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【6クマ目】吾輩は白クマである。〜あの月もあの星も全て君の為の舞台照明〜


那由多に広がる宇宙 その中心は小さな君ー
Stage of the groundより



吾輩は白クマである。
幸いにも名がある。

僕の名前はちゅんちゅん。
主人と共に暮らす白クマである。

最近主人の機嫌が良い。すこぶる良い。


その訳は数日前、
在宅での仕事を終わらせ、
炊飯器のご飯が炊き上がるまでの間で
スマホを眺めていた主人が急に飛び上がった。


ちゅんちゅん!!
当たった!!!!

どうやら好きなバンドの
ライブの抽選が当たったらしい。

なかなかチケットが当たらなかったり
主人の都合で行けなくなったり
いつも行くフェスには滅多に参加しないなどで
かれこれ10年ぶりのアーティストだ。

ライブ狂の主人にとって
言葉そのまま、狂喜の沙汰であった。


あまりの嬉しさに、
Uber Eatsで某ステーキショップの
ステーキ重を注文した。

ご飯炊いているのに。

そして最近ケースでビールを
ストックしてあるので酒には困らない。

この狭い住処は
一気に祝賀ムードになる。

クローゼットから脚立を出し、
登って高い位置にある棚から
箱を引っ張り出してきた。
中身は大量のアーティストのグッズ。
しかも年季が入っているものもある。

一人暮らしの狭い部屋で
飾るほどスペースが無いので
仕方なく収納してあるが、
とても大事にされているのが分かる。

その中からDVDを取り出す。


今日はそれを鑑賞して宴会と言う事だな。
これは長い夜になりそうだ。

まぁ主人がこんなに喜んでいるのも
僕としては嬉しい。

今日は僕も気分がいいので
お気に入りのお肉屋さんのコロッケで
コロッケパンを作って食べよう。

主人はステーキ重とビール
僕はお手製コロッケパンと牛乳で
ライブDVD鑑賞に入る。

10年ほど前のライブ映像で
主人は別日にそのツアーに行ったらしい。


次にやる曲がすごく泣けてー。
私の時は突然アーティストが移動して近くで
あの神曲をやってくれた。
隣の人が投げられたピックをゲットしていた。
MCの時のあの言葉が私を支えてくれた。


ダムが決壊した様に
主人は語り続ける。

主人と僕もは何十年来の付き合いであるが
何度も会話の中にそのバンド名が出ていたし
口ずさんでいたのも聞いていたし、
少しセンチメンタルになっていた時には
そのバンドの曲が流れていた。

主人が高校生だった頃、
常に金欠な学生で(今もだが)
ほぼ毎日授業サボって
学校近くのタワレコで視聴コーナー
音楽を聴いていた。

もちろん今も昔も
他に好きなアーティストは沢山いたが
このバンドは特に思い入れが強く、


月並みの言葉だが
彼らの曲は主人にとって青春そのもので、

主人にとって宝物なのだ。


ちなみにだが、
あえてここではアーティスト名を伏せてる。
隠す必要も全く無いのだが。

実はこのnoteの
アカウント名がヒントになっている。
まぁ夏目漱石も好きだからって言うのもあるが
やはりどちらかと言えばこのアーティストを
意識しての事だろう。

しかしながら、
小さく見せてる大きな承認欲求を
持ち合わせている主人のために
ハッシュタグは付けようと思っている。

そして何より、
仲間に読んでほしいと言う思いがあるのだ。


話を戻す。

予想はしていたが
主人は泣き始めた。

主人は家で酒を飲む時は
少々涙もろくなるのだ。

人生10年も経てば色々あるさ。

自身の離婚、再就職、仕事
恋愛、友達関係家族関係

ずっと見てきた僕だから分かる。
きっとこのバンドと一緒に
乗り越えてきたんだ。

人の顔をうかっがって
ヘラヘラと傷つかない様笑って
ガサツなのに繊細で
とても面倒くさい主人だけど、
頑張って来たんだ。

そして今は明確な目標があるのだ。
僕も主人の心の応援席で見守り続ける所存だ。


そうさ、
だからやりたい事を全力でやるのだ主人。
そしてやりたい事をやる為にも
やりたく無い事もやるのだ。

明日も仕事だ。

主人は水筒に麦茶を作り、
夕食に手をつけなかった
炊き上がったご飯で明日のおにぎりを作る。

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