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ソーシャルな隠居の10年。わたしの受けた恩が、縁でつむがれていきますように

以前、こんなnoteを書きました。

要するにわたしは恩を直接返すのが苦手という話。だから、まわりまわって別の形でつながる恩返しの連鎖をつくることが、恩返しの苦手なソーシャルな隠居の、いま出来る恩返しの仕方だと。


さて、2011年にわたしが会社を辞めてから10年が経ちます。

当時はとにかく働き方を変えたくて、Wi-Fiの使えるカフェを渡り歩いていたら、たまたまTwitterで「コワーキング」という言葉を知り、まだ数の少なかったコワーキングスペースを仕事の拠点にするようになりました。

そして全国のコワーキングスペースをたどりながら3年以上も旅するようになり、先々で出会った多くの方々との協働によって今の自分があります。


その旅の途中、東北の被災地にも行きました。

震災から一年後でした。

代行輸送バスでたどりついた陸前高田市では、確か仮設の市役所前で降車したものの、次の目的地までの交通手段がわからずオロオロしていたら、なにかの選挙の投票に来ていた地元の人が声をかけてくれて、クルマで送ってくれたのでした。わたしがクルマを降りるとき、そのひとは「また来てくださいね!!」と笑顔で言ってくれたのを覚えています。そのひとのほうが震災で大変だったはずなのに...。


ほかにもたくさんの町でいろんな恩を受けました。

バス待ちのあいだにふらっと寄った気仙沼の仮設商店街。喫茶店のマスターから被災時の貴重な体験談を聞かせていただきました。町内のどこに何が備えられているのか、近所に誰と誰が暮らしているのか、市役所のひとがびっくりするほどの早さで被災者名簿を提出できたり、仮設商店街を設けられるようになったのは、ひとえに「コミュニティを大切にしてきたから」だという話。それらを維持できたのは普段からの近所づきあいや町内会といった日常的なコミュニティ活動のおかげだと。

そういえばわたしが7年以上も取り組んでいる「Startup Weekend」という世界的な起業家コミュニティ。一過性のイベントではなく、あくまで日常的なコミュニティ活動が大事だと思って日々動いているのは、そのときの話があったからのような気がします。


少し話がそれましたが。
そんなふうに旅先で、ほんとうにいろんな方々に出会いました。

半田屋という激安の御飯処で「1,000円分おごるから食べてみてよ」と言われ、ものすごい量の食事を戴いたこともありました。あのときは助かりました。ありがとうございました(冒頭の写真はそのときのもの)。


わたしは現在、全国旅の集大成として新しい住まいの形「ギルドハウス十日町」を設立し、かれこれもうすぐ6年。お店でもシェアハウスでも宿でもない、山奥の限界集落にある一軒家に、延べ8,700名以上がやってきて、そのうちの約80名と共同生活を営んできました。そのすべてのひとたちに向けて、全国旅で受けた恩を、別の形で送っているつもりです。

いつか、ここを発った誰かが、またどこかで、別の形で、ほかの誰かに。


わたしがこうして山奥で刺激的ながらもまったりと暮らしていられるのは、ただ運が良かっただけなのかもしれません。

だからせめて。

名前の知らないあなたから受けた恩は、直接返せないけれど。

この10年。そしてこれからも。
わたしの受けた恩が、わが家であるギルドハウス十日町から遠くどこかの誰かに、ご縁でつむがれていきますように。

#それぞれの10年

よかったらサポートをお願いします。もしくはギルドハウス十日町へ遊びにいらしていただければうれしいです。