと胸を突かれる。胸から血が溢れ出た。黒いマスクをした男が俺をナイフで刺した。

「警察だ、逮捕する」
俺は気が遠くなりながら刑事が発砲した音を聞いた。目が覚めると病院のベッドに居る。警察が後から説明してくれた。このビルには和式便器がある。解体した死体をそこに流していた。洋式では流すのが難しい。和式ならば水の勢いが違う。

妻を殺して、切り刻んで少量ずつ流していたらしい。冷蔵庫に妻の遺体の一部が見つかる。

「事件は解決です、業者からの話を聞いて、ビルを見張っていて正解でした」

俺は退院すると、妻を解体して流すアイデアを貰う事にした。

終わり


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