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SS ガイアナ大地の少女 保護者&世界遺産&ヤモリ 三題噺チャレンジ

「これが世界遺産のガイアナ大地か」平原に巨大な台地がぽつんと見えている大地は標高が二千メートルはある。大地の上には貴重な動植物が存在する。私たちは密林を抜けてあの大地を目指す。

「どんな動物が居るか楽しみだ」現地スタッフと共にガイアナ大地の斜面をロッククライミングで登り切ると頂上に到達する。私たちは荷物を整理していると、一人の現地の少女が立っている。「あの娘は君たちの子供か?」現地スタッフに聞くと彼らは硬直して動けない。「マクンバ……」現地の言葉で悪魔だ。悪霊が居るというのか?

私は少女に近寄るとその子は流暢に私の母国語を話す。いや彼女は口を動かしていない。頭の中で「来ない方がいいわ」と告げる。神話のように警告をする。「君は神様なのか?」頭をふると歩いて戻っていく。振り返るともう現地スタッフは消えていた。

崖下を見ると現地スタッフは岩肌をヤモリのように降りていく。残りの母国から派遣されたスタッフは数名しかいない。最低限の調査をして母国に戻るしかない。現地人からは悪魔の大地と恐れられていた。そして謎の少女が現れた。この謎を解明する事への使命に私は興奮を隠しきれない。

高い標高の高台のため生物相は古く貧弱だ。貴重な古代種の標本を採ると後は測量で終わる。その途中で大きな沼を見つける。天然アスファルト湖だ。私たちは慎重に調べようとした、しかし調査で使う木の板が壊れてしまう。私たち全員が沼に落ちた。調査員不足のせいだ。

アスファルト湖は落ちれば逃げられない、古代の生物を飲み込み保存するような恐ろしい沼だ。私以外の全員が沼に沈む。私も絶望感の中でサーベルタイガーのように保存されるのだろう。

頭が沈んだ所で声が聞こえた。「交代の時間よ」あの娘が私の手を取ると沼から引き上げてくれた。少女は生け贄として沼に投げられて、大地の保護者に命じられていた。大地に近づくなと警告をする役割だ。

私は大地から降りようとしたが出来ない。大地に囚われている。それからは大地に来る人間に警告を与えた。しかし調査装備も近代化すると沼に落ちる人も居ない。私の姿を見て声を届けても幻覚や幻聴として無視された。

今はもう太陽が赤色巨星で地球を飲み込む寸前だ。ガイアナ大地は数十億年で風化して何も残らない平原になっていた。人類は既に別惑星に移住しているらしい。私は誰に警告をすれば良いのだろう?せめての救いは、あの少女に、この苦痛を与えなくて良かった事だ。巨大な太陽を見ながら、この絶景を楽しめるのは私だけだ。

終わり

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