働き方ガイド完全保存版 - 後編 -
コロナ禍を機に激変した働き方。日本では、2020年1月に最初の感染者が確認されてから3年が経過しました。そこで誰もが感じているであろう「結局どんな働き方が正解なの?」という疑問。
「働き方ガイド完全保存版 -前編- 」では、この3年間で起きた”ワークスタイルの変化”をもとに最適な働き方に結論が出ない理由を考察し、 その解は「生産性」に鍵があると結論づけました。
後編となる本記事では、鍵となる「生産性」について考察します。
「生産性」とは何か?
前編で述べた通り、企業は事業を成長させたい。働き手は仕事と生活の満足度を上げたい。この両者を繋ぐのは「生産性」と考えます。つまり、どんな働き方が生産性を高めるのかという問いに結論が出ていない状況であると言えますが、「生産性」と一口に言っても、そこには様々な要素が関係しています。
生産性の判断軸は営利団体であれば「業績」であることに間違いはないでしょう。注意が必要なのは、短期間の「業績」で判断してしまうと、中長期で「業績」が落ちる可能性があるということです。短期で管理する「業績」は非常に重要ですが、そこを重視するあまりに離職率が高くなり、結果として業績が落ちてしまう例はこれまでの歴史で多く見られた現象ではないでしょうか。
生産性に影響する要因として、企業活動の影響が大きいものと働き手による影響が大きいものに分類しました。
企業活動の影響が大きい要素として、採用・人材定着・業務効率・働く環境があげられます。採用や人材定着は、会社のカルチャーや仕組みづくりなどのHR領域で取り組むことが多い課題です。業務効率は、働き手のタイムマネジメントなどの影響もありながら、ITツールの導入で多くのことが解決できる領域だと考えます。働く環境も企業の意思決定によって、結果的に働き手のパフォーマンスに大きな影響を与えるでしょう。
働き手の影響が大きい要素では、モチベーション・コミュニケーション・帰属意識などの「感情」に起因するもの、心身の健康や個人の成長など「セルフマネジメント力」に起因する項目があげられます。特に感情に起因する領域はこれまで定量化が難しいとされてきましたが、従業員意識調査(eNPS)やタレントマネジメントシステムなどを導入して定点観測する企業も増えてきました。
これまで非常に多くの企業がさまざまなITツールの導入で業務を効率化してきたと想定されますが、今後も更なる効率化を求めて多くのサービスが台頭するでしょう。一方で、本記事の前編で述べた通り、この3年間で働き方が変化したことによって、これまで働き手の自己責任という認識も大きかったと思われる「感情」や「セルフマネジメント力」に対して、企業側も考慮する重要性が高まっています。
組織課題に応じた”はたらき方”を選択
では「どんな働き方が生産性を高めるのか」について考えてみたいと思います。業種や企業文化も大きく影響するため一概には言えませんが、先に述べた「生産性」を構成する要素がヒントになるのではないでしょうか。生産性における組織課題に応じた働き方を選択するために、働き方によって解決できることを整理してみました。併せて、新たな働き方を実践している企業の声も併せてご紹介します。
働き方制度で解決できること
・リモートワーク制度/フレックス制度
リモートワーク制度とフレックス制度は働き手の満足度を高めることから、採用において有効な制度と言えます。さらに、場所に捉われない採用活動が可能となり、求める人材の採用幅が大きく広がります。また、人材定着や社員のセルフマネジメント力を高める取組みとしても有効です。なかには、リモートワークを前提にオフィスを縮小して別予算に割り当てている企業も。
・フリーアドレス制度
社員が個人デスクを持たずに自由に着席場所を選んで働くオフィススタイルであるフリーアドレスは、部署間の壁や、役員と一般社員の壁を緩和するために有効な手段です。組織が大きくなるにつれて、部署で縦割になってしまうことはよくあることですが、フリーアドレス制度を導入することで、偶発的に異なる部署の人と話すきっかけを作ることができます。
新たな働き方の課題を解決するために
リモートワーク制度・フレックス制度・フリーアドレス制度は良い面ばかりではなく、課題もあります。特にリモートワークでは、オフィスワークに比べてコミュニケーションの課題が大きく、新たな仕組みづくりが必要になります。ここでは、「オフィスづくり」「制度づくり」「ITツール導入」の軸で有効とされる事例をご紹介します。
新たな働き方を取り入れる際の重要ポイント
新たな働き方を取り入れる際に重要となるのは、オフィス体験の再設計とオンライン上でのコミュニケーションの再設計です。
海外では、出社を前提としたオフィスづくりからアップデートしたオフィス設計として、新たな働き方に応じたオフィスづくりを行う「ワークプレイスストラテジスト」という職種が台頭し、オフィス体験の再設計が注目されています。
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また、オンライン上のコミュニケーションの再設計として、コミュニティマネージャーも有効だと考えます。コミュニティマネージャーとは、コワーキングスペースやシェアオフィスなどのビジネスコミュニティ、またオンライン上のコミュニティなどを管理する職種を指し、特にアメリカでは実務と戦略立案を兼ねた仕事として確立されています。
このような職種の設置も課題解決の一助となるかもしれませんね。
リモートワークとオフィスワークの最適な頻度とは?
2022年3月に発表されたザイマックス総研の研究調査によると、週3日程度のリモートワークがパフォーマンス・エンゲージメントともに高く、パフォーマンスは週5日のフルリモートが高くなるものの、エンゲージメントは週4日以上のリモートワークで微減する傾向にあることがわかりました。
こちらが現時点の傾向ですが、さまざまな取組みやツールの登場によって今後変わってくる可能性もあります。ACALLが開発・提供するワークスタイルプラットフォーム「WorkstyleOS」では、座席予約機能・受付機能・会議室予約機能・オフィス分析機能・リモート連携機能に加え、コミュニケーションを軸としたエンゲージメントを高める新機能を開発中です。
オフィスワークとリモートワークのどちらが良いかの答えはなく、働き方の最適解を自社で選択する時代になりました。難しい時代になりましたが、ACALLはこの課題に向き合い続けていきたいと思います。企業にとっても働き手にとっても、最適な働き方が選択できる社会になるといいですね。
Workstyleラボ 「これからのワークスタイルを考える」マガジンでは、国内外でのリサーチやインタビューをもとに、変わりゆく働き方について発信しています。