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自分がクレソン農家なら、どうやって売り上げを伸ばすのか?

こんばんは、ひらっちです。今日はちょっとヘビーな原稿と朝から格闘しておりました。大学の先生との対談原稿で、どちらかといえば得意な経済分野のお話だったのですが、音声からの書き起こしだったので、結局ほぼ丸一日かかってしまいました…。まあ、こんな日もありますね。内容的には色々と勉強になるお話が多かったので、まあ良しとします。

<いつものように簡単な自己紹介です>

僕は、地方国立大学を卒業後、ブラック企業で営業マンを経験。その後、フリーランスのライターとして独立開業、さらに数年後、新規就農して農業をスタートさせ、2020年現在、好きな仕事を選びながら人生を謳歌する「ほぼセミリタイア生活」を実践しているアラフォーです。

このnoteでは、特に20・30代のビジネスパーソンの皆さんに、僕の経験に基づいた「人生を楽しく過ごすための技術」を提供し、少しでもたくさんの方に「幸せな毎日」を掴んで欲しいと考えています。どうかお付き合いください。

■今日は、昨日いただいたコメントをテーマに書いてみようと思います

あらためまして、ひらっちです。今日は再び「農業」について書いてみたいと思います。

つい昨日のお話ですが、こんな原稿を書かせてもらいました。

これまでどちらかといえば、あんまり農業の経営について踏み込んだ話をしてこなかった気がしますので、あえて具体的な品目に踏み込んで書いてみたのですが、この記事にこんなコメントをくださった方がいらっしゃいました。

クレソンはニッチな野菜ですか?
売り方が難しいと思いまして

ちらっとnoteを拝見したところ、どうやら新規でクレソンの栽培に取り組んでいる農家さんのようです。その後コメントには返信したのですが、なんだか中途半端な返答だったかな~とも思いまして、今日はこのコメントを題材にして原稿を書いてみようと思います。

正直、他人の経営に首を突っ込むのは「本当に余計なおせっかいの極み」だと思うのですが、少しでも参考になる部分があればいいなぁ~と思って、「もし僕がクレソン農家なら、どんな風に売上アップに取り組むか?」をシミュレーションしてみたいと思います!

■つまるところ、小さな商売を安定させるコツは「新規客の固定客化」

これも再三にわたってこのnoteでお伝えしていると思いますが、スモールビジネスを安定化させるカギは、「新規のお客さんをいかに固定客にしていくか」にあると考えています。これは、ライターでも、農業でも一緒です最初は営業が必要かもしれないけれど、その後は安定的に売れる、注文が入ってくる。そんなビジネスにしていくのが目標です。

クレソンの場合、僕の感覚で言うと、いつも食卓に並んでいるご家庭は少数派だと思います。要するに「スポット購入になりやすい食材」というわけですね。

僕がメインにしているタマネギなんかだと、普段使いするものだけに一度購入してもらえば安定的に購入してもらいやすい。その点、クレソンは、安定的に注文をもらえる取引先をいかに開拓するかがより重要になってきそうです。

■まずは現状分析から

もし僕がクレソン農家として今後の売上戦略を練るのであれば、まずは以下の現状分析からスタートします。

●いくらで売れているのか?

●どんなお客さんに、どれだけの数が売れているのか?

そもそもどれくらいの単価で売れているのかを分析するのは、今後のビジネスの根幹に関わる重要なポイントです。利益率が低く、恒常的に赤字状態なのであれば、売価を上げる、もしくは経費を下げて、黒字の状況を作らないといけません。こことちゃんと向き合わず、そのまま規模拡大すれば、その分赤字が拡大するだけだからです。

僕が「小さく農業を始めてみてはいかが?」といつも言ってるのは、まさにこれがあるからなんですね。ちゃんと利益が上がるかどうかを見極めないで「よし、うまく栽培できるから大丈夫だ!」と安易に規模拡大すると、とんでもない目に合います。単純に「モノを作るのが好き」みたいな人が陥りやすい罠ですね。まずはちゃんと黒字が確保できるかを確認しましょう。

僕は結構ドライなタイプなので、ここで絶対に黒字化できないと踏んだら、ちゃんと中身を検証したうえで「クレソン農家」を諦めるかもしれません。いわゆる「プランB」というヤツです。

別に撤退することは悪いことじゃないですからね。一番悪いのは、サンクコスト(埋没費用)に目を奪われて撤退の決断ができず、ズルズルと続けてしまうことだと思っています。

もちろん、質問者さんはクレソンに思い入れがあってやっているでしょうから、そんな選択肢はないと思います。悪く思わないでくださいね。あくまで「僕なら」という仮定のお話です。ただ、サンクコストのお話は、結構クリティカルな問題なので、ぜひ頭の片隅に入れておいてください。

さて、次は「どんなお客さんに、どれだけ売れているのか」ですね。農協さんに全量出荷してそれなりの単価なのであれば、栽培に全力を注げばいいですが、「売り方が難しい」とおっしゃっているので、おそらくそうではないわけですよね。

そもそも農協と取引していないか、はたまた農協とは取引しているけれど、「全量さばけない」「単価が安い」といった課題を抱えていることが想定されます。となれば、それなりの単価で買ってくれる新規取引先の開拓は必須でしょう。

■有望な新規取引先はレストラン?

クレソンを大量に使うとなると、考えられる取引先は「レストラン」でしょうか。ここである程度固定客が確保できれば、収益も安定化するはずです。

ちなみに営業経験がある僕ならば、まずはレストランに足を運び、「すみません、○○でクレソン農家をやっておりまして…」と話しかけるところから始めてみます。そこで現状の単価を聞き、それよりも安いのであれば、かなり有望な見込み客になりそうです。まずはテストで納入し、気に入ってもらえば固定客になってくれるかもしれません。

僕ならランチとディナーの間の時間、休憩しているタイミングを見計らって訪問します。なんなら遅めのランチタイムに入店し、ご飯を食べた後、お客さんがいなくなったタイミングで、「実は…」と名刺を出しながらお会計をするというのがお話を聞いてもらいやすいと思います。

フリーペーパーの営業マン時代、飲食店の広告の提案はいつもこんな感じでしてました(笑)。今まさにお客さんとしてお金を払ってくれているし、相手も断りづらいですからね。あと、名刺を渡すというのもポイントです。名刺を出されると条件反射で受けとろうとする人が多いので、それをきっかけに物理的な距離を縮め、話しやすくする、というわけです。

広告営業に比べれば、きっとお話を聞いてもらいやすいと思います。飲食店側も、いい食材は探していることが多いですから。ポイントは相手も忙しいということをちゃんと理解しておくこと。端的に要点をまとめた資料を用意して、手間を取らせないように意識しましょう。流ちょうに話すこともないと思いますよ。その方が農家さんっぽくて気に入ってもらえそうです。

その後は、実際に納品をしてみて、オペレーション(配送などの手順・流れ)を改善しましょう。ちゃんと利益が上がるモデルが出来上がったら、それを横展開して取引先を増やしていきます。飲食店さんは横のつながりが結構強いので、いい仕事を続けていれば、そのうち「あのお店でも欲しいと言ってるよ!」と紹介してくれる人も出てきそうです。

1年も続ければ、1店舗あたりどれぐらいの売上があり、利益はどれくらい確保できるのかが分かります。そうすれば、新規であとどれくらいのレストランを開拓すれば、目標の利益に到達するかが見えてくるはずです。もし「半農でちょっぴり稼ぐ」を年間100万円くらいに設定しているのであれば、数店舗の固定客で目途が付くのではないでしょうか。

クレソンは葉物なので、鮮度はいいものは喜ばれる気がします。食品卸の業者などと鮮度の面で差別化しやすいので、大きな売上を見込んでいないのであれば、そんなに難しくない気もします。クレソンを納入するうちに、「うちではこんな野菜も使っているんだけど、作れない?」という話も出てくるはず。そうなれば、別の作物で売上を伸ばすこともできそうです。

■個人のお客さんをターゲットにするなら?

一般のお客さんを相手にするのであれば、料理好きの方がターゲットになるでしょうかね。クレソンと競合する野菜、おそらく葉物全般になるんでしょうが、そことの対比でクレソンが上回っているポイント、味?栄養価?などが訴求ポイントになりそうです。それが見出しづらいのであれば、なかなか一般客をターゲットにして大きな売上を確保するのは難しい気がします。

レストランさんとのお付き合いができてきたら、そこで販売してもらうというのが有効な手立ての一つになりそうですね。すでにクレソンを食べておいしいと思ってくれているなら、手に取ってもらうハードルはかなり低くなりそうです。

ただ個人的には、安易に「BtoC」を目指そうとしないのが吉だと思います。「食べチョク」「ポケットマルシェ」などがメディアに注目されているので、「ネットを駆使して個人に販売すれば儲かるんだ!」と考えがちですが、おそらくそんなにうまくいかないと思います。

ネット販売は、全国の農家さんが競合になりますからね。発送の手間がかかる割に小口の販売だし、「一人勝ち」「勝者総取り」の論理が働くので、地域で個人のブランドを確立してから本腰を入れて取り組まないと、相当厳しい勝負になる気がします。

中小の個人農家が注力すべきは、やっぱり「局地戦」。足元の「face to face」の方が、圧倒的に成功確率が高いと思います。

あと、6次産業化も、世間で成功事例としてたくさん語られているほどには簡単ではありません。食品の加工はめちゃくちゃハードルが高い。素人の農家が安易に手を出せるものじゃありません。材料を売ることに徹するか、加工はどこかに任せるのが吉だと思います。HACCPなど食品衛生管理のお話もありますからね。

餅は餅屋に任せておいて、よほど自信を持てるだけの経験があるなら、将来的に検討してみる、といった感じでしょうか。まずは野菜単体でちゃんと利益が出るようにすることが先決だと思います。

■まとめ

いかがでしょうか? 昨日上げた「ニッチな分野の農業」の記事もそうですが、ポイントは「いかに売るか」ということですね。だから僕も、以前の記事に書いた通り、「新規就農をするのであれば、売り先が確保されたレールに乗っかるのがいいよ」と伝えているわけです。

「売上規模はそんなに大きくないけど、ニッチな分野で売り先が確保されている農業」。今までこういったお話は、地域に埋もれてなかなか出てこなかったと思いますが、最近は農家さんが減ってきているので、背に腹は代えられれず、色々な地域で新規の人を募集している。だから、それに乗っかるのがベターじゃないかな?と僕は思います。

僕自身の農業がまさしくコレなので、ポジショントークの部分もありますが、周りを見ても、既存のレールに乗っている人の成功確率がなんだかんだで高い気がします。それだけ「栽培よりも売り先の確保が難しい」ってことです。

だからこそ、「半農半X」の発想の土台に「自分というお客に提供する(=自給農)」があるんですよね。売り先を確保する、お金に代える労力が少なくて済むので、やり方次第ではとても効率的がいい、というわけです。「衣食住」のなかで「食」の比率が高い人であれば、はじめから「絶対に離れない上客(自分と家族)」を掴んだ状態で農業をスタートできるわけです。

これまでの多くの農家さんは、「農協さんが売ってくれる」という恵まれた環境で仕事をしているので、販売力、マーケティング力はそれほど強くありません。新規参入組が取り組むべきはそこで、長年続けてきた農家さんには栽培技術で勝てない分、「販売」で強みを持つというのが王道の戦略になってくると思います。

決して焦らず、まずは売り先を確保しながら、少しずつ収穫量を増やし、面積を広げていく。これには忍耐が必要です。精神面よりもつらいのは「資金繰り」ですね。だから、ニッチな分野は専業農家の参入が難しい。「半X」で別の収益がある人の方が有利なわけです。まずはもう一つの収入源に頼りながら、じっくり取り組めますからね。

緻密なマーケティング手法が必要か?といえば、そんなことは全然ないと思っていて、単純に「お客さんの声を聞く」ってことで、ほとんどが解決する気がします。作ることばかりに熱心になり「いいものを作ったら売れるんだ!」と思考停止するのではなく、「どんな野菜が欲しいのかを考える」「自分から足を運んでお客さんに聞く」ことが最初の一歩でしょうか。

…というわけで、以上、本当に勝手な僕のシミュレーションですが、何か少しでも参考になる部分があったらうれしいなぁ~。本当にあくまで部外者の戯言です。コロナ禍という非常事態ですし、「いやいやひらっちさん、こんな風にうまくいかないよ!」という部分も多々あると思います。でも、なんとか踏ん張って、うまくいくことをお祈りしています!(^^♪



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