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文芸やまなみ 佐藤亜弥美の紀行文・エッセイ

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山並みのあいまから。 恵那市笠置町に暮らす佐藤亜弥美のエッセイ・紀行文を不定期にアップしていきます。 日々の暮らしのこと、里山のこと、アフリカ旅のことなど。
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#モザンビーク

祈る群像 |旅のエッセイ/モザンビーク/ベイラにて

祈る群像 |旅のエッセイ/モザンビーク/ベイラにて

 迷い込んだ浜辺で。うだる暑さのなかのモスクで。湖のほとりで。おんぼろバスのなかで。アフリカでそこかしこに見たのは、祈る人々だった。貧しさに、飢えに、不遇に耐えるために祈る人々。アフリカの人々にとって、神はとても近くにいるのに、その光ははるか遠い。 

 わたしはモザンビーク島があるモザンビーク北部から、ほぼ最南端にある首都マプトへ行くために、バスの乗り継ぎをしにベイラへ来た。
 モザンビーク島に

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人魚のいる海 ーモザンビーク・ヴィランクロにて【旅のエッセイ】

人魚のいる海 ーモザンビーク・ヴィランクロにて【旅のエッセイ】

 なぜヴィランクロに行きついたかは詳しく覚えていない。モザンビークは対岸にマダガスカルを置くアフリカ大陸の東側の海洋国で、インド洋に面しているため中世より海からの客人が多い。わたしは二十代だった。北部の世界遺産モザンビーク島、中部のベイラを経て、知り合いのいる南部の首都マプトにたどり着く前に一度インド洋らしい海を見ておきたかった。海岸沿いで豪雨に見舞われやすい古都ベイラから首都マプトまでは海岸線に

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