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働き方ガイド完全保存版 - 前編 -


コロナ禍を機に激変した働き方。日本では、2020年1月に最初の感染者が確認されてから3年が経とうとしています。そこで誰もが感じているであろう「結局どんな働き方が正解なの?」という疑問。本記事では、この3年間で起きた”ワークスタイルの変化”を振り返るとともに、私たちの見解をお伝えできればと思います。

コロナを機に二極化する”はたらき方”


2019年12月に新型コロナウイルス感染症の発生が確認され、世界中に感染が拡大しました。2020年3月には世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言。日本でも感染者が増え続け、同年4月に1回目の緊急事態宣言を発令しました。国内の緊急事態宣言は合計4回、まん延防止等の重点措置は合計2回の期間で発令されています。

出典元:厚生労働省HP

世界中を混乱に巻き込んだコロナ禍は強制的にワークスタイルを変化させました。各国が主体となってオフィス出社を制限し、リモートワークを余儀なくされたことは記憶に新しいですね。企業も働き手も戸惑いながら、徐々に新しい働き方に順応していったのではないでしょうか。

2022年2月の帝国データバンクの調査によると、31.5%の企業がリモートワークを実施していることがわかっています。大企業においては約半数の46.0%の企業がリモートワークを実施していると回答しました。

コロナ禍が落ち着いてきた現在、オフィスへ出社回帰する企業とリモートワークを継続する企業の二極化が顕著です。出社勤務に戻した企業のなかには、経営層と働き手の間に大きな溝が生まれ、優秀な人材が離職したケースも散見されました。

従業員の反発を受けてハイブリッドワークに転換した米国・巨大IT企業
Apple社は2022年4月から段階的なオフィス出社へ切り替え、最終的に週3日出社にする方針だったが、機械学習エンジニアのトップ人材がリモートワークをめぐり辞職するなど、オフィス回帰に苦戦。週3日の出社を求めない代わりに、一部の社員に週2回出社してもらう試験運用を開始した。出社を希望しない社員の場合、リモートワークの継続も可能とした。Google社も出社を巡って従業員の強い反発を受け、2022年4月にリモートワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークに移行することを発表した。

出典元:Business Insider

国内で広がる”新しい働き方”
国内では、LINEグループが全国で居住が可能になるように、2022年8月から
1日あたりの交通費の上限を撤廃し、1ヶ月当たりの交通費の上限を10万円から15万円に引き上げた。Yahoo!グループも同様に2022年4月から全国で居住可能とし、交通費支給は月15万円までと発表した。東芝グループでは、2022年7月から原則出社を撤廃し、在宅勤務・出社が選択可能なハイブリッドワークに移行する試験運用を開始。NTTグループでは、2022年7月から社員30,000人を基本的に在宅勤務にし、出社は「出張扱い」にすることを決定した。

出典元:TBS|NHK|テレビ朝日|日本テレビ

オフィスワークへ回帰する企業も
一方で、オフィス出社へ回帰する企業の動きも多く見られた。ホンダ社は対面でコミュニケーションを図ることを目的に、2022年5月から出社を基本とする働き方に移行。米国の大手電気自動車メーカーのテスラ社はCEOであるイーロン・マスク氏が従業員に対して「週に40時間以上出社しなければ辞職とみなす」というメールを送り、議論を湧き起こした。東京商工会議所の2022年6月に実施した調査によると、東京都23区内の中小企業のリモートワーク実施率はこの2年で30%台まで低下し、リモートワークを見直す動きが広がっていることが判明した。

出典元:日本テレビ|フジテレビ

最適な”はたらき方”に結論が出ない理由


先に述べた企業の動向からもわかるように、同じ業界であってもオフィスワークがいいのか、リモートワークがいいのか、については各社で判断が分れているのが現状です。これは、リモートワークとオフィスワークにはそれぞれに利点と課題があるからだと考えます。平たく言うならば”どちらも甲乙つけがたい”状況であると言えるのではないでしょうか。

新たな働き方が始まって約3年が経過し、リモートワークとオフィスワークの利点と課題は出尽くしました。ここで改めて、リモートワークとオフィスワークの利点と課題をまとめてみたいと思います。

💡 働き手にとってリモートワークは「生活の質」を高める
・通勤時間がなくなり時間に余裕ができる
・場所や時間に捉われない働き方ができる
・働き方のデザインで自分の生活やライフステージに合わせることができる

《 新たな課題 》
・社内コミュニケーションを取りにくい
・会社への帰属意識やモチベーションが低下するケースもある
・高いセルフマネジメント力が必要になる(健康面・業務面)

💡 企業にとってリモートワークは「優秀人材の確保」「コスト削減」
・優秀な人材の確保(採用・従業員定着)
・集中しやすい環境で業務のパフォーマンスが上がる
・オフィス賃料、通勤交通費が削減できる(他予算に回すことができる)

《 新たな課題 》
・社内コミュニケーションの不足
・組織の一体感が薄れる
・業務プロセスが把握できない

💡 オフィスワークの利点まとめ
・社内コミュニケーションを取りやすい
・組織の一体感を生みやすい
・業務プロセスを把握しやすい


こうして見てみると、リモートワークは働き手にとっての利点が大きいようにも感じられますね。通勤時間がなくなり、さらに場所や時間に捉われずに自分の生活やライフステージに合わせて働くことができるようになると、多くの人にとって生活の質が高くなるのは容易に想像できます。

優秀な人材の獲得や従業員の定着などの利点が大きい一方で、業務面での課題も多く、それであれば ”今までうまくいっていた” オフィスワークに戻そうとする企業が多いのも頷けます。一方、リモートワークを継続する企業も多く存在するのはなぜなのでしょうか?そこには新たな働き方を経て生まれた問題があるのです。

オフィスワーク回帰の問題点


リモートワークに業務上の課題があるならオフィスワークに戻せばいいじゃないか、と考える経営層は多いのではないでしょうか。一般にオフィスワークはコミュニケーションが活性化され、組織の一体感を生み出しやすい利点がある一方、想像以上に問題は複雑化しています。

コロナ禍を経て、働き手にとってオフィスワークが当たり前だった状況から、なかば強制的にリモートワークを経験したことでオフィス以外の場所でも仕事ができることがわかりました。一般に、リモートワークはオフィスワークに比べて集中力が上がるとされています。それを体感した働き手が「オフィスワークは効率が悪い」と感じるのは自然な流れと言えるでしょう。

2022年3月に発表されたザイマックス総研のハイブリッドワークに関する意識調査でも、リモートワークは集中しやすい環境を構築しやすく、業務のパフォーマンスが上がる傾向にあることがわかっています。つまり、コロナ禍で新しい働き方を経験したことで、改めて「出社する意味」が問われ始めているのです。加えて働き手は、リモートワークによって生活の質が高まり、幸福感につながることも経験しています。

働き手の「なぜオフィスに戻らないといけないのか」という問いに対して、論理的・感情的に納得感のある回答ができる会社は存在しないと言っても過言ではありません。その結果、米・巨大IT企業の例のように、経営層から従業員に対して一方的にオフィスワークを命じることで、会社への愛着やモチベーションの低下につながるケースが多発しているのだと考えられます。

企業と働き手はKPIが異なる


企業と働き手の目的の違いを考えると、企業の目的は言うまでもなく「事業成長」です。企業が最終的に達成したいビジョンはさておき、利益を生み出すことができなければ組織の存続は不可能なため、非営利団体を除く全ての組織は利益を優先しなければなりません。

一方、働き手の目的では、仕事・プライベートに関わらず「幸福度を高めること」が何よりも優先されます。所属する企業が成長しても「幸福度が低い」状態は人間という生物として”意味をなさない”と言えるのではないでしょうか。

企業は事業を成長させたい。働き手は自由に働きたい。
この両者が両立しないのか、というと決してそうではないと考えます。

時間や場所に捉われずに自由に働きたい、という欲求は、幸福度を高めるための一つの手段です。つまり「自由に働きたい」の上位概念に「幸福度の向
上」があります。

働き手が新たな働き方を経験した今、完全に元の働き方に戻るのは難しく、この流れを不可逆なものと捉えるならば、働き手の「幸福度を高めたい」という重要評価指標(=KPI) に対して、企業側が寄り添うことがヒントになり得るのではないかと思うのです。

”はたらき方”の最適解は「生産性」が鍵を握る


では、どうするのか?
幸福度を高める要素のなかにある「仕事で成果を出したい(=自己実現欲求)」と「認められたい・役に立ちたい(=承認欲求)」は、人間として多くの人が持っている欲求です。つまり、企業のKPIである「事業成長」と個人のKPIである「幸福度向上」を繋げるには「いかに仕事でパフォーマンスを発揮するか(=生産性)」が鍵を握っているのです。

最適な”はたらき方”に結論が出ていない理由は、先に述べたようにリモートワークとオフィスワークにはそれぞれに利点と課題があるため判断が難しい点にあります。つまり、リモートワークとオフィスワークにおいて総合的に考えた時に重要な指標となる「生産性が高まるのはどっちなんだ?」という問いに結論が出ていない状況であると言えます。


後編に続きます。

後編の記事では、最適な”はたらき方”の鍵となる「生産性」について考察します。次回もお楽しみに 💁✨

執筆者:佐藤洋美


Workstyleラボ 「これからのワークスタイルを考える」マガジンでは、国内外でのリサーチやインタビューをもとに、変わりゆく働き方について発信しています。


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