大人は平然と嘘をつき、信じていたものの裏切りは、残酷で痛ましい。
『なんで言ったん!!』
忘れもしない。
大声で泣き叫んだ小学五年生の晩御飯の時間。
張り裂けるほど苦しかった。恥ずかしかった。
情けなかった。
あの時からだ。
大人は平然と嘘をつくことを
理解していったのは。
いやはや、あれは嘘といっていいのだろうか。
人間誰しも、純粋に世界を見る時期は必要で、
世界の真理や全てを、幼少期から教える必要など無いと思っている。
それでも当時の私は、真実を伝えて欲しかった。
親が何度否定しても、食い下がらなかった。
そして真実を、当事者である親から聞きたかった。
覚悟はできていた。
しかしいざ、事実を目の前にすると、
手に持っていたもの全てが一瞬で崩れ落ちる様な、
目の前から光がなくなる様な、
大人達からバカにされていた様な、
けれども同時に愛情も感じるような。
苦しさと恨みと恥じらいで覆い尽くされた塊の中にうっすら感じる、ほのかな温かみ
今となれば、じんわりとあったかいあの記憶。
そんな記憶。
『なんで言ったん!!』
大声で泣き叫んだ小学五年生の晩御飯の時間。
あの頃から、ある時期に抱いていた感情を失った。
暖かいお茶と飴も準備しなくなった。
手紙も出さなくなった。
小学五年生、
私はサンタクロースの正体を知った。
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