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タイムスリップ現象って知ってますか?

タイムスリップ現象って知ってますか?
 タイムスリップ現象とは、過去の極度の苦痛を伴う体験が、ある時突然再生される現象である。フラッシュバックと似ているが、タイムスリップ現象は当時の体験があたかも今現実に起きているように感じることなのだ。発達障害を持っておられる方に起こりやすい現象と言われている。

 先日、この現場に出会ってしまった。
 診察の日時設定のため、電話でご連絡した時に、相手の方にこの現象が起こった。
 過去のその人への加害的立場の人と私が完全に重なってしまったのだ。そして実際に過去に起こった現象が今起きているかのように捉えられ、その怒りをこちらにぶつけてくる。私もとっさの出来事だったので、自分の最近の対応を急いで振り帰り、そんなこと、ホントにしちゃったのだろうか、などなど思いを巡らせたり、私自身いったい何が起こっているのか大混乱に陥った。とにかくその時は傾聴し、電話を終わらせることしかできなかった。

 電話を終えて、何が起こったのか改めて思い返すと、タイムスリップ現象が起こったことを理解した。それによって、私の心の落ち着きは徐々に取り戻すことができるようになる。もちろん、後日、本人から「あの時は混乱してどうにもならなかった。すみません。」とのご連絡をいただいた。
 私たちは専門職として知識によって現象をとらえることができる。つまり知識による武装ができている。そんな私たちでさえも、突然起こる日々の事象はとっさに動けないこともある。
 その一方、家族であったり、同じ職場で働いている方たちは、日々接しておられて、その上で時に一緒に混乱したり、時に温かく見守りながら過ごしている。その姿勢に対して、本当に頭が下がる思いだ。もちろん、タイムスリップ現象を起こしてしまうことは、脳の機能上のミステイクであり、本人がやろうと思ってしていることではない。勝手に起こってしまうことだ。

 その現象を受け入れ、そして家族として、職場の仲間として受け入れる。その愛とやさしさは、すごい力なのだ。


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