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猫と和解せよ

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猫を作っていた自分の話
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サビとブチトラ

サビとブチトラ

共同アトリエの作家に、ひとり猫好きのお嬢さんがいて、自腹を切って地域猫に餌をやっている。

野良たちは世代交代が早い。
元々いた黒猫と鉢割れは、後から来た太々しいトラ猫に追い出され、やがてそのトラと白猫がつがいになって、子猫が3匹生まれ、そのうち白猫と子猫たちの姿が見えなくなったと思ったら、最近は錆猫と斑トラが幅を利かせている。

今までの猫は概ね、よほどでないと人に近づかなかったのだが、新顔の2

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猫再び

猫再び

共同アトリエには、時々わたしのnoteにも登場する、自腹で地域猫に餌をやっている作家さんがいる。
先日の朝、彼女がこちらの顔を見るなり「タグチさん、お願いがあるのです」といってきた。

このお嬢さんは決して悪い人ではないが、相当ちゃっかりしている。
そして押しが強い。

そもそも地域猫への餌やりも、管理者側の「そういう事されると、近所から苦情が来るかもむにゃむにゃ・・」というやんわりしたお達しに、

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猫と和解せよ(3)

猫と和解せよ(3)

意地悪な性格なので、今日はにゃん吉の待ち構えている時間を避けて、こそっと餌を置いてみる。

しばらく見ていると、これ幸いとカラスが飛んできて、キャットフードを啄んだりしている。

不思議なもので、それはそれで、なんか癪なのだ。
ほら、お前たちの食い物がなくなっちまうぞ。
隠れてないで、はやく出てこいよ、などと思ってしまう。
男女の間なら、ツンデレというのかしらん。
気味の悪いおじさんである。

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猫と和解せよ(2)

猫と和解せよ(2)

にゃん吉は相変わらず可愛げがない。

2日目にして、もう逃げない。
逃げないどころか、11時と4時、食事の時間にはきちんと待っていて、ものかげからこちらをうかがっている。
目が「遅い」といっている。
なのに皿に盛ってやったキャットフードだの缶詰だのを、こちらの目の前では食べない。
きっちり10m離れるまで待っているのだ。
可愛くない。

ミケちゃんの方がもう少し奥ゆかしい。
にゃん吉は真っ先にお高

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猫と和解せよ(1)

猫と和解せよ(1)

シェアアトリエで一緒のお嬢さんがアイルランドだかフィンランドだかへ旅行するというので、その間、彼女が世話している地域猫の餌やりを仰せつかった。
にゃん吉とミケちゃんという、なんの捻りもない名前で、驚くほど愛想も可愛げもない猫たちなのだが、まぁ預かった命だ。
それにわたしは一回ちゃんと猫と仲良くしなければならない。
猫には恩義がある。

わたしは最近まで、10年以上猫モチーフの作品ばかり作っていた。

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