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自分を見失うとき

「DVのある暮らし」(なんかちょっとオシャレな感じ 笑)の中ではどんな行動を取るか、どんな言葉を使うかについて選択肢はひとつしかありません。
「どう行動すれば夫を怒らせないで済むか」「何を言えば機嫌を損ねないで済むか」それだけが全てでした。

「自分の考え」や「自分の気持ち」に正直になることは非常に危険な行動です。その結果、夫の逆鱗に触れてしまえば大変な事が起こる可能性が高くなるからです。
それは自分自身のためにも、子供達のためにも避けたい事態です。

そのため常に緊張状態で夫の一挙手一投足を見守っています。

ドアを閉める時に大きな音を立てて閉めたり
電話に出た瞬間の声のトーンが不機嫌そうだったり

こんなことがあろうもんならパニックです!
「どうしよう何か怒ってる。機嫌が悪い。何で機嫌が悪いんだろう。私が何か気に入らないことを言ったのかな。顔を見たら何を言われるんだろう。帰って来たら何が起こるだろう帰って来て欲しくない。帰って来なければいいのに。帰りたくない。会いたくない・・・」
こんなことで頭がいっぱいで、他のことは何も考えることができませんし、何も手に付かない状態になってしまいます。

どんな時でも常に24時間、夫のことで頭がいっぱいなのです。

恋愛している時も好きな人のことで24時間、頭がいっぱいですよね?
大好きな人のことを考えて、ウキウキ、ルンルン♫な気持ちの24時間と
重く沈んだ気持ちで恐怖を感じている24時間ではまさに、天国と地獄程の差です。
そしてこんな人間関係を長く続けていくと、当然のことですが心身共に様々な悪影響を受けることになります。

そのひとつが「自分自身の意思や気持ちが分からなくなる」ことです。

あるとき「私、これについて本当はどう思ってたんだろう」と思い自分自身に問いかけてみたことがありました。
けれど答えは何も帰ってきませんでした。

次に「私はこれについて、本当はどう感じていたんだろう」と問いかけてみました。
これもやはり答えは何も帰ってきませんでした。

自分自身の中を必死で探してみましたが何も見つかりませんでした。
何も感じることもありませんでした。
文字通り、私は頭が真っ白になってしまいました。

私はあまりにも長い時間、自分自身を無視し続けてきた結果、「自分の意思」も「自分の感情」も見失い、分からなくなってしまいました。

もちろん、本当に自分の意思がなくなった訳でも、感情を失った訳でもありません。
ただ、自分自身の意思や気持ちよりも他の選択を優先させなくてはならない状況で「自分の本当の思い」を知ってしまえば苦しくなってしまいます。
そんな苦しみを避けるため、簡単には見つからない場所に隠してしまっただけなのです。

そして更に私は「DVのある生活」よりもっと以前から
こんなふうに「自分の意思」や「自分の感情」を無視する、気付かないふりをするという行動を繰り返してきたことに気付きました。

その原点にあるのは「正直で素直な自分」を非難、否定、拒絶されたという経験でした。

私はそんな「痛み」から自分を守るために自分の「本音」を隠したり、無視したりしながら、自分以外の誰かに「受け入れられるような」言葉や行動を選んできたのでした。
それも無意識に、なんの疑問も持たずに、それが正しい選択なのだと信じて。

そして自分自身にどんどん鈍感になり、自分自身の「主導権」を他人に明け渡すようになっていきます。

人は常に悩み、迷いながら生きています。
悩まなくなる日はこないし、迷わなくなる日もこないと思うのです。
それよりも大切なことは、悩みながらでも、迷いながらでもいいから
人に理解されなくても、非難、批判されてもいいから
「自分の意志で選択」し「自分の素直な気持ち」を認めて受け入れていくことなのだと思います。

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