猫と和解せよ(1)
シェアアトリエで一緒のお嬢さんがアイルランドだかフィンランドだかへ旅行するというので、その間、彼女が世話している地域猫の餌やりを仰せつかった。
にゃん吉とミケちゃんという、なんの捻りもない名前で、驚くほど愛想も可愛げもない猫たちなのだが、まぁ預かった命だ。
それにわたしは一回ちゃんと猫と仲良くしなければならない。
猫には恩義がある。
わたしは最近まで、10年以上猫モチーフの作品ばかり作っていた。
ある時気まぐれで手がけた猫作品のうけがよく、それから時々思い出したように作っていたのが、偶然同じ時期にふたつの猫系ギャラリーから声をかけてもらったのがきっかけだった。
年に二度、ギャラリーを新作でいっぱいにするのはなかなかに骨の折れる仕事だ。
いきおい、わたしはずっと猫を作り続けることとなったのである。
ちなみに途中で、必ずしも新作である必要もないことに気づくのだが、それはまた別のお話。
ところが、その頃から世間は猫ブームだということで、わたしなんぞの作品もたまには売れるようになった。
リーマンショックからこっち、景気の良い話はこれっぽっちもなかったから、正直これは嬉しかった。
いや、それで食えるようになったとか、全くそういう話ではない。
むしろ自分の至らなさというか、覚悟の無さみたいなものを思い知らされる時期でもあった。
けれども、たまにでも世の中に必要とされているという思いは、生きる上で大切なことなのだ。
そういう意味でわたしは猫に救われている。
けっきょく猫専業作家は辞めてしまうのだけれど、とにかく猫には恩義がある。
にゃん吉がいかに無愛想であったとしても、餌をやりに行くのだ。