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障害者結婚できるのか問題


Googleで「障害者 結婚」と検索すると、上位に「結婚できない」「結婚反対」などのワードが出てくる。「令和4年版少子化社会対策白書」によると、日本人の生涯未婚率(50歳時点)は、男性28.3%、女性17.8%となっている。


一方で、「平成25年版障害者白書」によると、障害者の未婚率は身体障害者35.4%、精神障害者63.9%、知的障害者96.7%という結果が出ている。やはり障害者にとって、結婚へのハードルは高いといえるだろう。

障害者の未婚率

知的障害者・・・96.7%
精神障害者・・・63.9%
身体障害者・・・35.4%

平成25年版 障害者白書(概要)|厚生労働省


私は、双極性障害と全身の脱毛症を持っている。始まりは3年前。当時は、もう一生結婚はできないだろうと、私より母の方が落ち込んでいた。しかし、今月で結婚して丸2年。特に大きな問題もなく3年目に突入し、周囲からも「よく続いてるよな」と驚かれることもある。(まあまあ失礼)


実際はいろいろなことがあった。2回休職したり、新しい病気になったり、退職して家を失いかけたり。それでも、ここまで続いているのは、相性はもちろんだが、日常生活での大小さまざまな配慮が大きいとも思う。



そこで、独身時代に私が疑問に思っていた「障害者結婚できるのか問題」について、現在の私の視点から解き明かしていきたい。



そもそも結婚願望はあったのか



当時は仕事中心で、結婚願望はゼロ。しかし病気になったことで、将来について考えざるを得なくなった。特に大きかったのは、脱毛症である。


夫とはマッチングアプリで出会った。私はマッチングアプリヘビーユーザーで、夫に出会うまで、約8年間使い倒してきた。数々の歴戦を重ね、ある程度の勝率は保っていたが、脱毛症になってからガクッと下がった。


ハゲカミングアウトが確実に出会いを遠ざけていた。フェードアウトされることも多々あり、めちゃくちゃ落ち込んだ。脱毛症は完治が難しく、自然治癒率は10%以下ともいわれている。ウィッグをつけているとはいえ、一生ハゲの可能性はかなり高く、「このままでは一生誰とも結婚できないのでは」と、悲しい現実に愕然とした。


「結婚しない」と「結婚できない」の間には大きな違いがある。私は「できない側」の人間になったのか、と母の涙の意味がようやく分かった気がした。今まで切り捨ててきた「結婚」という選択肢がなんと尊いものだったか。こうして、恥ずかしい話だが、結婚できそうにないと悟ってから、結婚願望が高まってしまうという、悲しい負のスパイラルに陥ってしまった。



どうやって夫と出会ったか


私にとって、マッチングアプリはライフワークであり、婚活パーティーや結婚相談所という選択肢はなかった。当時住んでいた街では、夫と出会うまでに5人と出会い、3人はフェードアウトしたものの、残りの2人は2回目のデートまでこぎつけた。ハゲでも気にしない人はいる、ということが分かり、少し自信がついた。


しかし、この5人に双極性障害はカミングアウトしていない。6人目で出会った夫とデートを重ね、お付き合いを始めて1か月程してから、ぬるっとカミングアウトした。ハゲはよくても、精神障害はちょっと、と思う人は少なくないと踏んでいたから。重々しくならないよう、できるだけあっけらかんとしながら伝えた。



「仕事つらいわ~こんな忙しかったら鬱になってまうわ~まあすでに躁鬱やけどな。ワハハ」



という感じ。この作戦のおかげか、夫は「別に何も思わなかった」らしい。夫が物事を深く考えないタイプで良かった。


当時は知らなかったが、障害者向けの婚活パーティーや結婚相談所があるそうなので、興味がある人は調べてみてほしい。





結婚生活の実態



共同生活をするにあたり、最初に2つのルールを設けた。1つ目は家事分担。2つ目はお互いの細かな情報共有。我が家では特に、2つ目の情報共有を大事にしている。



夫の仕事のスケジュールはもちろんだが、私の体調や双極性障害の特徴などもしっかり共有した。睡眠時間は8時間以上必要なこと。生理中は体調が悪く、夕食を作れない可能性が高いこと。大きな環境変化があると約半年後に反動で鬱になりやすいこと…などなど。



これらの特徴を伝えるだけでは不安が大きいため、解決策や配慮してほしいことも一緒に伝えた。このおかげで、お惣菜や外食の罪悪感が減り、鬱に備えて仕事や家事をセーブできて、大きな打撃を防げたと思う。



もちろん、お互いの配慮が当たり前ではないことも共通認識として持つようにし、感謝の気持ちを言葉にしている。このような小さな気配りは、健常者・障害者関係なく心がけるべきであり、障害者だからといって過度に申し訳ないと思う必要もないと私は思っている。



障害者と結婚することのメリット・デメリット



結婚をメリット・デメリットで考えるのはナンセンスだと思うが、Google検索で「障害者結婚 メリット」というワードが上位に来る以上、不安に思う人は多いはず。そこで、夫に正直な気持ちを訊いてみた。


質問1,障害者と結婚して感じたメリットは?
夫「障害者手帳の恩恵を受けられること!タダで動物園に行けちゃうもんね~ラッキー!」

質問2,反対にデメリットは?
夫「お金と時間のロスが大きいこと。毎月の医療費はばかにならないし、たまに病院に付き添うから、その分時間も取られる。でも、自立支援医療制度のおかげで医療費負担は少し軽減されてるから、使えるものは使って、上手くやっていければそれでいいと思う。」


う~ん、現実的で合理的。意外と私の情緒不安定は気にならないようで驚いた。どうやら、気分の浮き沈みは自分含め誰にでもあるから、らしい。やはり、躁鬱の準備や解決策があることは、我が家にとってかなり役立っていることが分かった。



将来のこと・子どものこと



ここからは、あくまで私個人の考えである。
双極性障害と脱毛症を持つ私にとって、子どもを産むことはかなりハードルが高い。どちらも遺伝する可能性がある以上、私は子どもを産めない。幸か不幸か、私は子どもが欲しいと思ったことはなく、夫も同じ考えなので、そこについては助かっている。


私は自分の病気を、「可哀想」だと思ったことはない。他者がどう思うかは自由だが、私は私自身の病気を「ただのシステム移行」くらいにしか思っていない。あえてひけらかすことはしないが、隠すこともしていない。


しかし、私と子どもは全くの別人格だ。私はハゲと双極性障害を受け入れていても、子どもはそうではないかもしれない。私がどれだけ幸せに生きる道を模索しても、それが絶対に子どもを幸せにするとは限らない。


将来、鬱が悪化したら?その時夫がいなかったら?「子どもをヤングケアラーにしてしまうかもしれない」という可能性がある以上、私は子どもを作れない。精神障害がありながらも、子どもを持つ夫婦はたくさんいる。ロールモデルはたくさんいる。障害があるからという理由で出生を否定されるものではない。
しかし、私は産まない。今後も出産という選択肢は選ばないだろう。




障害者結婚できるのか問題の結論



結論は「できる」。数年前、ゼクシィのCMで流れた「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」というコピー。私はこの言葉に強く共感する。


我々の場合、結婚を切り出したのは私から。「障害があるから、自分から結婚したいなんて言えない」なんてことは思わない。理由はシンプル、「好きな人とずっと一緒にいたいから」。障害者でも健常者でも、夫婦間の問題は必ず起きる。その時は2人で解決していけばいい。


たしかに、私は「結婚できないから結婚したい」という謎のスパイラルに陥っていた時期があった。しかし、夫とお付き合いしていく中で、自分にはどうしても他者の支えが必要な時があると自覚したからこそ、「お互いに」支え合うという重要な部分に焦点が合った気がしている。


「障害」にスポットを当て続けるよりは、今できることや解決策に目を向けた方が良い。『病めるときも健やかなるときも、富めるときも貧しきときも、愛し敬い慈しむことを誓いますか?』
ここに、障害の壁はあるだろうか。

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