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ことば遊びとショートショート45『フェイクシー』

「海だ!」

 寂れた船着き場で青年は歓喜した。

「残念だが、これはフェイクシー、人工の海さ」

 老人が話しかけた。

「嘘だ!この特有の匂いに波だってある。それに川を辿ってきた」

「本物の海はこんな気取った匂いじゃないし、波だって規則的ではない。その川もフェイクリバーさ」

「この海探知器も反応した」

 青年は腕時計型の計器を見た。

「宇宙から水が大量に輸入されるようになり、大昔に存在した海を再現したのがフェイクシー。ここはまだマシだが大体はひどいもんさ」

「あんた、何者だ?それにその不純物だらけの水……腐っているじゃないか」

 青年は顔をしかめた。老人の手にはグラスがあり、その水はひどく濁っていた。

「あんたの探しもんさ」

「そんな汚染水を僕は探していない!」

 青年は肩を落とし、立ち去った。一瞬だが探知器の針が振りきれたことを知らずに。

 老人はグラスに耳をあて、いつまでもその微かな波音に浸っていた。

 (了)

【雑記45】

 意外と探し物は近くにあったりする。

 時には大切な人であったり、時にはずっと探していた理想の家だったり、時にはガラクタにしか見えないお宝だったり(ちなみにメガネを探しているときは大体メガネかけている)。

 それは巡り合わせやらタイミングやら審美眼やらで、気づけたり手に入れることができるのかもしれない。

 朝の始まりには瞑想をする(10分から15分くらい)

 心を海に例えるなら、荒れた心を静めてくれる。
 日常の何気ないサインや前兆や奇跡や喜びを見逃したくないからだ。
 下を向いてれば青い空には気づかないかもしれないし、ギスギスした心ではすれ違う全員が敵に見えるかもしれない。景色の歪みを調整するように。

 うわー、これ絶対バズるわぁ的な発見も面白いが、地味でも心があたたかくなるような小さな瞬間の落とし物を拾ってあげたい。

「これ、落としましたよ」と声をかけて、振り返った世界と接続するのだ。

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