もしも自傷行為を見かけたら
こんにちは。あすぺるがーるです。
近年、何らかの形で自傷行為を目にすることは、決して他人事では済まされなくなっています。
わが国における自傷行為の実態(2010) によると、回答者の7.1%、10人に1人近くの人に自傷行為の経験があるそうです。
精神病み界隈ツイッタラーのみなさんの中には、近しい人の自傷行為を見かけた方も少なからずいらっしゃることでしょう。
今回は、近しい人の自傷行為を見かけたり、自傷行為を打ち明けられたりしたときに可能な最善の対応を、NG例と併せて紹介しようと思います。
自傷の主な原因
自傷行為の主な原因というと、「メンヘラアピール」 を連想する方が少なくないでしょう。
しかし、実際はそうではありません。
国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏 (2004) の調査によると、自傷の理由として俗にいう 「メンヘラアピール」 を挙げた人は、全体のわずか2割弱に留まっています。
では、本当の理由として多いのは──というのを、上調査の結果に基づいて私が円グラフ化したのが、以下の図です。
いわゆる 「メンヘラアピール」 (当調査では『重要他者 (家族・友人・恋人) に自分のつらさを分かってほしくて』とされていました) と回答したのは、グラフの青部分、18.2%。
それをはるかに上回るのが、イライラやつらい気持ちなどの 「不快感情の軽減」 。
グラフの赤部分、57.6%です。
自傷行為をしている方は、過去の経験によって、自分の苦しみを誰にも話すことができない状況に追い込まれています。
そのため、自分の身体を傷つけることで、心の痛みを紛らわそうとしているのです。
NG対応
1. 自傷を止めるように言う
これ、よく聞く話ではありますが、絶対にやってはいけない対応ベスト1といっても過言ではないことです。
自傷をすぐに止めさせようとするのは、今まで辛さ苦しさを独りで抱えてきた方の頑張りや踏ん張りを、一瞬で否定する行動です。
また、自傷行為には依存性があるため、止めろといわれてすぐに止められるものではありません。
すぐに自傷を止めさせようとすることは、相手にとって何の意味もないどころか、相手の状態をさらに悪化させることにつながり得ると肝に銘じておきましょう。
2. 「自傷はしない」 の約束に乗る
自傷行為をした方は、救いの手を差し伸べた人から愛されたいがために 「もう自傷はしない」 ということがあります。
しかし、この約束に乗ってはいけません。
先ほどいったように、自傷には依存性があり、自傷経験のある人のうち半数以上が10回以上の自傷行為を繰り返すというデータが、松本氏 (2005) の調査では出ています。
つまりこれは、「守れない約束」 といえます。
この約束に乗ってしまった場合、相手は、自傷行為を再び行ったときに深い自責の念を抱きます。
そして、自責の念ゆえに見捨てられた気分になったり自暴自棄になったりして、さらに激しい自傷行為や希死念慮に導かれてしまいます。
本当に必要な対応は?
1. 自傷行為を打ち明けたことを肯定する
もし、相手が自傷行為を打ち明けてくれた場合、まずは 「伝えてくれてありがとう」 と言いましょう。
自傷行為をする人は、自分の苦しみを誰かに話すことがとても苦手です。
そのため相手は、自傷行為を相手に伝えるだけでも、大変な苦労をし、勇気を振り絞っているのです。
だから、まずは打ち明けるまでの苦労を労うことが大切です。
2. 自傷行為の肯定的な部分を認め、共感する
自傷行為は、確かにしている本人の身体にはいいことではありません。
しかし、世の中には、不快感情を覚えると自殺しようとしたり、人に暴力を振るおうとする人が少なからずいるのです。
それに比べれば、自分の身体だけをほどほどに傷つける自傷行為は、あながち悪いとは言いきれません。
しかも、自分の辛い感情を誰にも迷惑をかけずに克服しようとしている、それって素晴らしいことではないでしょうか。
このような、自傷行為の良い面を認め、自傷行為に至るまでの相手の苦しみに共感の意を示すことが、自傷行為からの回復には必要不可欠です。
3. 度を越すことへの 「懸念」 を伝える
自傷行為には良い面もあるとはいえ、エスカレートすると自殺につながるおそれがあります。
1. と2. をしっかり実行したうえで、相手を決めつけるような言い方を避けながら、度を越して相手の身体を害してしまうことへの懸念を伝えましょう。
たとえば、
「あなたは違うかもしれないけど、私の経験では (あるいは、「一般的には」 とか 「専門家によれば という言い回しでもいいと思います)、自傷という『身体の痛み』で『心の痛み』に蓋をしていると、だんだんと自傷の効き目が弱くなって、どうしても自傷がエスカレートしてしまうけいこうがあるんだよ。
そのうちにいくら切っても『心の痛み』が治まらなくなると、『消えたい』とか『いなくなりたい』って感じるようになったり、なかには、もっとはっきりと『死んでしまいたい』と考えるようにもなってしまう。『あなたがそうなったら……』と考えると、心配だな」
(松本俊彦 『自傷行為の理解と援助―「故意に自分の健康を害する」若者たち』p.156より)
という声がけの例があります。
加えて、もし相手が精神科医やカウンセラーなどの必要な専門職につながっていない場合、「懸念」 伝えたうえで、
「私は素人だから、話を聞いてあげることぐらいしかできない。けど、心のお医者さんやカウンセラーさんに相談したら、もっと楽になれるかもしれないよ」
といって、相手を専門家への相談に誘導することも必要だと思います。
とはいえそれも、見切るように言うのではなく
「私に聞いてほしいことや分からないことがあったら、またいつでも相談してね」
と付け加えてあげることも必要だと思います。
さいごに
減らない自傷行為の背景には、専門家の数や連携能力の不足など、さまざまな背景があります。
そんな現状を今すぐに変えることは、不可能に近いでしょう。
しかし、自傷行為をしている人に社会が変わるまで待てというのもまた、無理な話です。
そのため、私たち一般人が適切な対応をすることが、自傷行為をする人を回復に導く近道だと私は思います。
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参考文献
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