ファミレスとは違う居場所づくり
9月最後の金曜日にこのnoteを書いています。
わたしが暮らしているのは新潟県の十日町市(とおかまちし)という、人口5万人あまりの中山間地域。周辺の田んぼでは稲刈りがほとんど終わり、いよいよ本格的な新米の時期を迎えようとしています。
ちなみに魚沼エリアにあたるため、作られるお米は魚沼コシヒカリです。だから余計に、新米の塩むすびを食べるのがとても楽しみ。近々わが家のウッドデッキでバーベキューをしようと思っています。
そんなわが家では常に10名前後が共同生活をしており、さらに全国・海外から4年間で8,000人を迎えてきました。
山奥の限界集落にある一軒の住まいにもかかわらず、です。
だけどシェアハウスではないし、旅人の宿・ゲストハウスでもありません。
そもそも事業としてやっていません。
ただの住まいであり、個人宅です。
わたしは自らの住まいに「ギルドハウス十日町」という名前を付け、コンセプトと共に情報発信するなどしたら、なんだかテレビに登場したり全国誌に取り上げられるほどになってしまいました。
さて、そんな住まいの今日この頃。
ちょっとした出来事がありました。
とある住人が共同生活や人間関係でどう振る舞っていいかわからず、挙句の果てには他の住人たちに迷惑をかける始末。
別にそのこと自体は珍しくありません。いままでも、共同生活のベテランだというひとは少なかったのですから。
ほとんどみんな、ここでは新人。他人との共同生活に関しては初心者ばかりです。だからこそいろんなことが起こりますが、たいていは互いの信頼関係や思いやりによってその場で解決されてきました。
ところが、今回の件はちょっと違いました。
当事者たちがわたしに助け船を求めるに至り、不本意ではありますが仲介役を務めることに。
というわけで、まるで家族会議のような感じに。
当事者たちの言い分を聞き、わたしなりの意見を述べました。
そこで当事者のひとりから返されたやり取りが、今回の本題です。
どんなことを言われたかというと、つまりは
「どうすればいいか具体的に言ってください」
ということでした。
ギルドハウス十日町を立ち上げてから少なくとも60名と共同生活をしてきましたが、そんなことを言われたのは初めてでしたね。
だからこそ新鮮で興味深いと感じました。
話が変わるようですけど、ファミリーレストラン(通称・ファミレス)というのがありますね。わたしもたまに利用します。
そのファミレスでは、新人でもある程度の研修を経れば一定の接客レベルに達するよう、接客マニュアルが用意されているそうです。
そのマニュアルには、どんなとき、なにをどうすればいいか細かく書いてあるそうな。
なんだか、前述の「どうすればいいか具体的に言ってください」のやり取りで、ふとファミレスの接客マニュアルを思い出してしまいました。
そう言った彼は、ずっと何らかのレールやルールに従って、ほとんどそれだけで暮らしてきたんでしょうか。
そこから外れたとき、何をどうしていいかわからないのかもしれません。
もしそうだとしたら「ルールがないのがルール」とも言えるギルドハウス十日町で「具体的に言ってください」と発するのもわかるような気がします。
ギルドハウス十日町でも、せっかく中山間地域のゆったりとした空間にやってきたばかりなのに、すぐに働くこと=お金を稼がなければならない、と考えてしまうひとたちがいます。
そもそも「休み方」を知らないひとが少なくないと感じます。
目安ではありますが、ここでは1か月2万5,000円くらいで暮らしていけます。しかも食費込みです。だから、一家の大黒柱のようにひとり忙しくお金を稼がなくてもだいじょうぶです。
それなのに。
ファミレスはわたしも利用しますし、悪いとは言いません。
そもそもどれが良くて悪いのか、その選択は人それぞれです。
だからこそ。
わたしは、具体的なルールをいちいち住人たちに示しません。
これまでも各自の判断に任せてきました。
そういう意味でもファミレスはもちろん、ルールのしっかり決められた商用的なシェアハウスやゲストハウスと違うかな。ここは国道沿いや駅近くにあるわけではないし、とにかく働くこと・消費させることに集中させるための合理的な職場環境や市街地でもありません。
マニュアルのない自由な居場所。
自由には大いなる自己責任が伴います。
ここに暮らすみんなには、すぐに忙しく働く必要のない時間と空間で、いずれは自立していくのに必要な《野生》を取り戻してほしいと願っています。
よかったらサポートをお願いします。もしくはギルドハウス十日町へ遊びにいらしていただければうれしいです。