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人事制度とリーダーシップの変遷から見える「今求められるリーダー像」

変化の激しい現在において、私たちは、仕事をどう進めていくのか、何をすることが正しいのかという正解を事前に見つけるのは困難です。

組織がやるべきことも同様で、時代やニーズの動きを把握しながら、自分たちで最適解を探し続けることが求められます。

今回は、組織のパフォーマンスを決める「人事制度」と「リーダーシップ理論」の時代的な変遷を追いつつ「今求められるリーダー像」について考えてみます。


人事制度の変遷

人事制度は、組織の中で従業員の処遇を決める大切な仕組みです。70年代以降、以下のように形を変えてきました。

  1. 1970年代「年功主義」
    終身雇用を前提とした勤続年数や年功によって処遇が決まる

  2. 1980年代「職能主義」
    職業に必要とされる資格や技術などの職務上の能力で決まる

  3. 1990年代「成果主義」
    成果によって評価され、年齢や社歴に関係なく若手でも高い評価を受ける

  4. 2000年代以降「役割主義」
    仕事の役割や行動を評価し、その価値にあった仕事の報酬として受ける

戦後の高度成長期を支えた制度の一つが「年功序列」です。「年功序列」とは、勤続年数に応じて役職と賃金を上げる人事制度のことで、日本型経営である「年功主義」として安定した経営を支えたとも言われています。

しかし、バブルが崩壊し、収益が激減し、年功序列を維持できなくなったため、個人の能力で賃金が決まる「職能主義」、仕事の実績や結果で決まる「成果主義」が広まりました。

極端な効率化を進めてしまったため、社内がギクシャクして、かえって退職率増加、売上低下を招きました。

そのため、客観的な結果評価だけではなく、その人に与えられた業務の役割に対して適切に行動できたかを評価する「役割主義」の考え方が注目を浴びました。


リーダーシップの変遷

リーダーシップはどうでしょうか。

リーダーシップは古くから研究されたテーマです。古くは孫子が「将とは、智・信・仁・勇・厳なり」と述べています。

  • 「智」 知恵をもちあわせていること

  • 「信」 人から信頼されること

  • 「仁」 部下への思いやりを持つこと

  • 「勇」 勇気、決断力をもつこと

  • 「厳」 部下に厳しい態度で臨むこと

孫子のいう「将」とは、指導者などのリーダーのことです。

孫子が生きたのは中国の春秋時代(紀元前771年~紀元前5世紀)。はるか昔の人ですが、考え方は現代のリーダーにも通じています

このように孫子の時代から、組織を率いるリーダーの能力に何が必要かは活発に議論されてきました。それが「リーダーシップ論」に発展したのはここ100年の中のリーダー研究によるものです。

リーダーシップ論は以下のように変遷してきました。

  1. 1940年代前「特性理論」
    リーダーは先天的にある資質によって発揮ができるという考え

  2. 1940~60年代「行動理論」
    リーダーは優れた行動を取ることで、成果を出せるという考え

  3. 1960~70年代「条件適合理論」
    リーダーが成果を出すためには、環境に応じて行動を変化させる考え

  4. 1970~80年代「交換・交流理論」
    リーダーはリーダーの行動タイプと部下との関係によって行動を変える考え

  5. 1980~2000年代「サーバント」
    リーダーは周囲から信頼されるための信念や倫理観を持ち合わせる考え

  6. 2000年代以降「オーセンティック」
    リーダーは自分らしさや、自分の価値観でリーダーシップを発揮する考え

リーダーシップ論の初期には、リーダーは、生まれつきの性質で決まるものと考えられていました。そのため、リーダーに求められる資質のある人を社内で選んだり、外部から採用したりすることが見られました。

その後、リーダーシップ論は、周囲との関係やリーダー自身の信念や価値観というように、個人の意識や心構えが重んじられるようになっています。

その結果、アセスメントでリーダーの性質を分析することが主流となりました。現在のアセスメントは、個人の役割や意識によって後天的に育成できるスタイルのものも見られるようになっています。

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いま評価されるリーダー像

人事制度もリーダーシップも、自分の与えられた環境(仕事の機会や組織のメンバー)に対して、自らが変化し、成長し続け、周囲に貢献してきた人が評価されていると言えます。

進化論で有名なダーウィンが、「唯一生き残ることができるのは、変化できる者である」と言ったように、組織も従業員も柔軟に時代に合わせて変化することの大切さは、時が経っても共通しているあり方と言えるのではないでしょうか。


まとめ

以上、人事制度とリーダーシップ理論の歴史的な変遷をもとに、今求められるリーダー像について考えてみました。

人事制度もリーダシップについての考え方も10~20年で変化します。コロナによって急速にテレワークが広がったように、これからの変化はもっと短いスパンで起こるかもしれません。

リーダーとなる人は、環境の変化に敏感であるべきなのでしょう。

この記事を書いた人
頼木 康弘(よりき やすひろ)
「わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所)」専任講師/ラーニングデザイナー

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