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"巨星"墜つ(下)

ープロ野球選手/斎藤佑樹

プロ野球・北海道日本ハムファイターズ投手の斎藤佑樹。33歳。大きな期待を背負うも目立った活躍なく、10月1日に今シーズン限りでの現役引退を表明。17日のオリックス・バファローズ戦が現役最後の登板となった。2006年の全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)の優勝投手。後に米大リーグのニューヨーク・ヤンキースでも活躍した投手・田中将大(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)に投げ勝った実績があっただけに、プロ野球の舞台でもう一花咲かせてもらいたかった。"巨星"というには実績不足感が否めないが、存在感は抜群で、その姿が見られないと思うと実に寂しい。

関連リンク(連載「『"巨星"墜つ』シリーズ」):「"巨星"墜つ(中)ー作曲家/すぎやまこういち」「"巨星"墜つ(上)ー漫画家/さいとう・たかを

苦しかった11年間

かつての輝きを取り戻せないまま、11年間の現役生活に幕を下ろした。17日の最終登板も、夏の甲子園で「ハンカチ王子」と呼ばれて将来を嘱望されたころの姿はない。時速130kmを超えるボールはほとんどなかった。結果、四球。ただ、苦笑い混じりの笑みからは、事前に斎藤自らが自身に課した「ありのままの今の自分」は出せたことが受け取れる。

苦しかった現役生活に違いない。早稲田大学を経てプロ入りした後、ケガに苦しみ、目立った戦績がない。斎藤は最終登板後の引退セレモニーで、これまでの道筋を振り返る。「『(高校時代、スーパースターが持つような運を)持っている』と言われた事もあった。だが、本当に持っていたらいい成績も残せただろうし、こんなにケガもしなかったはず」。

ただ、こうも言う。「『諦めて辞めるのは簡単、どんなに苦しくてもがむしゃらに泥だらけになって最後までやり切る』ー。栗山監督に言われ続けた言葉だ。その言葉通り、どんなにかっこ悪くても前だけを見てきたつもりだ。ほとんど思い通りにはいかなかったが、やり続けたことに後悔はない」。そして、それは多くの野球ファンが確かに目にしてきた姿と言える。

輝ける未来

プロ入り後、成績を挙げられない自分に対し、毎年ルーキーが入団してくる。後輩の中には、米大リーグのロサンゼルス・エンゼルスで大活躍している"二刀流"大谷翔平もいた。自分を追い抜いていく後輩に、自身を不甲斐なく感じた日々が続いただろう。心ないファンの言葉に傷ついたこともあろう。それでも腐らず、ひたむきに努力したことは、人として立派だ。

マウンドを降りた斎藤佑樹。新たな人生で輝きを取り戻すだろう。
(終わり)

(写真:『りすの独り言』トップ画像=フリー素材など基にりす作成)

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