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なぜマッチングアプリ婚は増加したのか

初めに

こんにちは。田渕 創ノ介です。Note投稿 第8作目は「なぜマッチングアプリ婚は増加したのか」についてです。

尚、本文では文字数の関係上、常体(~だ、~である、など)を用いている事をご了承ください。



本文

近年、マッチングアプリによる結婚、通称「マッチングアプリ婚」が隆盛を極めている。マッチングアプリとは、スマートフォンやパソコンなどを使用して、オンライン上で「恋人」や「結婚相手」の候補となる相手を探すためのアプリのことである。本レポートで取り上げていく著書『夫婦格差社会』(以下、本書と呼称する)は2013年に出版された書籍であり、まだそれらが一般的な存在でない時期に出版された。しかし、2022年に明治安田生命による全国の20~70代の既婚者1620人に聞いたインターネットアンケート調査で“結婚のきっかけ”ランキング1位が「マッチングアプリ」で、「職場や学校」を上回った。もしも本書が2023年に改訂されていたら、第2章のP57の表2-1の結果は大きく異なっていただろう。レポート筆者も近年、SNSや電車の中でマッチングアプリの広告などを見かけて、それらの現状について興味を抱いた。本レポートでは新たな夫婦の出会いの場になりつつある「マッチングアプリ婚」がなぜ増加したのかを3つの理由と本書を元に考察していく。

1つ目の理由に職場結婚の衰退が挙げられる。それには社縁意識が希薄化したという背景が存在する。本書の第4章のP120からP122までの「職場結婚の衰退」の項に「1950年代から80年代、すなわち高度経済成長期および安定成長期の日本企業では社縁意識が強く、男女が配偶者を見つける場として企業が機能していた。しかしその後の低成長時代に入ると雇用形態、労使関係や労働者間の人間関係が変化した。」とあるように、日本経済が成長していた時期は社縁意識が強く、男女がその流れで職場結婚をするケースが多かった。しかし、バブル経済が崩壊した後の低成長時代に突入すると、社内での連帯意識が弱まり、よって社縁意識も弱まった。この理由としては、低成長期に入ったことで、正規雇用者が減少し、今まで一般職の女性が従事していた・業者に外注されていた補助業務がパートやアルバイトに代表される非正規雇用者に代替されてしまったからである。非正規労働の特徴として、流動性が高いことが挙げられる。つまり長く同じ場所で働かず、人の出入りが激しいので、男女の出会いが少なくなってしまったのではないか。

2つ目の理由にマッチングアプリの敷居の低さが挙げられる。結婚を所望する男女は「婚活」と呼ばれる結婚相手を探す活動に勤しむ。婚活の方法は様々挙げられる。代表的なものとして、お見合いパーティーや結婚相談所などが挙げられる。近年、その中にマッチングアプリが含まれつつあり、これら3つの中で最も敷居が低いのがマッチングアプリである。その理由としてはまず、お見合いパーティーや相談所などへ直接向かわなくても、スマホやパソコンでいつでもどこでも婚活が可能だからである。また、マッチングアプリは自身の求める条件に適した相手をAIが提示し、且つ提示された相手とチャットで直接のやり取りができるので、お互いの価値観が合った相手を見つけやすいというメリットがある。さらに、お見合いパーティーや相談所では金銭面などでのコストが発生しやすい。しかしマッチングアプリは基本的に無料でアプリを使用できる。つまり、意中の相手を見つけるまでのコストがそこまで掛からないという訳である。一方で、敷居の低さだけでなく、他の婚活と比べてもコストパフォーマンスが優れているというメリットも存在する。近年では「Z世代」と俗称される1990年代後半から2010年生まれの若者には「時間に見合った」費用対効果、通称「タイムパフォーマンス」という価値観が芽生え始めている。マッチングアプリは、スマートフォンなどでいつでも婚活を行えるので、前述の金銭面などのコストだけでなく時間を効率的に有効活用することもできる。故に需要が高まりつつあるのではないか。

3つ目の理由に新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で「出会いの機会」が減少してしまったことが挙げられる。2020年4月7日に当時の第4次安倍晋三政権が緊急事態宣言を発令してから、人々は外出や出勤、登校などを制限・自粛されてしまい、これによって学校や職場、様々な場所での人と人の出会いが少なくなってしまったと考える。対面での3密を避ける為に人々はリモートワークやテレワークなどを行い、コロナ禍以前よりもSNSやインターネットを使用する機会が増えた。それに伴いインターネットを使用したコミュニケーションツールの需要が高まった。具体例としてはSkypeやGoggle MeetやSlackなどが挙げられる。これらは主にビジネス面でのコミュニケーションに使われているが、恋愛面でも、上記に挙げたようにパンデミックの影響で外出が制限・自粛され、男女の出会いの機会が減った。その隙間にインターネットを使用した恋愛コミュニケーションツールであるチャットアプリが台頭してきたのではないか。

以上、3つの理由を述べた。まとめると、マッチングアプリ婚が増加したのは、①社縁意識が希薄化し、職場結婚が衰退した。②その状況下で新型コロナウイルスによるパンデミックがさらに「出会い」の機会を減らした。③人々は外出自粛の中でも婚活が出来るマッチングアプリで出会いを求めたので、需要が高まった。という3つのプロセスを踏んでいるからであると考えた。

参考文献

橘木俊詔・迫田さやか『夫婦格差社会:二極化する結婚のかたち』(2013年:中公新書)

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最後に

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