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ITエバンジェリスト 若宮正子さんxWHILLソフトウエアエンジニア

高齢者に寄り添うデジタル化


「あなたのWILL(意思)を叶える場」として活動を広げるWHILLコミュニティ。

このシリーズでは、WHILL社員が会いたい方や、日本を変えるイノベーターや著名人の方と、WHILL社員の対談を紹介していきます。

今回は、80代でiPhoneアプリ「hinadan」を開発したプログラマーそしてITエヴァンジェリストでもある若宮正子さんを迎えての対談が実現しました。

APPLE社が開催したWWDC2017で「世界最年長のプログラマー」としてサプライズゲストとして紹介された若宮正子さんから、現在の活動内容についてお伺いしました。

お相手として対談するのは、WHILLのソフトウエアエンジニアであり20代である河原。なんと20代と80代のエンジニア対談が叶いました。

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WHILL河原 WWDC2017をライブ映像で見ていて、日本人の方が登場したのでびっくりしたんです。その時に登場した若宮さんと、こうやって対談できるとは思っていませんでした。

若宮 そうなんですよね。よろしくお願いします。

WHILL河原 ティム・クックさん(Apple最高経営責任者)にもお会いしたんですよね?

若宮 そうなんですよ。ティム・クックさんが出張で日本においでになった時に、たまたま時間があいたらしいんです。彼は空いた時間に「日本の居酒屋に行きたいのと、正子に再会したい」とおっしゃったんです。もう、これは再会するしかないですよね。私は、あまり人見知りしないので、友達のようにいろいろお話しさせていただきました。

若宮さん


誰一人取り残さないデジタル社会を目指して

若宮 昨年の秋頃に、デジタル改革関連法案ワーキンググループが作られまして、8人の有識者のメンバーとして参加させてもらいました。今回のデジタル改革が「誰1人取り残さないデジタル改革」というテーマなので、高齢者や障害者の立場で意見を伝えられる私が選ばれたんだと思います。

WHILL河原 実際にデジタル庁では、どのような活動をしているんですか?

若宮 デジタル庁では、それぞれの役所や自治体、そして企業においてのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。そして個人に対しても、誰1人取り残さないようにデジタル化をしていく活動をしています。

私が担当している活動の一つは、まだデジタルを触ったことがない人に向けて行う「デジタル活用支援」です。簡単にいうと、お助けマンのようにデジタルについて教えてくれたり手伝ってくれる仕組みを作る取り組みなんです。

もう一つは、10月10日のデジタルの日というイベントです。そのイベントの中でも、デジタル・ディバイド(情報格差)を埋めるための活動をしています。あまりデジタルに詳しすぎる人では駄目なのですよね。デジタルに詳しい方は、これからデジタルデビューする人向けにWebサイトを作って宣伝してしまいます。しかし、そのような人たちはWebサイトさえ見ないのです。それよりも、テレビなどの多くの人の目につくオールドメディアを使って宣伝した方がいいんです。

WHILL河原 確かに、テレビなどで宣伝した方が、多くの高齢者の方も見てくれるので情報を広げられますね。

コンピューターに助けられた銀行員時代

WHILL河原 若宮さんの今までのキャリアや、銀行員だった頃のお話を教えていただけますか?

若宮 そうですね。高校卒業してから銀行に勤めていましたね。

WHILL河原 銀行員として働いている時は、他にクリエイティブな仕事などは考えていなかったんですか?

若宮 私が銀行に入ったのは戦争が終わったすぐ後だったんです。当時はまだ、オフィスワークは江戸時代と変わってなかったんです。

WHILL河原 紙とペンみたいな感じですか?

若宮 はい。そろばんで計算して、お札は指で数えて、ペンにインクをつけて字を書くという時代でした。私は手が不器用なので、どの作業をするにも先輩から叱られていたんです。機械化が進んだことで、電子計算機やお札を数える機械などが導入されたことで手先が器用である必要がなくなったんですよ。そのため、機械やコンピューターのおかげで叱られなくなりましたね。

ひなだん

80代でリリースしたアプリ「hinadan」に込めた想い

WHILL河原 実は、若宮さんが作られたアプリ「hinadan」を試させていただきました。だけど、僕自身がひな壇自体の配置が分からなくて、出来なかったんです。

若宮 それが大事なんですよ。なぜなら、高齢者が楽しめるアプリとして作ったので、ひな壇の法則を知っている高齢者は問題なくプレイできるんです。

ひな壇に飾られている場面は、一番上に飾られている女雛と男雛の結婚パーティなのをご存知ですか?下の段にいる三人官女はウェイトレスで、五人囃子は生バンドのようなものなんですよ。そして、高砂の翁と媼(おきなとおうな)は、清掃員として再雇用された高齢者なんです。
これって今の世の中でも、見かけるようなシーンですよね。1,000年前だって、今と実情は同じだったということなんですよ。

WHILL河原 なるほど、そのようなお年寄りの昔ながらの知識があるからこそ、このアプリがクリアできるということですね。そしてアプリを子どもとプレイすることで、年齢が違う者同士のコミュニケーションが発生するわけですね。

若宮 そうです。娘さんやお孫さんに教えることができるということは、高齢者でも優越感を感じて楽しめる事に繋がります。スピードを求められるアプリだと、お年寄りは追いつけず負けてばかりになってしまいますからね。私はプログラミング能力があったから、このアプリを作ったのではなくて「こういうアプリを作りたい」という思いがあったから作ったんです。

WHILL河原 やりたいことがあって、その方法としてプログラミングがあったという事ですね。

若宮 当時、開発言語のSwift使っていたんですが、分からないことがあったのでSwiftの本を書いている方にメールで質問を投げかけたんです。そしたら「あなたのように、何がやりたいのかという事と、大道具や小道具が既にそろっていれば、もう出来上がっているのと同じです。あとは、周りのみんなに教えてもらい手伝ってもらうこともできるので大丈夫ですよ」と言っていただきました。
このアプリも、声優としてボランティアで参加してくれた女優さんをはじめ、本当に色々な方から、手取り足取り助けてもらいながら作ったんですよ。

デジタルは楽しいという事が伝われば苦手な人も減る

WHILL河原 若宮さんのように新しいものに興味がある人よりも、どちらかというと新しいテクノロジーやデジタルを苦手とする人のほうが日本全体では多いと思うんです。そういう人たちは、どうすればデジタルを使えるようになるのかとお考えですか?

若宮 デジタルを使うことで良いことや面白い発見があるという事を、あまり知らないのではないかと思うんでうすよね。

WHILL河原 使ったらこんなに楽しいよという事を教えてあげれば良いってことですね。

若宮 そうなんです。ですから「老いてこそ、デジタルを」という本を書いたんです。私と同年代の人たちは「年寄りが欲しいものなんて近所に売ってない」ってよく言うんです。たとえば座布団や座布団カバーなんて、最近のコンビニやスーパーには売ってないですよね?じゃあ、どこに買うのかというとネットショップなんですよ。

WHILL河原 確かに、ネットショップを使えばお店に売ってないものでも普通にありますよね。

若宮 高齢者が情報を調べる際は、スマホやコンピューターを使うのではなく、まずはAIスピーカーの方が良いんじゃないかと思ってるんです。スマホはコンピューターの機能を小さな箱にくしゃくしゃに詰め混んで持ち運びしやすくしたものです。しかし高齢者の場合は、外に出かけない人の方が多いんです。だからこそ、話しかけるだけで使えるAIスピーカーの方が実用的だと思います。スマホやコンピューターは、ある程度手順を理解しないとすぐに使えるようにはなりませんよね。これは若い人にも共通だと思うんです。だけどAIスピーカーは年齢問わず誰でも使えるんです。

WHILL河原 AIスピーカーは話しかけたら、返事をしてくれますもんね。

若宮 もちろん、テレビや手紙で情報を得ることはできます。ただ発信されている情報量が少ないんですよね。高齢者は、その少ない情報しか得られないんだと思い込んじゃっているんです。
それこそ、車椅子やスマートウォッチのように、もっと高齢者がデジタルに触れるのに役立つ物ってあるんですよ。ただ、今はまだ物好きな人だけが買っているお高い物というイメージが強いんです。より多くの人が購入するようになれば、値段も下がるので取り入れやすくなりますよね。高齢者の方がもっと手軽にデジタルデビューすることで、得られる情報量はもっと増えていくでしょうね。

WHILL河原 だからこそ、デジタルの楽しさや便利さを教えてあげるっていうのが本当に大切になるんですね。

わかみやさんまさこ

日常に取り入れる事が
高齢者のITリテラシーをあげる事につながる

WHILL河原 日本は、エストニアやアメリカなどに比べるとITリテラシーが低いなと思ってるんですが、どう思いますか?

若宮 日本はものすごくITリテラシーが低いです。韓国、シンガポール、台湾などは高齢者のITリテラシーが高いんですけどね。ITリテラシーが低いことが原因で、コロナのワクチン予約でも問題が起きましたよね。「オンラインで予約ができないから固定電話回線を増やせ」というような人も多かったと思います。

WHILL河原 そんな日本のITリテラシーを上げるためには、何が必要なのでしょうか?

若宮 エストニアでもそうなのですが、家族や周りの人がすごくサポートしてくれるんです。日本でももちろん、情報に疎い高齢者をお子さんがサポートしているのですが、教えてあげるのではなく代わりにやってしまうんです。そうではなくて、一緒に実践しながら教えてあげた方が、情報に疎い人のためには良いんですよ。

WHILL河原 やってあげる、ではなくてやり方を教えてあげるが大切なんですね。

若宮 電子政府として知られているエストニアの元大統領は、電子政府が成功した理由を「銀行の頭取を集めて協力依頼をしたから」と言っているんです。なぜ、銀行が関係してくるのか気になりますよね?
例えば、確定申告や選挙投票などを電子化しても、年に1〜2回程度しか利用しません。しかし、銀行で利用するオンラインバンキングの仕組みを、政府が電子化したパッケージに組み込むことで、たくさんの人が日常的に使うようになるわけです。


前半では、若宮正子さんの現在の活動内容や、ITリテラシーに対する考え方についてお伺いしました。


次回は、若宮さんにWHILLの自動運転システムをご紹介し、また最新型機種のWHILL Model C2を実際に体験していただきます。若宮さんからどのような意見をいただけるのか、ぜひお楽しみに!

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