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太平川 源流を探る

はじめに

『塩沢(ロプノール湖)の水は地下を流れ、その南で地上に出て黄河の源となります』
司馬遷による「史記・大宛列伝」に記された張騫のひとことです。ロプノール湖とは中国西部にあるタクラマカン砂漠にかつて存在した湖で、そのほとりには楼蘭王国が栄えていたと……楼蘭王国とは「楼蘭の美女」として知られるミイラが有名なシルクロード沿いの国でしたが、4世紀頃にロプノール湖が干上がると、それと同時に歴史から姿を消した謎の王国です。しかし、紀元前1世紀頃にはまだ充分な水があったことが、上記の張騫の言葉からわかります。張騫は紀元前100年頃に活躍した人物ですから。

張騫・・・世界史を学んだ方はおわかりかと思いますが、初めて西域を旅し、事実上彼の功績によってシルクロードが開通した、そういう人物です。張騫は漢の長安から大宛国・大月氏国(いずれも現在のウズベキスタン・タジキスタン周辺)までを旅し、その途上で黄河の源流にまつわる話を現地の人から聞いたのだ、とされます。

しかしロプノールが干上がった現在も黄河の水はまったくもって涸れておりません。この点、張騫の情報は間違っていたのでしょう。

前置きが長くなりました。このようなことにロマンを感じるのはたぶん私だけかもしれず、また、たまたま読んでくださった方には何の共感も得られないかもしれません(たぶんそうに違いないでしょう)。ただゴールデンウィークも終盤に入り、息子は帰り、妻も実家に帰省したので、一人残されて暇を持て余した私は、少し張騫のまねごとでもしようかと思ったわけです。

太平川とは

これまでいろいろな土地で暮らしてきましたが、縁あっていまは秋田市で暮らしております。市内にはいくつか川が流れておりますが、たまたま家の近所を流れているのが太平川という河川でしたので、これにもきっと源流というものがあるはずだ、と考えた次第です。
ちなみに太平川とは、こんな川です。(秋田市の公式サイトです)

春には河川敷に植えられた桜並木が見事で、今年も歩いて三回ほど花見をしてきました。私の癒やしの場所です。
もちろんいまは桜も散ってしまっています。以下はいま現在の太平川の様子です。

場所によってはせせらぎの音がします
鬱蒼とした感じですが、両岸には道路も整備されていて、きちんと管理されています。

一応、事前にGoogleマップで源流がどこら辺か確認したところ、市東部に聳える太平山の中腹から流れ出ていることがわかりました。いざ出発、と思いましたが、私は今まで本格的な登山など経験したこともなく、おまけに秋田は熊の名所です。だいぶ怖い・・・。

と、いうわけで行けるところまで行こう、という形に自分のなかで収まりました。マップ上では近くにもあるとのことでしたので、それが見られれば充分ではなかろうか、と妥協する形でスタートしました。(タイトルに騙されたと感じた方には、申し訳ありませんと謝っておきます)

見たことのない滝を目指す

滝は「不動滝」やら「不帰沢大滝」とかいうものが地図上で確認できました。だいたい県内の滝やダムについては知っているつもりだったのですが、これらの滝について私はなにも知るところがなかったので、おおよそこの辺を目的地にしようと定めました(実際のところ、まともな道路がないようなところなので、このあたりに行けば他にも滝はあるんじゃないか、と短絡的な思考で決めました)。市街地から45分ほどで到着する距離です。

市街地を抜けるとのどかな田園風景が広がります

どんどん山の方に入っていって、ふもとの集落を抜け、林道に入りました。

すでに舗装されていません
どんどん細くなります

この道は何カ所か土砂崩れのあとがあったり、断崖ぎりぎりのところを通過したり、となかなかに難所でした。それこそ「ポツンと一軒家」に行くテレビ朝日のスタッフさんの気持ちがよくわかりました。

林道は「丸舞林道」という名称でした。

少し車を止めることができるスペースがあるな、と思ったら、そこが登山道入り口でした。ここからは徒歩です。

登山道へ入る

橋が流失していると・・・?

登山される方はこういうところを難なく行くのでしょうねえ。私は一人で行くのは初体験でしたので、ややビビりました。そもそも入山届とか出し方もよくわからないので、やはり奥地には行けません。ただ、近くに川の流れる音がしたので、それほど遠くなかろうと思って歩き出しました。
野鳥の鳴き声が心地よいのか、あるいは不気味なのかよくわかりませんでしたが、テレビなどでよく聞く鳴き声を実際に聞けて感動したことは事実です。

要所に石が敷かれていますが、完全に道なき道です。

足もとが悪く、熊笹に行く手を阻まれながら前に進むと・・・いきなり滑落しました(笑)。大事には至りませんでしたが、本当に坂道で脚が止まらなくなることってあるんですね。ルパン三世の映画でカリオストロの城ってありましたが、あの中でルパンが城の屋根の上で転がっていった道具を拾おうとしたらどんどん止まらずに・・・という場面がありました。自分の経験がまさにそれで、最終的には手と膝をついて止まることができました。
そのときカメラを守ろうとして握っていたら、偶然動画のスイッチが入ったので、一部始終撮れていたのです。が、動画はアップできないので残念ながら・・・

思いのほか清流でした
1本が流され、残されたもう1本の橋の上から撮った写真。橋はコンクリ造りでしたが一人立つのがやっとの狭さでした。足がすくみました。

そんなこんなしながら、それでも川までたどり着きました。まだ滝は見えませんでしたが、水の透明度も高く、青森県の奥入瀬渓流にも負けないほどの美しさでした。秋田は見どころが少ないので、きちんと整備すればいいのに・・・などと余計なことを思ってしまいました。

登山者の方がテントでも張る場所なのでしょうか。比較的広いスペースが確保されていました。
こうして見ると、新緑の木々が綺麗ですね。ただ、この日は異様に暑かったです。マイナスイオンを感じるどころか、久しぶりに汗が滴ってきました。
こちらが太平山です!
別アングルから


さて、暑いし歩き疲れてきたし、いきなり滑落したし、だったので、滝は見ることができなかったけど、もう諦めて帰ろうかと思い、来た道を戻って車のところまで行きました。

滝を探る

道にはシダ植物が満載です。恐竜がいそうな感じ・・・いや、その前に熊が怖い
車に乗り込む前に周囲を撮影。いかにも林道といった感じ
花粉症の人が卒倒しそうな巨大な杉の木。秋田は杉の名産地です。(この辺で採取されるかどうかはよくわかりません)
広葉樹もでかいものがあったので撮影しておきました

諦めて車に乗り込んだことを後悔もせず、帰ろうとして来た道を30秒ほど戻ったところ、右手に川への降り口らしきものを発見し、車を止めました(来たとき気付かなかったのかな?)。

こりゃ崖崩れではなく、確かに道だ

さっき降りた道は角度が急で足が止まらず転びましたが、こちらは藪がひどく、足でかき分け、手で振り払いしながら進むと、やはり川岸に辿り着くことができました。

滝はどこかな〜
水は本当に透明でした。

無事に川に辿り着くことは出来ましたが、相変わらず滝は見えません。でも付近にそれらしき音はするのです。おかしいなと思いつつ辺りを見回すと、この川のどこかが段差になっていて滝になっているのではなく、この川に合流する川が滝になっているのでした。ついに発見しました。

うーん 思いのほか小さい・・・
けど確かに滝!
目指してきた滝とはたぶん違うけど・・・

帰り道

本流の流れは本当に美しいです
うん、素晴らしい!

今回は、これで諦めて帰路につくことにしました。何度も言いますが滑って転んだし・・・笑い話で済む程度だったからよかったものの、人に迷惑かけることになったらまずかったな、と反省はしています。次回はいい靴などを準備して行きたいと思います。ただ、ひとりだとちょっと楽しみも半減するかな。

林道から眺めるのが一番安全かつ楽しめる方法かも

結局源流は発見できず、見つけた滝も違う滝だったという情けない結末でしたが、それなりに楽しかったです。張騫は砂漠を行ったわけですが、私は密林を越えて行きました。今回はそれで満足します。暑かったけど・・・。

終わりに

オチも中途半端で不完全燃焼のひとり冒険でしたが、なんか少年に戻れた気がします。ただ真剣な話をすると、やはり滑落の危険はありますので、皆さん山に入るときは絶対に注意してください。私は文面上このような書き方はしましたが、体力・脚力には自信があったのでどうにか対応できました。もし自分もこんな体験がしてみたいと思った方は、ぜひご自分の体力と脚力に相談しながら行動していただくようお願いします

また、水辺はすでに虫が多かったです(笑)。それも対策を・・・。

それではここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。

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