「話す」は1割、「聞く」は9割【ブックレビュー】
「〇割」という言葉が心を揺さぶる時期があった。
書店に並ぶ、「〇割」の表紙。
いくつかのページをぺらぺらと開き、ふむ…とうなる。
これからの暮らしに役立つヒントになる言葉を探して。
本書は、インタビューライター・ブックライターである丘村奈央子氏による
「話す」は1割、「聞く」は9割
出版社: 大和出版
発売日: 2020/4/30(第一刷)
コロナ禍がつないだ本書との出会い
世界がコロナ禍に突入した2020年の春。
本書の著者である丘村奈央子さんがオンライン講座「人間関係を良くする聞き方セミナー」を開かれており、それに参加した。
丘村さんは東京在住の方で、以前から存じ上げていたものの、三重在住の私にはリアル講座の参加が難しい。
けれどちょうどコロナ禍でオンライン開催されると聞きおよび、飛びつくように参加。
ちょうどその頃だったかに出版されたのが本書だと記憶している。
講座終了後、私は嬉々としてAmazonを開き、ポチったのだった。
相手の話す内容にのみ集中する
人と話をするのが苦手…。
と感じるのは、恐らく
「何か話さなければならない」
と無意識のうちの思ってしまっているからではないだろうか。
本書では、よくあるような
「相手との共通点から話題を見つける」
「うなづき、めくばせなどを活用する」
「ひたすら相手の話に合わせる」
「あいづちやオウム返しなどで傾聴し続ける」
といったテクニックは使わず、
相手の話す内容にのみ集中するだけだと書かれている。
相手が9割話して自分は1割話す。
「自分にムリをさせず会話が楽しめるようになる」
というのだ。
気持ちよく聞ける状態を作る
つまりは「聞き上手」を目指すというところだが、筆者は「うまくいく会話のピラミッド構造」として、3層に分けて解説する。
一番下、第1層は「自分が気持ちよく聞ける」
真ん中の第2層は「相手が気持ちよく話す」
一番上の第3層は「必要な情報をもらう」
上述したような、これまでに耳にしたことのあるテクニックは第2層にある要素。けれど、重要なのは第1層「自分が気持ちよく聞ける状態」をつくることだという。
第1層が上手くいっていなければ、何を積み重ねても無駄。うまくいかないのだ。
自分を変えることが一番の近道だという。
そして、相手を喋らせるのではなく「教えてもらう」という意識が重要なのだ。
ムリしなくても大丈夫
話すのが苦手な人ほど、ついつい「相手の話を聞く」ということよりも自分自身のことにばかり気が向いてしまいがち。
そして、うまく話せなかった…と自己嫌悪に陥る。
けれど、ムリをしようとすればするほど空回りし、相手にもその「ムリ」が伝わって、結局変な緊張感ピリピリの場面になってしまうことも。
「自分はダメだ」と思ってしまうのではなく、「このリズムが合う人を見つけよう」と考えてみることだと筆者は言う。
自分のタイプを変える必要はない。
会話の目標を「相手を楽しませる」にするのではなく「自分がが新しいことを知ろう」にしてみるのも、自分の負荷を下げる一つのヒントだそう。
会話が上手くいく2つのポイント
相手への次の質問は、直前の質問に関連しているとうまくいくと筆者。その際に押さえると良いポイントは2か所だという。
まずは会話の開始部分。もうひとつは会話中の質問と回答との間だ。
そこで、自分と話し手との間にある「違い・謎」に注目して会話を重ねていく。
会話のきっかけを共通点とするのではなく、自分が知らない「違い・謎」に置き換えることで、会話の幅は広がっていく。
会話を展開させる「つなぎ質問」はどう作る?
例えばこんな会話があったとする。
Aさん「今朝の朝ごはんは何を食べましたか?」
Bさん「みそ汁とごはんです」
この次の質問で「どこにお住まいですか」とたずねてしまったら、会話がちぐはぐしてうまくいかないだろう。
次の質問を想定する場合、相手の答えに注目して、「違い・謎」を考える。
「和食が好きなのかな」
「みそ汁は赤だしかな、ミックスかな」
「毎日朝食を食べるのかな」
「毎日食欲はわくのかな」
そこから新たな質問を疑問形にして訪ねて行けば、会話が続いていく。
自分の意見を主張したくなったら…
相手の話を聞いていて、批判的な気持ちになり話したくなってしまう…。
そんなときは、決めた時間内は否定や討論をしないことに注意するといいという。
そもそも相手も楽しく、そして自分も気持ちよく会話を楽しむため、聞き上手になる時間を少し短くするなどして、たとえ短い時間でも聞き上手になり切れる時間をつくるようにするのだ。
これは正直なかなか難しいことだな…と個人的には思ったのだけれど、相手の話を聞き、自分との「違い・謎」にうまく変換して会話のもとにしてしまうというのも一つの手だ。
シーン別対処法に納得
第5章で、「こんなとき、どうする?」の対処法がいくつか紹介されていた。
例えば
・大人数での会話の際にはファシリテーターに徹してみんなの会話を聞く。
・長々と退屈な会話が続くときは、自分から話を切り上げる、自分のせいにして会話を終了する。
・「そうですね」としか返答がない場合は、会話をあきらめてもいい
・相手の会話が聞き取れないときは、素直に聞いてすぐに解決する
など。
自分の中ではついつい悩みがちで、何もせずに終わっていく…という場面を、バッサリスッキリ書いてくださっていたのが印象的だった。
とくに「会話をあきらめてもいい」の一言には、心のなかで「ホッ」とした。
最後の章では、仕事上で相手と対話するケース、人から情報を得る必要があるケースなどについてのビジネス会話術がまとめられている。
ここでは割愛するので、本書を一読してみて。
自分からどんどん話していかなければいけない…。
そんな思いが少し軽くなり、聞き手に回ることが楽しくなるような気持ちになった。
「話す」は1割でも大丈夫。
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